パワハラ自殺を防げ

本来ここで書く内容ではないかも知れません。正直、気持ちのいい話でもありません。オチもなく、やるせなさしか思い出せないそんな記憶。そして、筆者の原体験とも言える体験です。

しかし、現在人事や採用のお手伝いをさせていただいている身であり、少しでも「いい会社」を増やしていきたいと思う原動力にもなっている体験の一つです。

あまり自分語りは得意ではないので、読みにくい文章になるかも知れません。ご容赦いただければ幸いです。

三菱電機のパワハラ自殺

昨日のニュースで知りました。

上司から「死ね」と言われ、自ら命を絶ってしまった。

「次同じ質問して答えられんかったら殺すからな」、「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで。死んどいた方がいいんちゃう?」。上司・部下という関係性や先輩・後輩という関係性云々を越え、人と人という枠組みで考えたとき通常発せられることのない言葉の数々です。

弁護士の方は「これは誰が見ても明確なパワハラに当たる」というようなことをおっしゃっていましたが、個人的にはこれはパワハラではありません。

立派な刑事事件であり、自殺教唆です。パワハラだなんて生易しい表現で語ることすらおこがましい。

ご子息を亡くされた親御さんの心情を思うと、大変胸が痛くなります。

そして、三菱電機は事実関係を明らかにしきちんと公表して欲しい。また、実際に行った社員については容赦なく罰せられるべきだと思います。人間の命というのは、「仕事ができる・できない」などというくだらない出来事で失われていいほど軽いものではない。

今回自殺した社員が残したメモについては、日付や発言内容もきちんと記されており証拠能力としては高いものとなるでしょう。今後は周囲へのヒアリングなどを通じて事実関係が整理されていくことになるでしょう。

三菱電機は相応の対応が求められますのでしっかりと対応して欲しいところです。仮にも大企業。働き方改革などでは旗振り役、先導役として他社に模範を示すべき存在です。きちんと膿を出し切ってください。

2015年、従業員が自殺した

さて、ここからが筆者の個人的な体験談です。

先の三菱電機のような事件というのは、ともすると「他人事」のように感じられますが、パワハラが引き金となった自殺というのは身近な存在です。

それを強く感じたのが、2015年。筆者は一部上場企業の人事として活動していたときでした。暑い暑い夏のこと。一人の未来ある若者が自殺しました。

詳細についてはご遺族に許可を取っているわけではありませんので伏せますが、上司に対する恨みが書かれたメモがあったのみでした。

20代前半で、前途ある若者がなぜ命を絶つ必要があったのか。今でもわかりません。

当時勤めていた会社は典型的な営業会社。ノルマ必達主義で、月末になるとあちこちで罵声や怒声が飛び交う環境でした。

創業社長が周囲をイエスマンで固め、少しでも歯向かう者は容赦なく飛ばす。そんな環境でしたから、社長が定めた目標数値に対して取締役以下管理職は誰も抵抗することができず。結局しわ寄せがいくのは現場の従業員という有り様でした。

営業の数値目標はあってもノウハウが確立されていない。マーケティング戦略もなかったためとにかく「足で稼ぐ」昔ながらの営業スタイルが跋扈していました。部長や課長という人たちも精神論でしか指導できず、とにかく泥臭く営業するスタイル。顧客がよくわからないまま印鑑を押しているケースも少なくなかったのではないかと推察していますが、真実はよくわかりません。

現在問題になっている日本郵政グループの報道を聞く限り、かなり近いものがあるのではないかと思っています。

当時、市場環境の急激な変化についていけず、売上高は減少の一路を辿っていました。罵声や怒声が何の解決策にもならないのはわかっていたのでしょうが、誰も解決策を見いだせずに精神論で何とかするしかなかったのかも知れません。

当然そのような環境でしたので、労働基準監督署から行政指導を受けて職場の環境改善が人事としての命題となります。長時間勤務の実態把握という指令のもと、各営業所などを巡回していた中筆者は自殺した従業員とも面談をしました。

何やら違和感を覚えたのも記憶にあります。しかし、本人は「問題ない」の一点張り。今思えば、その時感じた違和感をもっと突き詰めるべきだったかも知れません。

その若者は、面談の2週間後に自ら命を絶ちました。

誰にも同じ経験をして欲しくない

もちろん、一番辛かったのは本人でしょう。表面上では平静を装いながら、内心忸怩たる思いを抱えながら仕事をしていたのでしょう。彼の自殺は、上司に対する復讐という意味合いもあったかと思います。もちろん、内心を図り知ることはできません。

ご遺族の方の心情も大変辛いものがあったでしょう。まだまだこれからという年代のご子息が自ら命を絶つという選択肢にたどり着いた。なぜ、という疑問はこれからもついて回ることになるかと思います。

加害者となった上司に、処分は下されました。しかし、それで何かが解決したわけではありません。彼の罪は彼の罪で十分以上に重いものがあります。しかし、「上意下達」「ノルマ必達」という企業体質の犠牲者であったという可能性も否定できません。もちろん、だからと言って罪が軽くなるわけではありませんが。

このような悲劇は、少なくとも健全に機能している企業であれば発生しないものだと思っています。ブラックな体質を「営業会社」だとか「ノルマ主義」がとかいう言葉遊びでごまかしてみたところで意味はありません。従業員が気持ちよく働けるようにしていない企業は全部「ブラック」でいい。

会社というのは社長の持ち物ではありません。そこで働く人がいて、お客様がいて初めて成立するものです。個人的なワガママを押し通したいだけならば、無人島で一人暮らしでもすればいいのです。この社会において企業を運営するというのは、少なからず他者との関わり合いが必要です。

他者に対しての配慮がないと、ブラック化していきます。

顧客への配慮がなければ強引な契約に繋がりますし、従業員への配慮がなければパワハラやセクハラなどの温床になります。

キレイゴトで経営はできないよ!と思う方もいらっしゃるかと思います。どうぞ、遠慮なく市場から退場してください。

筆者は、もう誰にも同じ経験をして欲しくありません。

自ら命を絶つようなことも。その遺族となるようなことも。加害者となるようなことも。また、何もできずに茫然とするしかない間抜けな人事担当者になるようなことも。

その為に、啓発していかなければいけないし、本当に企業を変えていかなければいけないと思っています。

経営者の皆さん。社会の寛容さに甘えないでください。自社で起きている事に関心を持ってください。決算書の数字も大事ですが、その数字を作り出しているのはまぎれもなく「人」です。他者に寛容になってください。どうすれば「働かせることができるか」ではなく「働いてくれるか」という視点を持ってください。

誰にも、働く上での不幸な事象に遭遇して欲しくはない。

今、自殺を考えている人へ

もしかしたら、今パワハラなどが原因で自殺を考えている人がいらっしゃるかも知れません。

何が起きても思いとどまってください。会社が辛いなら、退職しましょう。

自分で言えないならご相談ください。必ず力になります。

そして、ハラスメントや過重労働は会社に非があるだけです。すっぱり辞めましょう。そして次の働き方を模索しましょう。自殺しても何も解決しません。

一緒に解決策を探しましょう。

会社を変えていきたい方へ

会社は変われます。時間はかかるかも知れませんし、多大な労力が必要になるかも知れません。しかし、必ず変われます。

20年も30年も前の人事管理理論に基づいて活動している場合ではありません。現代には現代の、未来には未来のやり方があります。

昔の成功体験にしがみついているだけでは変われません。思い切って変わる覚悟を持ってください。

方法がわからないなら、ご相談ください。私たちが必ず力になります。

※営業目的のお問合せはご遠慮いたします。

終わりに

会社や仕事が原因で命を絶つ。本来あってはいけないことです。しかし、少なくない件数が日本中で発生しています。明確な因果関係が不明なものでも、仕事がきっかけとなった自殺もあるでしょう。

筆者が今こういう仕事をしている背景にも、「自殺」がありました。同じことを繰り返すわけにはいきません。

だから、命を絶つ前に躊躇なく退職しましょう。

そして、同じような悲劇を生み出さないためにも企業は早急に変化する必要があります。今後も様々な方法で情報発信していきますが、本気で変わる気概がないとこれからの社会で存続するのは難しくなっていることはご理解ください。

今、部下にパワハラをしていたりする方々は直ちにやめてください。他人を追い込んだ先にあるのは、悲惨な結末です。部下はあなたの一時的なストレス発散に付き合う義務はありません。

これからも、悲劇が繰り返されないよう自分なりに活動していきます。

力及ばずという側面もありますが、ご指導ご鞭撻をいただきながら、少しでも社会のために寄与していく所存です。

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