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私家版・この映画がすごい2020

今年はPrime Video、Netflix、U-NEXTを掛け持ちしてあれこれ映画を観ていました。
2020年私が観た中で面白かった映画を並べていくだけの記事です。

順不同・ジャンル区別なし・ネタバレも多分そんなになし。
私が今年観た作品、かつ良かったかだけが選出基準なので、2020年公開以外のものがほとんどです。
いくつかの例外を除き、今年初めて観た作品、かつ現在配信中のものを中心に挙げています。

ハウス・ジャック・ビルト

最も好きな監督の一人であるラース・フォン・トリアーの最新作にして、今亡き名優ブルーノ・ガンツの出演作。
トリアー作品の中ではエンタメ寄りながらエログロナンセンスは健在。
強迫性障害で芸術家を自負するシリアルキラーの主人公・ジャックを、トリアーが全力で皮肉っていて最高の一言に尽きる。
テンポ感が良くて内容の割にポップな印象だった。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』より明るいトリアー作品だと思う(個人的に)。

ミッドサマー

2020年の映画について(日本初公開は2020年2月)、『ミッドサマー』抜きでは語れない気がする。
一歩間違えばマニア向けカルト映画扱いされそうなこの作品が、どうしてここまで受け入れられたのか?
確かに映像はきれいだし、一概にホラーとは言えないストーリーが面白く、マーケティングの上手さも絶妙だった。
特典やパンフレットのデザインも可愛くて、女性ウケしたことにも頷ける。
それでも、この作品が幅広く許容されたことは一種時代の転換期だと思う。
ビョルン・アンドレセンが出演しているという点においても貴重な作品。
これが長編2作目というアリ・アスター監督には怪物っぷりを感じる。

グランド・ブダペスト・ホテル

ずーっと気になっていて今年やっと観られた作品。
絢爛豪華なセットと美しい色調、コメディタッチなテンポ感抜群の会話、それでいて重厚な時代背景、どこをとっても文句なしの名作。
字幕版で一回、映像をじっくり観たくて吹替版をもう一回観た。
この映画に限っては、字幕派でも一度吹替版を観てほしい。
声優さんの演技が上手で作品を損なっていないどころか掛け合いの小気味よさに没入できる。
シャイニング』『時計じかけのオレンジ』のキューブリックを彷彿とさせる印象的な左右対称の画面と、ノスタルジックでキュートなパステルカラーにも目を奪われる、とにかくきれいな傑作。後でもう一回観ます。

ヴァージン・スーサイズ

DVDは廃盤でどこでも配信されず、もう観る機会に恵まれないのかと思っていたところ、先日U-NEXTで配信開始。
『ヴァージン・スーサイズ』はソフィア・コッポラ初監督作品で、彼女とキルスティン・ダンストがタッグを組むきっかけになった作品でもある。
初めてレンタルして観たとき、私はまだリスボン家5人姉妹と同じくらいの年齢だった。
手首を切って自殺未遂した末妹セシリアの台詞は今でも心に残っている。
そして"13歳の女の子"でも、"問題を抱えたティーンエイジャー"の当事者でもなくなってしまった今、再び視聴できたことが嬉しい反面、ますます彼女たちから遠ざかってしまったことが悲しくて仕方ない。
原作のジェフリー・ユージェニデス著『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』も併せておすすめ。

永遠に僕のもの

カンヌ国際映画祭のある視点部門で上映された、アルゼンチン・スペインのミニシアター系映画。
実話を基にしたクライムムービーとして観ても面白いし、LGBT映画としてもエモい。
主人公・カルリートス役のロレンソ・フェロは、本作がデビュー作とは思えないほど雰囲気のある俳優で今後に期待大。
罪悪感がぽっかりと欠如した、中性的な美貌を持つ少年の危うさを淡々と描く感じがいかにもヨーロッパ映画といった趣で好き。
シリアスな場面にユーモアのある絵面を切り込むところにもセンスを感じる。

マザー!

何だこれは……と観終わった後ドン引き、しかしそれが味わい深かった『マザー!』。
日本で公開中止されたのも納得、観客から酷評されるのも当然だろう。
とにかく思い通りにいかない観ている人間を怒らせるような展開、ショッキングな描写も多く、「観るストレス源」といった感じ。
ただこういう映画嫌いじゃないんだよね、と思いながら何度か観てしまった。
どうも宗教的な暗喩があるらしく、日本人にはより理解が難しいかもしれない。
おすすめはしないけど、ハマる人はハマりそうな映画。

レクイエム・フォー・ドリーム

『マザー!』と監督繋がりで『レクイエム・フォー・ドリーム』も鑑賞。
ときには普通の人々をも襲う薬物依存の恐怖にぞっとする。
ぐわーっと迫りくるカメラワークも頭に響く感じで効果的。
すぐそばにある落とし穴と、それに落ちていく人たちを徹底的に描ききっていて、身近でリアルさのあるホラー映画というか……
アロノフスキー監督の「モンスター不在のホラー」という言葉が絶妙。

スワロウテイル

リリィ・シュシュのすべて』が大好きな人間にはたまらない作品だった。
むしろ今まで観ていなかったのが不思議なくらい、岩井俊二監督の世界観がものすごい。
無国籍的な空気感と効果的な音楽の使い方、そこに生きる人々の普遍的な感情、リアリティのあるファンタジックな世界。
きれいだけど容赦の無い無情な世間と、何とか生き延びようとする人間の力強さに圧倒される。
なんとなく懐かしい気持ちにさせられるような作品。小説版も読んでみたい。

セッション

今年やっと観られた作品の中に、チャゼル監督の『セッション』も。
同監督の『ラ・ラ・ランド』はまだ未視聴なので近いうちに観たい。
さて、よく後味の悪い映画として語られる『セッション』。
この映画を後味が悪いと感じるかどうかは、音楽経験の有無にも左右されそう。
音楽の師弟関係はスポ根的だし、この作品にみられるようなパワハラは少なからず存在する。
むしろ、そのような師弟関係に対して反旗を翻すラストシーンは後味が良いとさえ感じる。
ただ、本作で監督がやりたかったことはエンドロールへの入りの部分に集約されていて、考えるな感じろ系映画として観るのが正しいのかも。

サウルの息子

数多いホロコースト映画の中でも、なぜか静謐な印象を受ける。
主人公・サウルが寡黙だからかもしれない。
終始響いていた銃声や怒鳴り声より、サウルの淡々とした、それでいて切実な姿の方が印象深い。
ホロコースト映画の中で『ライフ・イズ・ビューティフル』が意図的に明るく、父から息子への愛情を描いた映画なら、『サウルの息子』はひたすら暗鬱に同じ感情を描く。
だからこそ、サウルが微笑むシーンがより一層悲壮に映る。
個人的なこだわりだけど、登場人物の国籍と言語が一致している映画はとても好き。

戦場のピアニスト

人生で初めて実写映画を映画館で観た作品が『戦場のピアニスト』だった。
小さい子供に戦争映画を観てほしくないと渋る母に対して、祖母は「子供のうちこそこういった作品に触れるべき」といって劇場へ連れて行ってくれた。
今でも最も好きなタイトルのひとつ。
大人になってから改めて観ると、また別の発見があって面白い。
例えば、ドイツ軍のホーゼンフェルト大尉とポーランド人シュピルマンの出会い。
ホーゼンフェルト大尉がベートーヴェンの『月光』を弾き、シュピルマンがショパンのバラード(原作ではノクターン嬰ハ短調)を弾く対比は今更になって気づいた。
脚本は手元にあるものの、原作は未読であるためそろそろ手を出したい。

T2 Trainspotting

まさか『トレインスポッティング』の続編が20年後に出るとは思わないじゃん?
キャスト、制作陣にも変更なし、まるでジャンキーの同窓会。
前作をリアルタイムで観ていないので、同じ時代を共有した人が羨ましい。
どうしようもない若者たちがどうしようもないおじさんになって、盛大に躓きながら生きている。
その様をポップに描いていて、笑えるような切ないような気分にさせられた。
完全に前作のファン向け作品なので、初見勢は一作目から観るのが良さそう。

トレインスポッティングはいいぞ。

メメント

最近『TENET』で話題のクリストファー・ノーラン監督。
私は今年やっと『メメント』を観た程度に出遅れている。
聞くところに寄ると、『TENET』も難解で考察し甲斐のある作品だとか。
『メメント』もまた、難解かつ緻密なストーリーがおもしろかった。
前知識を入れず、ネタバレ考察など見ず、まっさらな状態で飛び込んだのが良かった。
だからこそ、ここでも多くを語らない。
そして『TENET』もなるべく予備知識を入れず、そのうち観てみたい。

来年観たい映画

他にも再度鑑賞したタイトルを含めると良かった映画はたくさんあるのですが、挙げきれないのでこのあたりで。
次いで、来年観たい映画を自分用にメモします。

ナチス第三の男

原作のローラン・ビネ著『HHhH』が映画化したことを遅ればせながら(本当に遅ればせながら)知ったので気になっているところ。
ハイドリヒ役があまり似ていない気もするけど、原作通りだとすればこの作品の主人公は彼のようで彼じゃないので置いておきます。

追記(12/20 14:01)
観ました。
原作『HHhH』を映画化するのは難しそう、ハイドリヒ役があまり似ていない、ということで勝手にハードルを下げていたこともあり、予想よりずっと面白かった。
ただ、史実をある程度押さえている人向け、かつ原作より視点が中立的ではない感じ。
"サロン・キティ"ネタや、音楽教育に熱心なハイドリヒ像をいれてくるあたりがマニアック。
クールで狡猾な官僚ハイドリヒのイメージを壊しにかかってきたのも挑戦的。
そして、この物語の真の主人公たるチェコ軍レジスタンスの描き方が良い。
同じレジスタンスの女性と恋に落ちたり、英雄視しすぎず、人間味のある部分も残っている。
心情描写が少し鼻につくものの、一本の映画によくまとめたなあと素直に感心した。

トム・アット・ザ・ファーム

早くグザヴィエ・ドランを履修しないといけない気がする。

ナイト・オン・ザ・プラネット

ずっと気になっている作品のひとつ。
ウィノナ・ライダーがかっこよさそう。

ノッキン・オン・ヘブンズドア

これもずっと気になっている作品。
ただ、ものすごく刺さって持っていかれそうなのでタイミングを計ってます。

追記(12/20 08:31)
観ました。
「世界で一番薄い本は『ドイツ人ジョーク集』」なんてエスニックジョークがあるくらいなのに、ユーモアたっぷりのドイツ映画。
ドミノが倒れるようにリズム感の良い展開と、余命幾ばくとなった二人組が巻きおこす怖いものなしの道中に笑わされっぱなし。
同時に、残り僅かの生を存分に謳歌する姿勢に泣きっぱなし。
死ぬ運命は変えられなくとも、どう死ぬかは自分で決められるという勇気を与えてくれる。
骨肉腫の相方が、少しずつ脳腫瘍の相方に感化されていく姿も素敵。
映像は洒脱だし、登場人物誰しもが面白く、二人組の生き様が小気味良い。
生きているうちに観て良かったと思える名作。

ダージリン急行

ウェス・アンダーソン監督の映画が気になる。
いつの間にかU-NEXTの配信が終わっていたので、これはPrime Videoで買います。

ヘレディタリー/継承

『ミッドサマー』にやられたので。

マシニスト

主演の役者根性がとんでもないと聞いて。
おそらく好きなタイプの映画だと思います。

落下の王国

先日テレビ放映されたと聞いてびっくりしました。
どうしてももう一度観たいのに観る手段がない……

映画でも眺めながら良い年末を

年末年始はのんびり映画でも観て過ごしたいものです。
2020年はいろんな作品を鑑賞できた一年間でした。
来年もマイペースで、好きなときに好きなものを観ていく予定です。

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