書籍脳

とにかくその頃は金がなかった。

オフィス街とやらはとにかく安い定食屋みたいなところがない。べらぼうに高いといわけはないが、それでも最低1200はかかる食事代はあまりにのもったいない。節約をせねば。

だから昼飯をケチって、その日は結局朝からなんにも食べずに3時を迎えた。

コンビニだったら、さほど金はかからないと言うのはもっともだが、しかし、それでカップラーメンでも買ってしまうと余計に惨めだ、と思った。

だから俺は徹底して節約するぞと思った。
これはケチってるのではない。これは気高い飢えで、栄光ある節約なのだと自分の腹に言い聞かせた。

やっとの休憩、俺は歩道のベンチに腰を掛け、空腹を紛らわそうとあれこれ考えた。

あれこれ考えた結果、本屋が向こうにあったことを思い出した。

そうだ本屋に行こう。もし欲しい本があれば買ってしまおう。

今、昼飯約1200円分節約しているのだからその分の値段の本を買えるはずだ!

いい案だと思ってたのは三秒間、それを過ぎると呆れと笑いがこみ上げる。

たったさっき、節約するといったばっかじゃないかと。

どうやら俺の中で本は別会計らしい。

その自覚に俺は笑い、そして泣いた。

俺は馬鹿だなあと哀しくて。

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