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22世紀の学校(SFショートショート)

 あらすじ
 22世紀の学校を描いたショートショートです。


 22世紀の日本の高校は、以前とは様変わりした。
 21世紀の大型感染症でこりたため、オンライン授業がメインになったのだ。国語や数学はパソコンを通じて勉強した。
 ちなみに英語の授業はなくなったのだ。
 なぜならネックレス型の小型翻訳機が普及して英語に限らず世界で使われる主要言語は大抵瞬時に日本語に訳してくれるから。
 日本人に限らず世界中の多くの人が脳内にマイクロチップを埋めこまれていた。
 英語の会話は翻訳機が日本語に変換し、頭の中のマイクロチップに邦訳して、届けるのだ。
 ゆえに大学でも語学の授業は消失した。
 そもそも教育は何かの仕事につくのを前提としてたはずだが、人工知能の進歩で労働自体が減っていた。
 農業も天候に関係なく野菜工場でロボットが生産する。
 21世紀の時点でも、全世界で生産される食料を世界中の人達に平等に分配すれば、誰1人飢えずに済むレベルまで上がっていた。
 それでも飢餓が存在したのは生産の問題ではなく配分の都合である。
 戦争で食料の輸送網が破壊されたり、平時でも政治の問題で、食えない貧しい人達がいたからだが、22世紀の世界は、そういった問題を解決していた。
 少なくとも、今日食べる物がないという貧困は撲滅したのだ。
 そういう惨状を産むような戦争や独裁がなくなった。
 兵器の破壊力があまりにも大きくなり、戦がしづらくなったのだ。
 国家間の経済的な結びつきも強くなり、外国を侵略するより平和的な交易の方が稼げるようにもなった。
 貧困を放置していた独裁政権は21世紀後半から22世紀にかけて、1つ1つ倒れ、全世界がおおむね民主的な国家となり、貧困対策に力を注ぐようになったのだ。
 贅沢を望まなければ少なくとも食事の心配はなくなったので、あくせく働かなくてもよくなった。
 無論住居も世界中の全人類に補償された。家も今ではロボットが建設するのが一般的だ。
 現場監督を人間がやっている。
 この時代の主要なエネルギー源は再エネルギーを利用した発電と、核融合発電だ。
 核融合発電は2060年代後半には日本社会の基幹的な電力となっていた。
 月面にあるヘリウム3を地球に運び、それを燃料にしていたのである。石油はすでに地球上から枯渇していた。

 二瓶一(にへい はじめ)は、そんな時代の高校生だ。普段は家でパソコンを通じてオンライン授業に参加していたが、そんな彼でも学校に登校しなければならない時がある。
 一にとって、学校に行くのは苦痛以外の何物でもない。
 普段授業はオンラインばかりだし、それ以外の余暇は、部屋の中でオンラインゲームばかりやっていた。
 なので高校に行き、教師や生徒達と会うのは苦痛なのだ。普段は家族や近所の友達としか話さなかった。
 彼は一人っ子で兄弟姉妹はいない。この時代日本に限らず一人っ子が多かった。
 『発展途上国』と呼ばれた国も今は軒並み生活が先進国化して少子高齢化が進んでおり、一人っ子や子供のいない家庭ばかりだ。
 そもそも結婚する者が減っている。
 一は緊張しながらも教室に辿りつく。全部で20人ぐらいの生徒がいた。男女の割合は半々だ。
 やがて始業の時間となり、男の教師が入ってくる。教師が出欠を取った。全員が参加している。
 当然だろう。今日来なければ単位が取れない。高校を中退しても食ってはいける。
 しかし、いくら仕事をしなくても食べていける時代とはいえ、生活の水準に格差がでるのは否めなかった。
「それでは早速授業を始める」
 教師が話を切り出した。
「今日の一時限目は『友達の作り方』です」
 大抵の事はオンライン上で学べるために、対面の授業はこういうコミュニケーションを学ぶ講義となっていた。
 ちなみに二時限目は男女別の教室に行き『恋愛の仕方』を学ぶのだ。

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