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ガーナ2:Medical volunteer詳細

2023年5月の2週間、IVHQ GhanaのMedical programに参加してきました。なかなか貴重な経験をしたので、下記に概要をまとめます。
IVHQ詳細: https://www.volunteerhq.org

1. プログラム概要

今回参加したのはIVHQ GhanaのMedical programです。ガーナの首都アクラから車で3時間程の場所にあるVolta riverの周辺はVolta regionと呼ばれ、ガーナの中でも比較的歴史があり、ガーナ全土をカバーする水力発電がされているエリアだそうです。Akosomboが最も大きな都市になりますが、今回はそこから車で40-50分程のFrankaduaという地域に滞在しました。

今回参加したプログラムの趣旨は、医療アクセスの乏しい地域においての無償の医療、物資・人材資源に乏しいclinicへのサポートです。clinicは常に物資が不足しており、局所麻酔をせずに傷口の縫合をするなんてことも多々あるようです。当然衛生環境も不良で、複雑な疾患を診る環境にはありません。またclinicには医師はいません。というか、出来ることが限られているので必要ないのだと思います。まず血液生化学検査が出来ませんし、聴診等で何かを見つけたとしても、特に出来ることはありません。基本的には看護師・助産師・Medical assistant・その他スタッフがclinic運営をしています。

下記に今回訪れたclinicやoutreachの経験について記します。

2. Frankadua clinic: 最も田舎のclinic


Clinicの外観
右側手前が待ち合いスペース、奥に看護師による聴取の場所があり、その奥に検査室・ベッド等があります。


最初の一週間目の午前中は、滞在先から徒歩10-15分程のFrankadua clinicで過ごしました。この辺りは田舎で、助産師が一人と看護師が4-5人程、その他事務方担当が4-5人程と看護学生が勤務しています。ここで出来ることといえば、マラリアの迅速テスト、生食などの静脈投与、一応分娩室もあり、滞在中に一度分娩を経験しました。特に何の合併症もない自然分娩(3回目)の分娩でしたが、何か問題が発生した場合にできる対応はほとんどないでしょう。仮に子宮からの出血多量があった場合、チューブにコンドームをつけ、子宮まで入れた後、水を入れて膨らませて圧迫するのだそうです。

分娩室の様子


クリニックですので、ここにくる患者は大半が保険を持っています。ガーナの国からの医療保険で、ある一定の料金を払うことで加入可能です。一方で中にはやはりそれが払えない人もいます。滞在中も何名か、医療保険を持たずに来る人はいました。医療保険のない方は実費での支払いになりますが、当然払える分のお金は持っていません。価格の目安としては、生食静注が¥2000程、他医薬品の静注(1回のみ)が¥800程、日本の感覚では決して高くない額ですが、そういった患者がきた際の対応をどうするか、判断を委ねられます。
訪れる患者は大半が軽度の熱中症やマラリア疑い、仕事からくる身体の痛みですが、稀に重症が疑われる患者も来ます。1週間続く血尿の患者が来ましたが、幸い保険を持っていたので他の病院に転送されました。
またこのclinicでは通常診療の他、近隣住民のサポートも行なっています。毎週水曜日の午前中は乳幼児検診で、4箇所のエリアをローテーションしています。ガーナはこれでも医療に関しては優秀な方で、政府主導でワクチン接種に力を注いでいます。乳幼児検診の場所は特に何があるわけではないただの場所ですが、行くと既に多くの母子が待っています。3歳までは毎月検診を受けることになっており、母子手帳も割としっかりしたものが配布されていました。今回は参加できませんでしたが、不定期で訪問診断も行なっているようです。

乳幼児検診の様子
ガーナでの予防接種スケジュール

3. Atimpoke clinic: 1-level up


Atimpoke clinicの様子。基本的な構造はFrankaduaと同様。


2週目にカナダから看護学生グループが来たため、2週目の午前中は少し都会に近い場所にあるclinicで過ごしました。ここでは一般的な診療に加え、マタニティケアと乳幼児検診、外傷ケア、メンタルヘルスケアが行われています。検査についても、マラリアの迅速検査よりも精度の高い顕微鏡下での検査、腸チフス、尿検査(ペーパーストリップ)、妊婦さんに対しては血液型とG6PDの検査が行われます。ここでもまだ一般的な血液の生化学的な検査は行えません。できることの幅は少しだけ広がりますが、基本的にはFrankaduaと大差はありません。ただ妊婦検診でも様々な教育を施したり、ポリオワクチンのついての注意喚起、水銀中毒への警告、口唇裂の無料治療の広告などが貼ってあり、多少病院らしくなってきています。常備してある医薬品は、一般的なNSAIDSに加え、オピオイド系鎮痛剤(Tramadol)、マラリア治療薬と抗菌薬、抗寄生虫、抗真菌とジアゼパム等がありました。

Atimpoke clinicのラボスペース


治療としては、やはり外傷ケアが多い一方で備品が足りている状態でもなく、局所麻酔をせずに傷口の縫合をしている場合もあるようです。またシビアなケースでは、足の親指が完全に溶けて骨が剥き出しになっているケースもありました。。
メンタルヘルスにおいては、てんかんや統合失調症が多いと聞きました(治療薬はありませんが)。また薬物中毒も問題になっているようで、Tramadol(オピオイド)中毒だったり、お酒、瞬間接着剤をエナジードリンクで溶かしたシンナーの代替品などを用いているようです。力仕事の人も多いので身体の痛みで来院する場合も多いのですが、その際比較的安易にTramadolを処方している場合が多いのが気になります。

Clinicからの眺め。Volta riverを見下ろせる見晴らしの良い高台にありました。にありました。


またここはZiplineとの契約があるようでした。Ziplineとはシリコンバレー発のベンチャーで、医薬品や輸血用のバッグを緊急時にドローンで運ぶシステムです。アフリカエリアでは成分血にする設備がなく全血のため保存期間が短く、かつ各医療機関に保存のための設備がないため、中央センターで補完し必要時に届ける仕組みが役立ちます。このようなシステムの構築もアフリカならではです。

Ziplineのドローンが来ますよという注意書き

4. Akosombo hospital: 病院

Akosomboはこの辺りでは最も都会のエリアです。歴史的な場所でもあるようで、またガーナのほぼ全土をカバーする電力発電(水力発電)をしているのもこのエリアのようです。現在アクラからの鉄道を建設中であり、これは中国・インド・レバノンが合同で出資しています。この病院には今回は行ってはいませんが、FrankaduaやAtimpokeのClinicから紹介される患者はここで治療を受けるそうです。ここであれば血液検査や X線などの検査もできるとのことでした。Akosombo含めこの辺り一帯は、電車の開通と共に一気に栄えるように思います。

5. Medical outreach


Medical outreachの様子。


午後は毎日ではありませんが、週に何度かモーターバイクで近隣の外傷ケアに訪れます。基本的にずっとボランティアが入れ替わり立ち替わり治療に訪れており、医療保険を持たず、病院へのアクセスがない人たちです。過去にどのような治療を受けていたのか、経過がどうであるのか、ほとんど情報はなく、多くの人は3年、5年、もしくはそれ以上ずっとケアを受けています。この辺りは皆裸足かせいぜいサンダルを履いて生活しているので脚に傷がおおく、かつ野菜不足・栄養不足のため傷が治りにくくなっています。毎回毎回創部洗浄、消毒、必要に応じて抗菌薬や痛み止めの投与などできる範囲内のことをやっています。

外傷ケアの様子(この方は比較的軽傷)


Outreachで患者を訪れていると、ついでに私も診てとやってくる患者もいます。一度は外傷ケアに訪れたら、サソリに刺された男の子が転げ回っていたことがありました。サソリ毒が何毒かなんて調べたこともありませんでしたが、基本的に痛いだけで死に至ることは稀だそうです(初めてし知った、、)。
外傷を患った人は、多くが火傷もしくはガラスや何かにぶつけて怪我をしたパターンが多いです。通常であれば皮膚移植を受けるのでしょうが、当然アクセスがなく、栄養不良の中ただただ自身の回復力に頼るという気の遠くなる作業です。

外傷ケアの様子。太腿に熱湯を溢して火傷してしまったんだそう。

6. まとめ


プログラム中の滞在場所。部屋は2段ベッドのドミトリー、お風呂はバケツシャワー、トイレは手動で水を流します。冷房はなくファンのみで、停電が頻発にあるのでファン無しの夜はだいぶ寝苦しいです。でも慣れてしまえばなかなか良い場所です。です。


ガーナの田舎においては上記の通り医療アクセスのない人が多く、病院ではなく自宅で亡くなる方も多いので、死因や病気について明確な統計データがありません。Outreachで訪れた患者は何年もの経過を辿る人も珍しくありませんが、皮膚移植等せずに完治を目指すのはなかなか困難に感じました。皮膚・筋肉組織が溶け骨が露出している状態の患者もおり、いつか敗血症を起こして亡くなってしまうのかもしれません。
ボランティアと言えど、参加者はそれなりの金額を支払い、かつ物資提供も行った上で参加しています。出来るきとは限られますが、この地域では長年ボランティアが訪れていることから、コミュニティ全体にそ存在が浸透しており、皆が暖かく迎え入れ交流してくれます。ボランティアの活動に頼った治療は、安定性という観点では不安が残ります。ただボランティアを活用することで、地域にとっては多少なりともアクセスができ、参加者は経験を積むことができ、かつ人的交流も生まれるという、医療アクセスの乏しい地域においては一つの良い形であるように感じました。

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