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摩撫甲介
2020年5月5日 01:43
コワルスキーが仕事場で本日18人目を切り分けていると、特別室のザッパーから呼び出しを喰らった。「アンダーの連中とつるんでちゃあ、もうおしまいだよな」ザッパーは一枚の写真を、処刑器具のような指でつまんでいた。「……殺すのか」コワルスキーのくたびれたブーツが、赤い絨毯の長い毛に溺れかけている。「チャンスを掴め。カミさんを死なせたくなけりゃ、始末は自分で付けてこい」ザッパーは必要な道具を投げてよ
しゅげんじゃ
2020年5月2日 19:21
壁がある。 その向こうからは声が聞こえてくる。『あいつらが悪い』『こんなことになったのも……』 別の壁からも声だ。『批判はもうたくさん』 どこか、もがくようなそれらの声は、刺すような刺激とともに木霊している。やれやれと息を吐き出して、太郎は前を向いて歩きだした。 壁に囲われた回廊のような世界だった。白い壁、白い天井、そして静寂。太郎が歩く世界の中に、人の影は存在しない。誰も