見出し画像

DFFT白書発行!デジタル急伸国の対話から見える、データガバナンスの展望(ベトナム編)

世界経済フォーラムは、信頼ある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust:DFFT)の実現を目指し、デジタル経済の発展めざましい4カ国で、多様なステイクホルダーを招き、各国のデータガバナンスの現状と課題について対話するオンライン・ワークショップをホストしました。

その成果を白書「Advancing Data Flow Governance in the Indo-Pacific: Four Country Analyses and Dialogues」として2021年4月に発表しました。

今回は、その中からベトナムに関する議論をご紹介します。
(※他の3カ国はこちら:インド編フィリピン編タイ編

画像1


ベトナムにおけるDXの追求

過去30年間にわたり貿易によって発展を遂げたベトナムは、現在岐路を迎えています。自動化や新規参入者の登場により、グローバル・バリューチェーン上の地位が低下したため、従来の組み立て・加工中心の産業を脱却し、新技術を生かした地域のイノベーションセンターとなることを目指しています。

一方でベトナムのEコマース市場は成長し続けており、Eコマースは、ベトナムの中小企業の売上向上には不可欠な存在となっています。

低水準にあったデジタル決済も成長しはじめています。例えば、中央銀行が、決済仲介サービスを提供するフィンテックに対する49%の所有権制限を撤廃したことで、金融サービスへの外国直接投資のハードルが下がり、ベトナムのフィンテックスタートアップが外国からの投資を受けるケースが目立ってきました。


ベトナムのデジタル戦略とデータ保護

ベトナム政府は、長期的なデジタル支援戦略として「National Digital Transformation Roadmap(国家デジタル変革計画)」を策定し、ベトナム発のデジタルサービスの普及に努めています。

また、現在掲げている「国家Eコマース開発戦略」では、2025年までに人口の55%がオンラインで買い物をし、デジタル決済が取引の50%を占め、中小企業の50%がEコマースプラットフォームを利用し、企業の40%がモバイルアプリを使って取引する世界を目標として掲げています。

データ保護という観点からは、2019年1月からサイバー空間における国家安全保障を目的とした「サイバーセキュリティ法」が施行されているほか、2020年2月には、「個人データ保護に関する政令案(DPDP, Draft Decree On Personal Data Protection)」が公表されました。これは、下記4点を個人情報の国外への移転のための条件として定めています:
1)データ所有者の許可が得られていること
2)元のデータがベトナム国内に保存されていること
3)移転されるデータがベトナムと同等以上のデータ保護規制を持つ管轄区域にあることを示す公式文書があること
4)個人情報保護委員会から書面による承認を受けていること


国際連携による成長機会の拡大

海外市場へのサービス提供には、越境データにつき、移転先の国のデータ保護要件の充足など対応が必要です。しかし、現行のベトナムの法規制では、ほとんどデータ移転メカニズムが想定されていません

一方で、2020年に採択された DPDPは、ベトナムの規制と同レベル以上の保護が相手国でなされることを前提に、越境データ移転を認めるようになりました。また、2019年にはEU-ベトナムFTAが締結され、金融サービス事業者が「通常の業務」のために、電子的またはその他の形式で、情報を自国の領域内外に移転することを認めると規定しています。

こうしたデータ移転の仕組みを充実させることができれば、投資対象としての魅力も増し、国内の事業者が国外の市場に進出する際の摩擦も小さくなります。特に中小企業にとっては、透明性のある移転メカニズムを整備することが、大きな成長の機会につながります。


2019年の世界経済フォーラムの年次総会において日本から提唱されたDFFT構想。その具現化をすべく、2020年6月にロードマップを白書として公表し、今回、4カ国のデータガバナンスの現状と課題について共有する対話を行った成果を白書としてまとめました。

今後もこのイニシアチブを推進し、国境を越えたマルチステイクホルダー間の連携に貢献してまいります。


Co-author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 汪姗(インターン)、工藤郁子(プロジェクト戦略責任者)

Contributors: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 野田由比子(フェロー)、榊亮介(フェロー)、上原さら(インターン)、角南萌(インターン)、松下雄飛(インターン)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?