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小説

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2021年9月の記事一覧

翠煙の中に立ち篭める煙のような

翠煙の中に立ち篭める煙のような

カチリ。

置時計の秒針の音で幽遠な想像から今に戻ってきた。

なにを考えていたんだっけ―

戻ってきた意識を身体に貼り付けながら、吸いさしの煙草に火をつける。
だらりと落ちた思考の束を蒼惶として拾い集めようとする。

手が宙を切った。

そんなこと分かっていた。

痛い。

キリキリと痛む胸中に己の〝生〟を嫌でも実感せざるを得ない。

痛んだままの傷付いた片腕と海松色の声は、それごと誰かの泣き声

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朝東風は綽然と

朝東風は綽然と

仮にこの世界を超越したとして〝自分〟は限りなく永遠に自分であるのだ―。

(だから、人間は嫌いだ)

その思考を支えるそれはなんだろうか。
靄に包まれて鮮明に胡乱なそれは。

誰の為?なんの為?

笑顔の端に同居した博愛と惻隠は近づかずともはっきりと私の心に映って光を点したのだ。

風船のように軽く、吹けば飛ぶような言葉をシャボン玉のように沢山沢山吐き出す癖に。

荒野である浮世の上を梔子色の朝東

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