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DFFT白書発行!デジタル急伸国の対話から見える、データガバナンスの展望(インド編)

世界経済フォーラムは、信頼ある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust:DFFT)の実現を目指し、デジタル経済の発展めざましい4カ国で、多様なステイクホルダーを招き、各国のデータガバナンスの現状と課題について対話するオンライン・ワークショップをホストしました。

その成果を白書「Advancing Data Flow Governance in the Indo-Pacific: Four Country Analyses and Dialogues」として2021年4月に発表しました。

今回は、その中からインドに関する議論をご紹介します。
(※他の3カ国はこちら:フィリピン編ベトナム編タイ編

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インドのデジタル化の光と影

デジタル化が急速に進むインド。多くの人口を抱え、経済的な伸長を背景に、デジタル化への需要も高まっています。今やインドは中国や韓国を超える量のモバイルデータを使用しており、さらなるデジタル発展の可能性を秘めていることを示唆しています。

しかし、こうした華々しいデジタル化の進展の裏側で、地域的な格差が激しいことが指摘されています。国内の半分の地域でインターネットへのアクセスが限られている現状があります。


インフラからプライバシーまで

インド政府はデジタルインフラの重要性に注目し、様々な振興施策を実施しています。例えば、2015年に始まった政府の主要プログラムである「Digital India」は、インターネットアクセスの普及、決済の標準化、デジタルリテラシーの向上などを目指しています。

同時に、デジタル化の発展に伴い、プライバシーやセキュリティに関する懸念の声も大きくなっています。既存の法ではサイバーセキュリティ対策が不十分であることなどから、より具体的な法律の制定が求められています。現在、個人情報保護法案(PDPB19, Personal Data Protection Bill 2019)に関して、その可否にまつわる議論が繰り広げられています。


さらなる成長のためには?インドの今後の方向性

オンライン・ワークショップに登壇したパネリストたちは、インドの企業や社会におけるデジタルツールの導入状況やインドの企業や社会におけるデジタルツールの普及、さらなる普及を促すための政策戦略、国際的な規制協力について議論しました。

あるパネリストは、インドはデータプライバシー保護法制の「準備ができている」と述べ、その上で自国の利益に基づいた立場を取り、データ戦略を立てるべきだと述べました。

国際連携の方向性については、見解がわかれました。PDPB19が導入された後に国際連携への展開が期待されるという意見もありました。他方、二国間・地域間の枠組みの方がグローバルな枠組みよりも現実的だという指摘、多国間交渉の場としてWTOが適切であるという意見も挙がりました。


2019年の世界経済フォーラムの年次総会において日本から提唱されたDFFT構想。その具現化をすべく、2020年6月にロードマップを白書として公表し、今回、4カ国のデータガバナンスの現状と課題について共有する対話を行った成果を白書としてまとめました。

今後もこのイニシアチブを推進し、国境を越えたマルチステイクホルダー間の連携に貢献してまいります。


Co-author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 上原さら(インターン)、工藤郁子(プロジェクト戦略責任者)

Contributors: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 野田由比子(フェロー)、榊亮介(フェロー)、汪姗(インターン)、角南萌(インターン)、松下雄飛(インターン)

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