オーガニック野菜のビジネスモデル
ホールフーズ・マーケットとは
スーパーマーケットのなかでも
やや高級品を扱う
オーガニック食品や自然食品を多く扱う
そんなスーパーマーケットを「グルメスーパー」といいます。
ただし自然食品を扱っていても、農業っぽい素朴さを売りにしているところは、「グルメスーパー」とは呼ばないようですが。
世界でもっとも有名なグルメスーパーの1つに
「ホールフーズ・マーケット」
があります。
アメリカを中心に、カナダやイギリスで店舗展開しています。
日本には進出するとかしないとか噂が絶えませんが、令和以降は「進出する」という話を聞かなくなりました。
ホールフーズ・マーケットはもともと独立系のスーパーでしたが、2017年にアマゾンの傘下に入りました。
ホールフーズ・マーケットの功績
ホールフーズマーケットは、オーガニック野菜のビジネスモデルを開拓した企業でもあります。
オーガニック野菜(有機農法の野菜)は、オーガニックでない野菜(慣行農法の野菜)よりコストが高くつきます。
なので、その分、高く売れなければなりません。
ところがホールフーズマーケットが登場する前は、オーガニックであるがゆえに高くついた生産コストを販売価格に転嫁することがなかなかできませんでした。
正確にいうと
オーガニック野菜とそうでない野菜が同じ価格で並んでいれば、オーガニック野菜が先に売れる。
しかし、オーガニック野菜がそうでない野菜より高ければ、人々は安いほうを選ぶーーつまりオーガニックでない野菜が 先に売れる。
というジレンマに陥っていました。
この状況を劇的に変えたのがホールフーズマーケットでした。
そのためにホールフーズマーケットが行ったことは以下の2つです。
オーガニック野菜とそうでない野菜を並べるのをやめた
オーガニック野菜に「エステ」を施し、「きれいな服」を着せた
オーガニック野菜とそうでない野菜を並べるのをやめた
ようするにオーガニックでない野菜(慣行農法の野菜)は仕入れないこととし、オーガニック野菜だけを置くことにしたということです。
これにより、普通のスーパーマーケットとは異なる客層が来るようになりますし、価格で比較されることがなくなります。
オーガニック野菜に「エステ」を施し「きれいな服」を着せた
それまで、オーガニック野菜は自然に近いことを強調するために「泥のついた状態」で売られていました。
売場は素朴であることを強調するために地味に設計されていました。
それが常識のようになっていたわけです。
しかしホールフーズマーケットはその常識と反対のことをしました。
「泥感」を排除した。
見た目がよくなるようにトリミングした。
高級品に見えるようにパッケージを工夫した。
すなわち、オーガニック野菜がカッコよくセンスよく派手に見えるための演出やデザインに力を入れました。
さらにアメリカ人が最も好む色は何かを調べ(紫だと判明)、緑と紫を中心に売場を設計したりもしました。
(いわゆるビジュアルマーチャンダイジングです)
今でこそこうした演出やデザインはあたりまえのように行われていますが、ホールフーズマーケット登場以前の自然食品店はそうではなかったのです。
オーガニック野菜のビジネスモデルが成立
これによりオーガニック野菜は、
そうでない野菜(慣行農法の野菜)とは違うもの、異なるカテゴリに属するもの
として人々に認知されるようになり、端的にいえば
「高いのが当然」
「高いけど、買う」
という存在になりました。
この変化を
「単にデザインを改良した」
と捉えるのは中途半端な理解だと思います。
過去には
「オーガニック野菜をおっかなびっくりおずおずと売る」
という店ばかりだった中で、発想を変え、
「オーガニック野菜を自信満々で高そうに売る」
という店を作ったところにホールフーズマーケットの功績があります。
「古いタイプの自然食品店」から「新しいタイプの自然食品店」へと、ビジネスモデル自体を変化させたと捉えるべきでしょう。
アンゾフのマトリクス
売上が伸び悩んでいると、気持ちが焦りますね。
いろいろと迷走することが多いものです。
そんなとき、落ち着いて今後の対策を考えるのに役に立つフレームワークの1つが「アンゾフのマトリクス」です。
売上の伸び悩みを打破するには、何かを変えなければなりません。
その「変え方」には、
既存の市場に新しい商品を投入する
既存の商品を新しい市場に投入する
新しい市場に新しい商品を投入する
という3つの選択肢があります。
これを図示したものを「アンゾフのマトリクス」と呼びます。
言われてみればさして目新しいこともない考え方ですが、伸び悩んでいるときには案外、気づかないものです。
さて、ホールフーズマーケットがしたことを「アンゾフのマトリクス」的に解釈すると、以下のようになります。
既存の市場(一般大衆市場)から新しい市場(プチお金持ち市場)に移動した。
既存の商品(素朴な野菜)を新しい商品(おしゃれな野菜)に変えた。
結果的に、新しい市場に新しい商品を投入することになった。
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