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私のイチオシ。帯広でみた夢の舞台〜ばんえい競馬〜と春待ち映画「雪に願うこと」

小泉今日子さんと言えばいつでも憧れのオトナの女性。

どちらかというと地味な人物を演じる「雪に願うこと」という映画がある。

北海道にある「ばんえい競馬」の厩舎が舞台の家族の物語だ。

劇場公開されたのは2006年。
キャストは佐藤浩市さん、伊勢谷友介さん、吹石一恵さん、椎名桔平さんなど、超豪華。いつ観たかは忘れてしまったけれど当時の印象は「へえ、オトナの映画だな」だ。

老人ホームにいる痴呆の母、事業に失敗し何もかも無くした弟、想いを胸の奥に仕舞い込む40過ぎの兄、引退(つまり食肉になってしまう)の崖っぷちに立たされた競走馬、マイノリティーである女性の騎手、など。登場人物及び馬のどこかしらに、自分のようだな、とか自分の近くにいそうだな、と感じるところがある。

ところでこのばんえい競馬。競馬の中で唯一無二の存在だ。
心許ない自分調べでも、世界でも唯一無二だそうだ。

ばんばが騎手とおもりを乗せたソリを引き、砂の山を駆け上がる。
荒い息やうめき声が響き渡り、砂埃が舞い上がり、山の途中で足を砂に取られながら必死で立ち上がろうとする馬がいる。
それはもう、夢中で見入って、いつの間にか声援をあげてしまう。

ああ!また、ばんえい競馬に行きたくなってきた。
行ける方はぜひ行ってみてほしい。

https://banei-keiba.or.jp

つい熱くなってしまった。
映画に話を戻そう。

映画はしっかりと最後に収まりどころを用意してある。
ほっとするエンディング、とも言っていいかも知れない。
けれどどこかで物哀しい気持ちにもなる。

それは再生する弟の姿にあった。

自分が見ている人の向かっていく未来の先に自分がいないこと。
それは喜ばしいことでもある。
見送るという役割が果たせるなら。
その人が未来に向かっていく原動力にわずかにでもなれたのなら。
去られる側にも与えられるものがある。
でもやはりさみしい。

そう、弟の旅立ちが嬉しいのにさみしいのだ。

たぶん、最初にこの映画を観た時は成就する恋や勝負に土壇場で勝つ馬に目がいっていた。

今は、転びながら、間違えながら、それでも立ち上がって進んでいく弟の後ろ姿に目がいく。

自分も間違えながらベソをかきながらここまで来たからかも知れない。あるいは、幸せを掴み取ろうと自分の道を邁進する子どもたちの未来を思って、先走って嬉しくなったり物悲しくなったりするのかも知れない。

次にこの映画を思うときは息子を心配しながらも痴呆になり老人ホームで生活する母親の気持ちに入り込む気がする。

人生のステージといったら大げさだけど、見るときどきの視点の違いに気づくのも映画のいいところだと知った。

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