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自己成長・組織改善のための方法論:PDCAとOODAの活用を考える

  自己成長や組織改善のための方法論としてPDCAとOODAがよく挙げられますが、これらの関連性や相違点について理解している人は少ないかもしれません。自身の理解の確認も兼ねて記載してみます。

PDCAとOODAとは

 PDCA(Plan、Do、Check、Action)は目標の達成に向けた計画を策定(Plan)し、その計画の実行、検証、対応をサイクリックに進めていく手法です。目標達成に向け計画の実行と改善を行き来するイメージですね。
 PDCAに対し、OODA(Observe、Orient、Decide、Action)は、目標の達成に向け、起きている事象を観察(Observe)し、状況判断、意思決定、実行をサイクリックに進めていく手法です。
 どちらも目標の達成に向けたサイクリックな方法論、という点では共通していますが、PDCAは計画を立てる、という点に力点が置かれているのに対し、OODAはどこに力点が置かれているのかわかりづらいですね。
 辞書的にはPDCAよりOODAの方が状況の変化に対応しやすい手法として紹介されています。これらは並列に語ってよい方法論なのでしょうか?
 結論から言うと、タイムスケールや実行するチームメンバーの練度によってこれらは使い分け・組み合わせがよろしいと考えています。

例①PDCAとOODAの組み合わせを考える

まず、PDCAとOODAは得意としているタイムスケールが違います。一般的な例としてゴルフの練習改善で考えてみましょう。
(ゴルフ未経験者の方わかりづらくすみません)

 ゴルフを練習する上で、目指したい姿を定義しましょう。
「ゴルフがうまくなって同僚に一目置かれる」
では、ゴルフがうまくなるという点を具体的な目標に落としこみましょう。今回は「平均スコアを90切りにし、ベストスコアを80前半にする」と定義します。
 ではゴルフがうまくなるために、PDCAを回してみましょう。
 90切りであれば各ホールボギーでよいので、中距離クラブというより、アプローチ、パターの精度を優先的に挙げる練習がよさそうです(Plan)。この計画に沿って打ちっぱなしやパター練習します(Do)。実際にラウンドに行って確認してみたところ、スコアは110でした。実際にラウンドしてみると、ドライバーでOBしたり、バンカーから抜け出せなくてスコアを崩している原因であることがわかりました(Chack)。今後、ドライバーとバンカーを重点的に練習しましょう(Action)。

 次に、OODAの活用を考えてみましょう。今回のPDCAの中でも、練習(Do)やラウンド(Check)で使えそうです。ではラウンドで使ってみまし ょう。
 コースの状態や天候、ボールの位置を観察するのがObserveの段階です。これらの情報を元に、自身がどのクラブを使い、ボールをどの位置に打つべきかという判断をするのがOrientの段階です。そして、具体的にどのクラブを使い、どの振り幅で打つかを決定するのがDecide、最後にその決定に従って打つのがActionとなります。

このようにPDCAとOODAは組み合わせて使うことができます。むしろタイムスケールに併せて最適な方法論を選択することが重要とも言えます。

例②PDCAとOODAの使い分け

 前述の通り、PDCAの品質は計画策定に依存しています。つまり、個人であれ、組織であれ、筋のよい計画さえ立てられれば、あとの工程は誰がやっても極論うまく回るのがPDCAです。プロジェクトワークでPDCAを採用する場合、計画策定が誰なのか、その人は筋良く計画がまとめられるのか、観察するとよいかもしれません。
 一方、アジャイルな動きが求められたり、VUCAテーマを検証する上で、筋の良い計画というものはそもそも立てられません。そうなると走りながら考えられるOODAの方が適しているといえます。
 つまり、見通しよくPlanを練れる人がいればPDCAが、いまいち着地点が見えないテーマを取り扱っていたり、計画策定がどうもいまいちである場合、OODAを選択するのがきれい、というわけです。
 ※OODAはどんな場合でも使えるような書きぶりとなりましたが、場当たり作業になる、全体の方向性を見失いがち、といった気を付ける点も多々あることを申し添えておきます。

余談:目標の解像度を上げる

 当初の目標を「ゴルフが上手くなりたい」とざっくりした設定だとしましょう。これをよりクリアにしていく(解像度を上げていく)手法としてはPDCA的なアプローチ、OODA的なアプローチがあるので下記記載します。
 PDCA:「ゴルフがうまくなりたい」⇒一般的にはベストスコア80切りできたらうまい部類⇒「ベストスコア80切りしたい」⇒ベストスコアだけでなく、平均スコアの向上も必要⇒「ベストスコア80切り、平均スコア80前半にしたい」
 OODA:「ゴルフがうまくなりたい」⇒ラウンドいったら110超えた。まずは初心者のハードルであるスコア100以内を目指そう⇒「次回ラウンドで100切りしたい」⇒ラウンドいったら100切りできた。スコア90切れるとうまいと言ってもらえそうだ⇒「次回ラウンドで90切りしたい」⇒ラウンド言ったら96だった。OBとバンカーでスコアを崩している⇒「次回ラウンドで90切りしたい。OBは1回/ラウンド、バンカーには入れないマネジメントする」

まとめ

 このように、PDCAとOODAはそれぞれ異なるレベルでのサイクルを回すフレームワークであり、それぞれの適用範囲を理解することが重要です。PDCAは大きな方向性を定め、一つ一つの行動がその方向性に沿っているかを確認しながら進むためのフレームワークです。一方、OODAはより短期的な戦略の決定と行動の実行を円滑に進めるためのフレームワークです。

プランの描き直しに注意

 一般的に、計画はしっかりと立てられているほど、組織やチームの行動はスムーズに進みます。しかし、その計画をコロコロと頻繁に変更するのは筋が悪い行動です。なぜなら、計画の変更はチーム全体の方向性を曖昧にし、迷走を招くからです。このような状況は、組織の方向性が一貫して伝わらない結果を招き、最終的にはチームの生産性や成果を低下させる可能性があります。したがって、大方針はある程度の期間はそのままにし、そこから微調整を加えていくことが求められます。これは、組織やチームのメンバー全員が同じ方向を目指して行動できるようにするためです。具体的には、PDCAのPlan(計画)フェーズで設定された目標や方向性を一貫して維持し、その達成に向けた具体的な行動はOODAループの中で高速に回転させ、適応し、改善していくというのが理想的な進め方となります。

 たとえば、ある企業の大方針が「顧客満足度の向上」であったとします。この目標は、時間が経っても基本的には変わりません。この大方針を具体的な行動に落とし込むために、OODAループを用いて細かい調整を行います。まず、現在の顧客満足度や顧客のフィードバック(Observe)を観察し、それに基づいて新たな戦略や施策(Orient)を考えます。それらの施策を実行(Decide & Act)し、再度観察することで高速にフィードバックループが形成され、繰り返しの中で最適なアクションが見つかり、顧客満足度が向上していきます。

PDCAとOODA、二つのループを効果的に活用しよう

このように、PDCAとOODAは、それぞれ異なるサイクルの中で役割を果たし、高速なフィードバックと大局的な視点を両立させることで、より良い結果を生み出すことが可能となります。PDCAとOODAを理解し、適切に組み合わせて使うことで、自身の成長や組織の改善に大いに貢献できるはずです。

その一方で、PDCAの中のプランを短期間で変えてしまう、大方向が定まっていないままOODAループだけを回すといった行為は、組織の浸透や方向性の共有を阻害し、結果的には成長や改善を遅らせてしまう可能性があります。大方向を定め、それを基に具体的な行動をプランニングし、その実行と検証を高速に行うことが求められます。

結局のところ、PDCAとOODAの両方が必要となるのです。PDCAは、大きな目標に向けた具体的なプランを描き、それを実行し、結果を評価し、改善するための枠組みです。一方、OODAは、実行の中で起こる変化に迅速に対応し、戦略を最適化するためのフレームワークです。この二つを適切に組み合わせることで、目標達成に向けて最善の行動をとることができるのです。

最後に、常に大方針は浸透させ、全てのメンバーが理解していることを確認しながら、PDCAとOODAのループを回すことが重要です。そのためには、大方針を定めたらすぐにそれを変えるのではなく、一定期間はその方針を維持し、それに基づいてOODAループを回していくことが求められます。

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