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【第17〜19回】『内なる町から来た話』『ブロードウェイ・バウンド』『コレクションズ』

こんにちは。
文学ラジオ空飛び猫たちです。
2020年にお送りした文学作品を紹介していきます。

硬派な文学作品を楽しもう!をコンセプトにしたラジオ番組です。毎週月曜日7時にpodcast等で配信しています。ラジオをきっかけに、文学作品に触れていただけると嬉しいです。

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【第17回】『内なる町から来た話』ショーン・タン著 〜世界はぼくらのものだ!〜

あらすじ
上の階に住むワニ、空を覆い尽くす蝶の群れ。町にいる動物たちをめぐる、不思議で懐かしい25の物語。『遠い町から来た話』の姉妹編、著者待望の最新作!

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
人によって文章から感じることは様々だけど、絵を加わるとさらに幅が出てきます。ショーンタンの絵を眺めていると、理屈や理由もなく、泣きたくなることや心が暖かくなったり、ほっとすることもあると思います。ショーン・タンを知らなかった人は一度書店で手にとってほしい。
私は猫を飼っていて、猫以外にもフクロウとかも好きで動物に対しての愛着は強い方ですが、「動物」がテーマのこの本を通して感じたことは肩身の狭さでした。世界はもちろん人間だけのものではないと思っていますが、人間と動物の関係を見せられると反省させられる部分がありました。動物の神秘的な部分が色濃く出ているので、動物が好きな人はおすすめです。

ミエ
ショーン・タンの小説と絵のコンボが想像以上のものを見せてくれて惹き込まれます。貴重な経験ができて体験価値の大きな本でした。この本で語られていることは架空の話で、動物もすべて架空のものでしかないですが、ショーン・タンはぐいぐいフィクションに没頭させてくれて、架空と現実をシンクロさせてくれます。これは貴重な経験だと思います。ジャンルは絵本だけど、大人が十分に楽しめる重厚なバンドデシネ(ヨーロッパの漫画)を読んだ感覚に近いと思います。
表紙がすごく鮮やかな絵なので、ビジュアルが気になった人は読んでほしい。すごい絵が何枚もあるけど、そこにたどり着くまでの文章が、さらに絵を劇的なものに変えてくれます。その体験を味わってほしいです。

【第18回】『ブロードウェイ・バウンド』ニール・サイモン著 〜青春の旅立ち〜

※この回はダイチが「これまでに印象的だった作品」を紹介する企画回です。

あらすじ
アメリカのコメディ作家ニール・サイモンの自伝的なBB3部作の3作目。『ブライトンビーチ・メモリーズ』『ビロキシー・ブルース』に続く3作目。主人公のユージンとその兄であるスタンリーはコメディ作家の道を目指し、家を出てブロードウェイへ向かう。成功を夢見て旅立つ兄弟がいる一方で、祖父は身体を病んだことから暖かい場所へ移っていき、父は浮気をして家を出て行き、広い家に残されたのはユージンの母のみ。でも母は自分自身のことを決して不幸だとは思わなかった。家族の崩壊を描きつつ、ニール・サイモンの思い出が重なる物語は、きっと多くの人の胸を打つはず。三谷幸喜の原点とも言えるニール・サイモンは、アメリカを代表するコメディ作家。2018年に死去。91歳。代表作は『おかしな2人』。

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
三谷幸喜さんの映画がイメージしやすいです。ニール・サイモンは三谷幸喜さんが舞台の道へ進むきっかけになった作家なので、典型的なドタバタコメディを楽しめます。勘違いが連鎖していき爆笑させてくれる感じがたまらない。しかも『ブロードウェイ・バウンド』は話そのものがとても良くて感動します。家族は崩壊してしまうけど、それぞれが自分の道を歩んでいきます。でも元々あった家族の暖かさは失われることがない。母親のケイトは父親のジャックが家を出て、家に一人取り残されても不幸になることなく家族への想いを抱いています。ラストは主人公の兄弟が家を出るところで終わりますが、そのシーンで兄が言う台詞がすごくいい。泣きました。
実はこの戯曲は大学時代に英語劇のサークルで上映していて、自分の人生にとって思い出深い大切な作品になっています。詳しくはラジオで話しているのでお聴きください笑

それと余談ですが、2020年12月に三谷幸喜さん演出、ニール・サイモン作の舞台『23階の笑い』を観てきました。たくさん笑わせてくれるのに、最後は感動させられてやっぱりコメディはいいなって思います。コメディは笑いだけでなく、ドラマなんですよね。そこのツボを押さえている作品は最近減ってきているように思うので、ニール・サイモンみたいな作品から感じてもらえると嬉しいなと思います。

【第19回】『コレクションズ』ジョナサン・フランゼン著 〜親と子の笑える争い〜

※この回はミエが「これまでに印象的だった作品」を紹介する企画回です。

あらすじ
ランバート家の老家長アルフレッドは頑固そのもの。妻イーニッドはなにかと落胆する日々を過ごしている。成人した子供たちの生活も理想通りとはいえない――裕福な銀行員だが妻子と喧嘩ばかりの長男ゲイリー。学生と関係を持ち勤務先の大学をくびになった次男チップ。末っ子の一人娘、才気あふれるシェフのデニースは恋愛がうまくいかない。卓越した筆力で描写される五人の運命とその絆の行方は?

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ミエ
ユーモアたっぷりの家族小説です。アメリカの中流家庭が舞台ですが、母親のイーニッドは世間体を気にするあまり、物事を自分の都合の良い方に飛躍させて考えてしまう癖があって、そんなイーニッドと頑固親父のアルフレッドと三兄妹のやり取りが笑えます。印象的だったのは、エリート街道を歩むと思われた三兄妹が親の期待を裏切るところです。三兄妹は自分らしく生きようとすることで個性が際立っていきますが、そのために親が子に望むこととのギャップが生じます。このギャップをユーモア満載に描写しつつ、登場人物一人ひとりの複雑な内面を描いているジョナサン・フランゼンの筆力がすごいです。長い物語の最後には感情を動かされました。いい意味で、社会に対して適当になれて、適当を許容できる気がしました。
単純に笑えておもしろい小説ですが、長編なので読むには時間がかかります。ちょっと世の中が窮屈に思えたり、家族関係に悩んだりしたときに手にしても気分転換になると思います。

この小説は2019年11月に読みました。ちょうど東京で開催されたヨーロッパ文芸フェスに遊びに行ったときに持参していて、会場にいる作家も関係者も私のような参加者も、ジョナサン・フランゼンが描く人物たちと同じように本当は望まれているほど社会的地位に固執しているわけでなく、むしろ世の中を適当に生きているのではないかと思えてきました。会場で一人そんなことを想像して、不思議と気持ちが軽くなりました。

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