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『ふでおろし』 第1話

ジャーナリストの古賀朔夜は“朧島”で巫女が“ふでおろし”を島民男性に行っているという話を聞き、20年に1度開かれる朧祭りの時期に島を訪れる。
朧祭りとは、巫女が二十歳になる年に婿を決めるお祭りで、候補者は島を治めている重鎮の家系“五代宗家”。
島で少女と出会った朔夜は、彼女の純粋な心に触れ、忘れていた気持ちを思い出していく。
そんな中、巫女のお披露目会が開かれるのだが……。
政府を巻き込む事件に陥り、島が、国が滅びようとする事態にまで発展してしまう。月神家、五代宗家、政府、謎の組織……様々な思惑が交錯する中、朔夜が動き出す。

○名もなき島(朧島、五芒星島)・外景
 
      五芒星の形をした島──。
 N 「約1000年前、五芒星の形をした島で謎の
  病が流行した」
 
○同・畑
 
    鍬を持っている2人の男。
男 1「(悲痛な表情で)嘘だろ」
男 2「(同じく)お前もか」
    慌てふためている男たち。
 N 「島民の男たちの精力がなくなってしまっ
  たのである」
 
○同・井戸
 
    井戸端会議をしている女性たち。
女 1「子供もまだなのに」
女 2「何でこんなことに」
    嘆き悲しむ女性たち。
 N 「島の未来を危惧した島民たちは、藁をも
  すがる思いで」
 
○同・神社
 
    シワシワの老婆・法羅フキ(年齢不詳)
    ──額に巻いたハチマキに何本ものロウ
    ソクを挿している。
 N 「祈祷師の法羅フキの元に集った」
    数十人の男性、女性たちがいる。
男 3「何とかしてください、法羅様!」
女 4「私に子供を、フキ様!」
    「法羅様!」「フキ様!」と叫ぶ島民た
    ち。
フ キ「(手をバッと前に出し制する)」
    ピタッと発する言葉をやめる島民たち。
フ キ「誰が……」
    ゴクリと息を呑む島民たち。
フ キ「ほら吹き(法羅フキ)じゃい!」
島民たち「えええッ」
    フキの額にロウソクの火が垂れる。
フ キ「熱ッ熱ッ」
 N 「全く効果はなかった」
    本のページが捲られるように、バサッと
    次のページに移る。
 
○離れ島・外景
 
 N 「この病は少し外れた離島でも流行だし」
 
○同・某所
 
 N 「誰もが絶望に打ちひしがれていた」
    覇気のない島民たち。
 N 「が、しかし」
 
○同・海辺(日替わり・夜)
 
    海面に反射して映る、光り輝く満月
    ──。
 N 「後にスーパームーンと呼ばれる月明かり
  が輝くある日の夜……」
    砂浜を歩く男・八郎丸(22)がいる。
八郎丸「ん?(見る)」
    大きな黒い影──。
八郎丸「(ゴクリと息を飲み、恐る恐る近づいて
  いく)」
    月明かりが影を照らす。
八郎丸「!」
    巨大な貝の形をした朧船──。
八郎丸「貝? いや、朧船か(船に近づく)」
    ガタンと波で朧船が傾く。
八郎丸「!」
    月明かりが朧船の中を照らす。
八郎丸「(徐々に鮮明になる船の中を見つめ)……
  わあッ」
    びっくりし、尻餅をつく八郎丸。
八郎丸「(ゆっくりと立ち上がり、もう一度中を
  覗く)!」
    横たわる女性──はだけた襦袢(じゅば
    ん)、露出する胸、足。
八郎丸「(見惚れる)」
    女性の顔──絶世の美女。
朧船の女「ううッ」
八郎丸「!」
    女性を抱えていく八郎丸。
 N 「この2人の出会いによって、運命という
  荒波がうねり出すのである」
    バサッと捲られるページ──。
 
○八郎丸の家・外景(日替わり・朝)
 
    チュンチュンと小鳥がさえずっている。
 
○同・中
 
    板張りの床に座り眠っている八郎丸。
八郎丸「スースー」
    筵(むしろ)の上に衾(ふすま)を被せられ寝
    ている女性。※筵は今でいう敷き布団、襖
    は掛け布団。
 N 「八郎丸は三日三晩付きっきりで女性の看
  病をした」
女 性「(眠っている)」
 
○同・同(夕方)
 
    寝ている八郎丸の顔を夕陽が射す。
八郎丸「(目を開け)……(見る)!?」
    正座している女性──凜々しい佇まいで
    ありながら、妖艶さを醸し出している。
 N 「夕陽の光りがそうさせたのかはわからな
  いが、この世の者とは思えぬほどの美しさで
  あった」
八郎丸「(見惚れて)……」
女 性「(微笑む)」
八郎丸「!(我に返り)起きて大丈夫なのか」
女 性「……」
八郎丸「まだ寝ていてもよいのだぞ」
女 性「(目を閉じる)」
八郎丸「?」
    突如、頭痛に襲われる八郎丸。
八郎丸「ああッ」
    悶絶する八郎丸。
八郎丸「ぐううッ(「聞こえますか」の声に)!?」
    痛みが緩和していく八郎丸。
女性の声「聞こえますか」
八郎丸「(キョロキョロと周りを見回す)」
女性の声「あなたの頭に語りかけているのです」
八郎丸「頭……?(バッと見る)」
    八郎丸を見つめている女性。
八郎丸「まさか」
女性の声「苦痛を与えてしまい申し訳ありません
  でした」
八郎丸「(響く声に頭を押さる)」
女性の声「しばらくこうして会話をして頂けませ
  んか」
八郎丸「(女性を見つめ)……わかった」
 N 「こうして八郎丸は、奇妙な会話をしばら
  く続けることになった」
 
○同・外景(夜)
 
○同・中(夜)
 
    火が灯るロウソク──。
八郎丸「(が点けた)」
    ロウソクの火で照らされる室内。
八郎丸「(立ち上がり)何か作るよ」
    台所に向かう八郎丸。
女性の声「旦那様」
八郎丸「!(振り返る)」
女 性「(口を開き)しばらくの間、ここにおい
  てもらえないでしょうか」
八郎丸「(喋ったことに驚いて)……」
女 性「どうかこの通りです(頭を下げる)」
八郎丸「君は一体」
    頭を下げている女性──。
八郎丸「顔を上げてくれ」
女 性「(顔を上げ)お邪魔でしたら私はすぐに
  でも」
    ぐううう、と八郎丸の腹が鳴る。
八郎丸「(照れ笑いしながら頭を掻く)まずはご
  飯にしないか」
女 性「……」
八郎丸「君も一緒に」
女 性「(微笑み)はい」
八郎丸「それと俺のことは八郎丸って呼んでく
  れ。旦那様ってのはちょっと」
女 性「わかりました。では八郎丸様と」
八郎丸「いや、その様っていうのも」
女 性「(首を傾げ)?」
八郎丸「(諦めた。溜息をつく)そういえば君の名前を聞いてなかった」
女 性「私の名前?」
八郎丸「あるだろ」
女 性「……八郎丸様の呼びたい名で」
八郎丸「え?」
女 性「(澄んだ瞳で見つめる)」
八郎丸「わかった、わかったよ。名前ねぇ」
    女性を見る八郎丸。
八郎丸「……」
      *    *    *
    フラッシュバック──。
    朧船の中で、横たる女性。
      *    *    *
八郎丸「朧……朧っていうのは」
女 性「朧?」
八郎丸「そう!」
女 性「朧……(笑顔で)はいッ」
 N 「八郎丸と朧、2人の生活が始まった」
    捲られるページ──。
 
○砂浜(日替わり)
 
    八郎丸と朧が歩いていく。
 N 「数日が過ぎ……」
    2人の足跡が海水で消えていく。
 朧 「何があったんですか」
八郎丸「……」
 N 「島の異変を感じ取っていた朧は、伝染病
  の話を八郎丸から聞いた」
 
○八郎丸の家・居間(夕方)
 
    夕餉(ゆうげ)を取っている八郎丸と朧。
 朧 「(箸と茶碗を置き)八郎丸様」
八郎丸「?」
 朧 「男衆を集めてください」
八郎丸「!」
 
○離れ島・外景(日替わり)
 
○同・中央広場
 
    「何が始まるんだ」「俺たちだけ何で」
    と集められた島民の男たちが口々にして
    いる。
    男たちの表情は疲れ果て、気に病んでい
    る。
八郎丸の声「静かに!」
    中央にある石段の横に立つ八郎丸。
八郎丸「(バッと手を横に出す)」
    石段の上に立つ朧。
八郎丸「彼女の名は、朧」
    巫女装束(みたいな服装)を着用してい
    る朧。
    ゴクリと息を呑み、見惚れる男たち。
 朧 「私の声を聞きなさい」
八郎丸「(見る)」
 朧 「(両手を広げ)×□△☆○」※口の動きだ
  けわかる。
 
○同・同(時間経過)
 
    小鳥がチュンチュンとくちばしで突いて
    いる。
八郎丸「(の頬が突かれていた)うう」
    横に倒れ、眠っていた八郎丸。
八郎丸「(目を覚まし)俺は……(見て)!」
    男たち全員が横に倒れている。
八郎丸「……(「八郎丸様」の声に見る)」
 朧 「(がいた)お加減はどうですか」
八郎丸「心なしか気分が……いや、そんなことよ
  り」
 朧 「心配はいりません」
    「ううッ」と次々に起き上がる男たち。
 朧 「ね」
    気に満ち足りた表情の男たち。
八郎丸「(何が起きたのかと)……(朧を見る)」
 朧 「(微笑む)」
    捲られるページ──。
 
○同・各所(日替わり)
 
 N 「それから数週間後」
    至る所で「子を授かった」と大騒ぎする
    島民たち。
 N 「たくさんの命が芽生えたのだった」
 
○同・中央広場(日替わり)
 
    石段の上に祠が建立されている。
 N 「島民は朧を巫女と称え」
    祠の前でお祈りする島民。
 
○空〜海辺(夜)
 
    光り輝く満月──。
      *    *    *
    海沿いにある大きな石の上に座っている
    八郎丸と朧。
 N 「満月の夜に突如として現れた彼女を、月
  神様と呼ぶようになった」
 
○離れ島・外景(夜)
 
 N 「そしてこの島に、幸せの気が満ちあふれ
  た」
 
○八郎丸の家・居間(日替わり)
 
    「キャッキャッ」と笑っている赤ん坊を
    見て微笑んでいる八郎丸と朧。
 N 「しかし、その幸福は引き裂かれることに
  なる」
 
○名もなき島(朧島、五芒星島)・外景
 
○同・神社
 
フ キ「連れておいで! どんな手を使っても構
  わない!」
    フキの周りを囲む5人の影。
 N 「五代宗家と呼ばれる彼らによって……」
    捲られるページ──真っ暗になる。
      *    *    *
    ピピピと音が鳴る。
 
○東京の風景(朝)
 
    20XX年のテロップ──。
    ピピピと音が鳴り続いている。
 
○朔夜の部屋(朝)
 
    カチっと音が止まる──目覚ましを止め
    る手。
古賀朔夜(29)「(が止めた。欠伸して)ふああ」
 
○古き良き喫茶店・外景(朝)
 
○同・中(朝)
 
    カランカランと入ってくる男女の客。
    「いらっしゃいませ」と、カウンター内
    のマスター。
    カウンター席で、モーニングの食パンを
    食べている朔夜。
朔 夜「(食べながら、前を見ている)」
    テレビ画面──ニュースキャスターが映
    っている。
テレビ画面のキャスター「SNSを使った新手の援
  助交際や美人局が横行しているとのことです
  が」
朔 夜「(コーヒーを啜る)」
男1の声「娘がヤリマンだったら嫌だなぁ」
    朔夜の後ろのテーブル席で、スポーツ新
    聞の競馬欄を見ている50代くらいの男2
    人。
男 2「(新聞を見ながら)嫌嫌。お」
男 1「いい馬いたか」
男 2「見てみぃ(新聞を見せて、指す)ヤリマ
  ンインパクトッ」
    競馬欄──出走馬の中に『ヤリマンイン
    パクト』の表記。
男 1「一点掛けやッ」
2 人「ヤリマンインパクトぉ」
朔 夜「(コーヒーを啜りながら)……」
テレビ画面のキャスター「世界最高峰リーグ、ブ
  ルックスフライヤーズに所属する藤原兼次選
  手が、試合を決定づける満塁ホームランを放
  ちました」
朔 夜「(カウンターにお金を置き)ご馳走様
  (立ち上がる)」
テレビ画面のキャスター「チームも独走態勢に入
  り、藤原選手も三冠王を狙える位置にいます
  が」
    店を出る朔夜。
テレビ画面のキャスター「明日から藤原選手は一
  身上の都合により一時帰国するとのことで
  す」
 
○週刊マリヤン編集社・編集長室
 
多田の声「何だこれは」
    机に『編集長 多田清』のプレート
    ──。
多田清(52)「(書類を見ながら)ベテラン政治家
  の闇を暴く」
朔 夜「(が立っている)」
多 田「(読む)私、古賀朔夜はK氏の闇を暴く
  ため取材を開始した」
朔 夜「はい」
多 田「そして密会するかの如く、K氏は怪しな
  店にひとり入っていった」
朔 夜「私もあとを追いました」
多 田「そこで見たのは」
朔 夜「数人の男に囲まれてお酒を飲むK氏!」
多 田「しかし不思議なことに男たちは女の格好
  をしていて」
朔 夜「みんな綺麗だったなぁ」
多 田「(書類を投げて)ゲイバーだろ!」
朔 夜「!」
多 田「たくッ……この前は名門学校の裏口入学の
  謎だったか」
朔 夜「はいッ。正門が工事中のため裏口から生
  徒たちは登校していたんです」
多 田「馬鹿もんッ」
朔 夜「!」
多 田「(溜息)やる気あるのか、お前は」
朔 夜「ええ、まあ」
多 田「くだらない記事ばかり書きやがって。ジ
  ャーナリストだろ。もう後がないぞ、朔夜」
朔 夜「……」
多 田「お前には夢があるんだったな」
朔 夜「昔の話です」
多 田「(溜息ついて)この仕事がやりたいこと
  とは違うかもしれん。だがな、今やってるこ
  とに向き合えないやつが、夢を叶えられると
  でも思ってるのか」
朔 夜「……」
多 田「ラストチャンスだ。真剣に向き合ってみ
  ろ」
朔 夜「……」
 
○同・喫煙所
 
    電子煙草を吸っている朔夜。
朔 夜「(煙を吐く)ふう」
 
○各所(朔夜の回想)
 
    東京に上京してきた朔夜。
朔夜(19)「(目を輝かせている)」
      *    *    *
    部屋で絵を描いている朔夜。
朔夜(21)「(真剣な眼差しで)」
      *    *    *
    パソコン画面を見ている朔夜(22)。
朔 夜「(画面見て)……」
    パソコン画面──『絵本コンクール 一
    次通過者』の表記。
朔 夜「……(パソコン画面を消す)」
 
○週刊マリヤン編集社・喫煙所
 
朔 夜「……」
    煙草を灰皿に捨てる朔夜。
 
○書店・中
 
    店内を見て回る朔夜。
朔夜のM「ネタかぁ……ん?」
    足を止める朔夜。
朔 夜「(週刊雑誌を手に取る)」
    表紙──『次期総理候補 若き才能 岩
    崎大二郎特集』と書かれている。
朔 夜「才能、ね」
 
○カフェ(夕方)
 
    窓の外を眺め、コーヒーを啜る朔夜。
女子高生1の声「あの都市伝説知ってる?」
朔 夜「(聞こえた)?」
    隣のテーブル席にいる女子高生2人。
女子高生2「五芒星島の?」
女子高生1「そう!」
朔夜のM「(耳を澄ませながら)五芒星島?」
女子高生2「そこにいる巫女が、島民男性全員の
  ふでおろしをしてるってやつでしょ」
女子高生1「ヤバくない? マジだったらきもい
  よね」
朔 夜「……」
      *    *    *
    フラッシュバック──。
多 田「ラストチャンスだ。真剣に向き合ってみ
  ろ」
      *    *    *
朔 夜「(席を立つ)」
女子高生2「それとさぁ、昨日テレビに出てた天
  才外科医」
女子高生1「安田武人!」
女子高生2「あの人って」
朔 夜「(足早に店を出て行く)」
 
○夜道(夜)
 
    歩いていく朔夜。
朔夜のM「五芒星島……巫女」
    「そこのあんた」の声。
朔夜のM「ふでおろし」
老婆の声「お前さん」
朔 夜「!(振り向く)」
    占い師の老婆がいる。
朔 夜「俺?」
老 婆「そうじゃ(手招きして)座りんしゃい」
朔 夜「占いに興味は」
老 婆「(水晶に手をかざし占う)見える、見え
  るじょい」
朔 夜「だから……(諦めて座る)何が見えるんで
  すか」
老 婆「おお、これは」
朔 夜「(面倒くさそうに)何」
老 婆「五角形をした島が見える」
朔 夜「五角形?」
老 婆「ひょっひょっひょっ」
朔 夜「?」
老 婆「お前さんの運命の分岐点がこの島にあ
  る!」
朔 夜「五角形の島に?」
老 婆「ひょっひょっ」
朔 夜「運命って……(ハッと)もしかしてその
  島!」
老 婆「(笑みを浮かべる)」
朔 夜「ありがとう、婆さん!(立ち上がる)お
  金は」
老 婆「(行きなさいというジェスチャー)」
朔 夜「ホントにありがとう!(行く)」
老 婆「五芒星島……またの名を朧島。ひょっひょ
  っ」
 
○週刊マリヤン編集社・編集長室(夜)
 
多 田「連絡あったよ。明日、五芒星島に行く
  と」
    多田の前に立っている人──暗い影で姿
    は見えない。
多 田「船のチケットは手配した。特別な人間し
  か行けないからね、あそこは」
    ソファに座っている人──暗い影で姿は
    見えない。
多 田「デカいネタ掴んできますって意気込んで
  たよ(微笑み)さてさて、どうなることや
  ら」
 
○船着き場(日替わり)
 
    豪華クルーザー──。
朔 夜「(見て)すげぇ……この船か」
    「古賀さん」の声。
朔 夜「(振り向く)」
笹佐々の助(45)「あんたが、古賀さんだろ」
朔 夜「そうですけど」
 笹 「多田さんから聞いてるよ」
朔 夜「もしかして編集長が手配してくれた船
  の」
 笹 「船長の笹佐々の助だ」
朔 夜「ささ、さ……珍しい名前ですね」
 笹 「準備は出来てんだろ。出発するぞ」
    クルーザーとは反対方向に行く笹。
朔 夜「どこ行くんですか(クルーザーを指し
  て)船はこれじゃ」
 笹 「何馬鹿なこと言ってんだ。あれだ(指
  す)」
    小さい漁師船──。
朔 夜「嘘ぉ」
 
○朧島(五芒星島)・各所
 
    着陸する自家用ジェット──出て来る藤
    原兼次(25)。
男性マネージヤー「試合をほっぽり出してまで来
  るほど、重要なことなんですか」
兼 次「ああ、三冠王よりもな」
      *    *    *
    ヘリポートに着陸するヘリ──出て来る
    岩崎大二郎(27)。
    大二郎の周りをSPが囲んでいる。
女性秘書「総理候補」
大二郎「ここでは、ただの岩崎大二郎だよ」
      *    *    *
    到着する豪華クルーザー──出て来る安
    田武人(30)。
船 長「大丈夫なんですか、手術は」
武 人「1週間で全て終わらせたから」
船 長「全て?」
武 人「30人ほどかな。全員助けたよ」
船 長「凄い」
武 人「僕は天才だから」
      *    *    *
    部屋の中で絵を描いている松平歩(22)。
 歩 「(集中して描いている)」
    歩の周りには多くの絵が描かれたキャン
    バスが乱雑に置かれている。※背中越しで
    顔は見えない。
 
○月神神社・外景
 
    石段の上に立てられた祠──。
 
○同・中
 
    ──には誰もいない。静か。
    奥はレースのカーテンで覆われている。
    レースカーテン内で座る巫女姿の少女・
    月神るな(19)。
る な「(前を見据え)……」
 
○海
 
    漁師船に乗っている朔夜。
朔 夜「!」
                                             第2話へ続く
 

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