【読書ログ】vol.2 「これは日記だ!」という瞬間
くどうれいんさんの『日記の練習』を読み終えた。
私はこの本で初めて、「くどうれいんさん」という方と出会った。
言葉のチョイスがユニークで、世間を見る目線が鋭くて、素直で不器用で。どんな人だろうと思ったらなんと、同世代、かつ友人の友人だということがわかった。
小説、エッセイ、短歌、絵本と幅広い創作で注目される作家、くどうれいんさん。
本書の中身である日々の短文日記=「日記の練習」とそれをもとにしたエッセイ「日記の本番」。それらををとおして浮かび上がる、作家くどうれいん一年間の生活と思考と情動。書かなかった日も、あまりに長くなってしまう日も、それこそが日常のなかの日記だ。
読み終えるのに軽く1ヶ月はかかった。
文体は流れるようで、言葉選びは実にポップで、読んでいて重たさや粘っこさが一切ないもんだから、本当は一気に読もうと思えば読めたのだが、少しでもこの世界に浸っていたいと、あえて時間をかけて読み進めた。そうしたかった。
日記本というジャンル。
小説とは異なる、作りものからより遠い、現実世界。それでいて、他人の日記という、非現実の世界。
そのなんとも言えないリアルさが、とっても心地よい作品だった。
悔しかったこと、嬉しかったこと、怒ったこと。仕事へのプライドや自己嫌悪、ふと思ったこと。友人との何気ない会話。
そんなあれこれの感情や事柄がランダムに飛び交っていて、私自身も彼女と一緒にいろんな喜怒哀楽を味わうことができた。
幸せな時間だった。
読んでいる間の時間そのものが本当に満たされていて、日常って、人生って、あぁこんなにも愛おしい。と何度も何度も、繰り返し思わされる道のり。
この本に出会えてよかったなぁと思う。
私もこんな風に毎日の、1日の30秒間を上手に切り取れたらなぁ。
私は高校生の頃から毎日のように日記を書いているのだが、私の日記には基本的に朝起きてから寝るまでの間に起きた全ての出来事が、余すことなく書かれている。
だから、逆に面白くない。
ある一つの出来事や会話だけを残して、それ以外の全てを削ぎ落とすが勇気がないのだ。。。
どうやったって限界はあるのに、目にしたもの、考えたこと全てを、できる限り全てを、流れに抗うように、杭を打つように思わず書き留めたくなってしまう。
だってそうしないと、大切な何かを忘れてしまうような気がしてしまうのだもの。
だからこそ、れいんさんのように一つの出来事を大切に愛でて、味い尽くそうとするその潔さに憧れる。
憧れるなら、真似してみればいいじゃない。
もっともっと、日常をズームで見つめる。
よし、それでは日記練習、始めます。