「苦労しない容姿に生まれた事を親に感謝しなさい」


「貴方は苦労しない顔に生まれて良かったね。その事を親に感謝しなよ」
バイト先、オーナーとの雑談の中で言われた言葉である。彼は非常に強いルッキズムの中で生きている。おりに触れて私の容器を褒め、美しい見た目である事の重要性を語る様な人だ。

これだけ聞いたら嫌悪感や否定的な意見を持つ人が多い、いや、大半がそうなのでは無いだろうかと思う。しかし私は彼に対して人間としての興味深さを感じる。
何故なら彼は、これ迄女性ばかりの職場で生きてきたそうで、そのせいもあってか感性や趣味嗜好が限りなく女性的(昨今の社会でこの様な表現はあまり好まれ無いかもしれないが多くの人にニュアンスとして伝えるために今回はこの言葉を用いたいと思う)であるからだ。幼少期は「ちゃお」や「りぼん」などの女児向け雑誌や少女漫画を好み、kpop(男性アイドル)の良さを語る。cancanやpopteenなどのファション誌に精通する。更には男性が苦手だそうで、自分の趣味嗜好が故に何を話せば良いのか分からないとさえ語る。
かなり女性的な世界観を持っている彼を「女好きのキモイおじさん」と断言する人も居るが、どうも私にはそれが出来ない。

女性社会で生きてきた彼が「苦労しない容姿に生まれたことを感謝しなさい」と言うのには何か、そう言わせてしまう何かがあったのではないかとさえ感じてしまうのは私の豊かすぎる想像力()だろうか。
男性の目を通して、女性の社会を長年見てきた彼の話を聞いていると感じるものもある。



別の話として添える。
しかし彼の妻へのパワハラっぷりは見るに堪えないものがあり、そんな時私は人間って面白いなと思う。男性が苦手なのに、自分は力を行使し妻に冷たくするのだから。
けれど人の本質って案外そんなものなのでは無いだろうかと思う。程度の違いはあれど、あらゆる矛盾の中で、バランスを取りながら、それと共に生きているのだと。それを私は人間らしいと愛することもできる。

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