『嘘の無い世界』には何が無いのか?

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「ためしに、嘘を無くしてみようかな」 

その日の神様は、人間界を眺めながら、そんなことを思いました。

「「庭いじり」ならぬ「人間界いじり」ですね  。大洪水よりは知性を感じますよ」 

傍らの天使は毒舌家です。

しかしふと、神様は考えました。

実際のところ、私は何をしたら良いのだろうか、 と。

人間の行動に変化を加えればどうだろう。

悪意も善意も関係なく、彼らの発話行動を、真実を語るか、無言を通すか、だけにする。 変化は発話だけでなく、全ての行動、表現物に関わるものにしよう。 この『誰も嘘をつかない世界』こそ、『嘘の無い世界』ではないか。

「その世界には、『嘘による良心の呵責』も無いんですね」

天使が言いました。

「無いね。人の罪もひとつ減る。良いことじゃないか」

「虚構の物語もないですね 。あと、サッカーのフェイント、料理の隠し味、30才に見える45才、・・・」 さすがに天使は、私より人間界の事をよく知っている。

そして私は浅はかだった。 嘘をつく側だけでなく、嘘をつかれる側にも変化を与えなければ、 嘘の無い世界は作れないのかもしれない。その世界は、受け取る側から見た『誰も嘘をつかない世界』になるだろう。

しかしこれは面倒だ。

100億人 人間 手を加えるなんて、チマチマした作業は好みではない。

 「『嘘の無い世界』というよりも、『 嘘が存在できない世界』にしてしまえ ば良いではないか」

「嘘が存在できない世界、ですか?」

例えば、天使の実態・実在の『代わり』として 、「天使」という『言葉』があるから、「天使がいる」という嘘も可能になる。

「『代わり』が無い世界であれば、嘘は存在できない、と思わないかい?」

「 なるほど 。『姿かたち』だけ 花の『代わり』になる花カマキリ 擬態。 『音声』だけ ...、『香り』だけ ...」天使は続ける。

さて、つづきは1000年後にしようかな...。

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