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ラッパーを目指すアフガニスタン難民の物語…映画「ソニータ」

米同時テロから20年の節目、またアフガニスタンの武装勢力タリバンの政権奪回というタイミング。アフガニスタン人監督のドキュメンタリー「ミッドナイト・トラベラー」が公開された。

配給したのは、世界をとりまくさまざまな問題を取り上げた海外作品を次々と日本に紹介している「ユナイテッド・ピープル」。

「ミッドナイト・トラベラー」の前にも、ユナイテッド・ピープルはアフガニスタン関連の映画を配給している。「ソニータ」という作品で、
ラップ歌手を目指すアフガニスタン難民少女を主人公にしたドキュメンタリーだ。これもまた、タリバンという存在に苦しめられるアフガン人が主人公の作品。

タリバンに迫害され、隣国イランに逃れてきた16歳の難民少女ソニータ・アリザデが主人公。ラップを歌うのが大好きで、マイケル・ジャクソンを意識して「ソニータ・ジャクソン」と自称したりもする。母親はアフガンの慣習そのままに、ソニータをアフガニスタンで結婚させ、1000ドル単位の結納金を得ようとする。望まぬ結婚から逃れようとするソニータは、自ら作詞したラップを歌い、音楽に思いを託す。

ソニータの苦悩を撮影するイラン人監督、ロクサレ・ガエム・マガミさんは、同じ女性としてソニータの人生にどこまで関わるべきか、で悩む。これはドキュメンタリー映画やジャーナリズムにとって、とても大きな問題である。

それで思い出したのは、南アフリカの報道写真家ケビン・カーター氏の逸話だ。カーター氏は1993年にスーダンで、ハゲタカにまさに襲いかかられんとしている少女の写真を撮影し、その写真でピューリッツアー賞を受ける。しかし、「撮影する前になぜ助けなかったのか」という批判にさらされたカーター氏は、その後自から命を絶つ。

作品が上映された2015年の国際映画祭に参加したユナイテッド・ピープル代表の関根健次さんによれば、この「ソニータ」をめぐって、ドキュメンタリー映画監督が「対象にどこまで関わるか、かなりの議論になった」という。

監督がどういう行動をとったかは、映画上で明らかにされるのでここには書かない。是非両方あるだろうが、作品の「後味」はよかった。

児童婚、難民問題、ラップミュージック、取材対象との距離の取り方。さまざまな角度で考えさせられる作品でもあった。

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