母がしんどい
大学生の頃のある日、私は本屋さんをうろついていた。本棚に並ぶ背表紙を流し見していると、ある一冊の本が目に入った。
たしか、「母がしんどい」みたいな題だったと思う。(田房永子さんのコミックエッセイです)
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長らく私は、「お母さん大好き人間」でやってきた。
小中学生の頃は、
「お母さんが言ってることは何でも正しい!」「お母さんと離れ離れになっちゃうくらいなら大人になんてなりたくない!」
みたいなことをガチで思っている、
熱烈な母信者だったのである。
高校あたりから、徐々に母に反発心を覚えることもあったのだが、
そんな気持ちを抱く自分に、むしろ嫌悪感や罪悪感を感じていた。(今思えば、反抗期に思う存分反抗できなかったんだなぁ…)
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そんな私だったので、
「母がしんどい」という、いわゆる禁句が掲げられたその本との出会いは、衝撃的だった。
でも、私は不思議とその本に心惹かれて、真っ直ぐに手を伸ばしていた。
「母がしんどい」
これまで、思ったことのない、いや、思わないようにしていたのかもしれない。
でも、それは確かに、ずっと前から私の中にあった感覚だった。
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本の中には、「毒親」というワードがあった。
何?その親不孝なワード…と思いながらも、読みふけった。
本屋をあとにして、「毒親」について検索してみた。
そしたら、身に覚えがあるのなんのって。
おまけに、「アダルトチルドレン」ってワードにもたどり着き、その特徴を見ていったら、
「ワシやないかい!」
と心の中の陣内智則が声を上げた。
身に覚えがありすぎた。
*
大好きだったはずのお母さんが、
まさか毒親要素を持っていたなんて。認めたくない。
ていうか自分の親を毒親呼ばわりするなんて、そんな親不孝なことある!?
色んな感情がぐちゃぐちゃ出てきたけど、
どこか腑に落ちている自分がいた。
これまで、漠然と「生きづらいなぁ〜」と感じながら生きてきてたけど、それってもしかして育った環境と関係ある…?
世界が180度変わるくらいの気づきだった。
私の生きづらさは、生まれ持ったものなんだ、自分が悪いんだって、ずっと思ってたから。
*
そこから、自己分析をはじめた。
次第に、これまでぼんやりしていた生きづらさの輪郭が、少しははっきりと見えるようになってきた。(それが今では逆にしんどいんだけど)
自己分析して考えたことを、またここに書けたらなと思っています。
母のしんどさに気づいてから、
頭の中では、母のことを「お母さん」「ママ」と呼ばなくなった。
「母」
と、自分の中で一定距離を保てる呼び方をしている。
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