DFFT白書発行!デジタル急伸国の対話から見える、データガバナンスの展望(フィリピン編)
世界経済フォーラムは、信頼ある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust:DFFT)の実現を目指し、デジタル経済の発展めざましい4カ国で、多様なステイクホルダーを招き、各国のデータガバナンスの現状と課題について対話するオンライン・ワークショップをホストしました。
その成果を白書「Advancing Data Flow Governance in the Indo-Pacific: Four Country Analyses and Dialogues」として2021年4月に発表しました。
今回はその中からフィリピンに関する議論をご紹介します。
(※他の3カ国はこちら:インド編、ベトナム編。タイ編も近日公開予定)
拡大するフィリピンのデジタル経済
フィリピンのデジタル経済は、2020年から2025年の間に30%もの大幅な拡大が見込まれています。特に成長のエンジンとなっているのは、年間25億ドルの収益を生むBPO(Business Process Outsourcing)業界です。業務プロセスの一部を外部から受託するBPOサービスは、個人情報を複数国で取り扱います。
そのため、プライバシーに関するフィリピン国内の法的枠組みを確立する事によって、BPO含むデジタルサービス全般のさらなる競争力向上が期待されています。
多国間連携によって保護と流通のバランスを確保
このような背景から、フィリピンには、データの流通を促進しつつ個人の権利を守る、バランスのとれた規制環境を構築してきた経緯があります。
2012年にはData Privacy Act(DPA)を発行し、それを実行・監視するNational Privacy Commission(NPC)が設立されました。そして、2016年にはDPAの詳細を記したImplementing Rules and Regulations (DPA IRR)が発行され、個人情報の取扱いについての理解を深めるキャンペーンも始まりました。
国内だけではなく、フィリピンはグローバルな協力も盛んで、シンガポールの個人情報保護機関と協力してMoU (Memorandum of Understanding) を整備している他、ASEAN Digital Data Governance Framework、Regional Comprehensive Economic Partnership、APEC Cross Border Privacy Rulesなどの各種国際連携枠組みにも参加しています。
さらなる成長には何が必要?
今後の課題としては、デジタルサービスの輸出において、中小企業がデータ移転の仕組みを利用できるよう、さらなるキャパシティビルディングを促進することがあげられます。
その手段の一環として、APECのCross Border Privacy Rules(CBPR)の規制を守っているか認証するための監視機関(Accountability Agent)を任命する必要があります。これにより、フィリピンの企業はAPEC CBPRに加盟している9カ国の間で国境を超えたデータ流通ができるようになります。
また、プライバシーやサイバーセキュリティなどに特化したスキルセットを持つ人材を育成する必要性も指摘されました。
2019年の世界経済フォーラムの年次総会において日本から提唱されたDFFT構想。その具現化をすべく、2020年6月にロードマップを白書として公表し、今回、4カ国のデータガバナンスの現状と課題について共有する対話を行った成果を白書としてまとめました。
今後もこのイニシアチブを推進し、国境を越えたマルチステイクホルダー間の連携に貢献してまいります。
Co-author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 角南萌(インターン)、工藤郁子(プロジェクト戦略責任者)
Contributors: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 野田由比子(フェロー)、榊亮介(フェロー)、松下雄飛(インターン)、上原さら(インターン)、汪姗(インターン)
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