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JTCのDX人材育成に役立つ「3つの未顧客、顧客向けデジタル施策」の件

はじめに

筆者は生命保険会社のCDOとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。

この事情から、JTC(日本の伝統的企業)のDX推進における相談に接することが多い。この中で多い相談は「DXでは何から開始したら良いか」「何を学んだら良いか」「何をやったらDX人材が育つか」などである。

会社が「DXで何をやるか」が明確な場合はそれをやったら良いが、そうでないなら最初から大規模なDXをやるのは避けた方が良い。DXは金も人的リソースもかかるし時間もかかる。何をやるのかはじっくり考えることが必要だ。

ただしやるべきことが明確に決まっていないなら「やっておいても損はない」という分野がある。それはB2C(個人消費者向けビジネス)企業であってもB2B(法人向けビジネス)であっても、未顧客、顧客向けの「ファンマーケティング」「コンテンツマーケティング」「コンテンツビジネス」の3つである。

これらの取り組みは、多くの企業にとって、特にメーカーや店舗を持つ企業にとって、未顧客や顧客との関係構築や売上向上に大きく貢献する。また特にメーカー企業がプロダクトアウトな発想からマーケットインに転換するのに役立つ。

そこで本記事では、企業におけるこれらの戦略をどのように役立て、そのような人材をどう育てるのかについて紹介する。

①ファンマーケティング

ファンマーケティングとは、企業や商品に対して愛着や共感を持つファンを獲得し、その関係性を強化することで、長期的な顧客との関係を構築する手法だ。企業は、以下のようにファンマーケティングを活用する。

1. ファンコミュニティの形成

商品やサービスに関する情報交換や交流の場を提供することで、ファンコミュニティを形成する。例えば、専用のSNSグループやフォーラムを作成し、ファンが自由に意見を交換できる環境を整える。筆者の会社では「Vitality部」というファンコミュニティを運営している。ここでは会員が会員にVitalityの楽しみ方を教えるような活動がされている。

2. ファンイベントの開催

商品の発表会や体験会、ファン感謝祭などのイベントを開催することで、ファンとの直接的な交流を深める。これにより、ファンの愛着や忠誠心を高めることができる。Vitalityではマラソンやウォーキングイベントなどを実施している。

3. ファンの意見の反映

商品開発やサービス改善にファンの意見を取り入れることで、ファンの満足度を高め、愛着を深める。アンケートやSNSでの意見収集を通じて、ファンの声に耳を傾けることが重要だ。当社でも会員からの対面での意見収集やオンラインでのアンケートなどさまざまな方法で意見をもらっている。

②コンテンツマーケティング


コンテンツマーケティングとは、ブログ記事や動画、電子書籍などの有益なコンテンツを提供することで、顧客との信頼関係を築き、売上につなげる手法だ。企業は、以下のようにコンテンツマーケティングを活用する。

1. 商品やサービスの使い方や魅力を伝える

商品やサービスの使い方や魅力を伝えるブログ記事や動画を作成し、顧客に有益な情報を提供する。これにより、顧客の問題解決や価値提供につながり、信頼関係を構築できる。当社の場合は自社作成のコンテンツの他に会員の方がご自身で作成いただくコンテンツも多くある。会社視点でないコンテンツはとても貴重で、有難いことである。

2. 業界や関連トピック

自社の商品やサービスに関連する業界トレンドや話題についての情報を発信することで、企業の専門性や信頼性を高める。顧客にとって有益な情報を提供することで、企業への信頼感が醸成される。マスコミにも定期的に発信してもらえるように働きかけることも重要だ。

3. インフルエンサーとのコラボレーション

業界で影響力のあるインフルエンサーとコラボレーションし、商品やサービスの魅力を発信してもらうことで、より多くの潜在顧客にアプローチできる。インフルエンサーの発信力を活用することで、効果的なコンテンツマーケティングが可能となる。

③コンテンツビジネス


コンテンツビジネスとは、企業が保有する情報やノウハウをコンテンツ化し、それを販売することで収益を得るビジネスモデルだ。企業は、以下のようにコンテンツビジネスを活用できる。

1. オンラインセミナーやウェビナーの開催

自社の専門知識やノウハウを活かしたオンラインセミナーやウェビナーを開催し、参加者から受講料を得ることができる。これにより、新たな収益源を確保できる。

2. 電子書籍や動画教材の販売

自社の商品やサービスに関連する専門知識をまとめた電子書籍や動画教材を制作し、販売することで収益を得ることができる。顧客にとって価値のある情報を提供しつつ、新たな収益源を確保できる。

3. 有料会員制サービスの提供

特別な情報やサービスを提供する有料会員制サービスを立ち上げることで、安定的な収益を得ることができる。会員限定の商品やイベント、コンテンツを提供することで、会員の満足度を高め、長期的な関係を構築できる。

人材育成の方法


ファンマーケティング、コンテンツマーケティング、コンテンツビジネスを推進するには、それぞれの分野に特化した人材が必要となる。以下のような方法で人材を育成することができる。

1. 社内研修の実施

社内でファンマーケティングやコンテンツマーケティング、コンテンツビジネスに関する研修を実施し、従業員のスキルアップを図る。外部講師を招いたり、先進事例を学ぶことで、実践的な知識を身につけることができる。弊社ではZ世代若者を講師にして社内社外向けにこれらの研修を行っている。

2. OJTによる実践的な育成

実際のプロジェクトにメンバーとして参加させることで、OJTを通じて実践的なスキルを身につけさせる。経験豊富な社員がメンターとなり、適切な指導やフィードバックを行うことで、効果的な人材育成が可能となる。

3. 外部セミナーや勉強会への参加

外部で開催されているセミナーや勉強会に従業員を参加させることで、最新のトレンドや知識を習得させる。他社の事例や専門家の意見を聞くことで、新たな視点やアイデアを得ることができる。弊社ではZ世代若者向けにこのような取り組みを積極的に行っている。

まとめ

ファンマーケティング、コンテンツマーケティング、コンテンツビジネスを効果的に活用することで、顧客との関係構築や売上向上、新たな収益源の確保が可能となる。そのためには、それぞれの分野に強い人材の育成が不可欠だ。社内研修やOJT、外部セミナーへの参加などを通じて、実践的なスキルを持った人材を育成することが重要である。企業がこれらの戦略と人材育成に積極的に取り組むことで、DXに強い人材が育ち自社の競争力を高めることができる。

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