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つわもの

通称、下の廊下。

黒部ダム直下より黒部川沿いの登山道。そのあとに続く水平歩道をあわせて欅平駅まで歩いてきた。

関西電力管理の道を含むため毎年約ひと月程度の期間のみ解放となり、(開かない年もあり)この期間に多くの人が入山すると聞いた。

毎年のように、滑落者が出るような厳しい道なので準備も周到にしなければならない。当然一日での踏破は難しいので中間地点にある阿曽原温泉に泊まらせていただくことになる。温泉地での宿泊といえば聞こえはいいのだが、プレハブ小屋もしくはテント泊のどちらかだ。小屋は積雪期前には毎年解体されるためプレハブ仕様となっている。こうした努力を惜しむと、雪崩にあってしまうのだそうだ。毎年の組み立て・解体作業には本当に頭が下がる。

私たちは当然のようにテント泊仕様。荷物が重くなるリスクはあるのだが、満員の小屋泊はどうしてもいただけない。それに、このルートをテントを担いでやってくる人たちにも興味がある。

初日の黒部ダム下。さすがにいつもの登山道とは様子が違う。歩きなれた登山靴に年季の入ったザックにヘルメットがぶら下がっている。いやでも緊張とやる気が出てくる。登山道はほぼ人一人分の幅しかないので、人としゃべることもあまりなく、景色に圧倒されながらもくもくと阿曽原温泉を目指すことになる。

昼過ぎ小屋に到着。到着が早かったせいもあり人はまだまばらだ。テント場に向かい荷物を下し、あちこちをカメラに収め、設営を始めたころ続々と宿泊者が集まってきた。

あまり広くはないテント場なので皆のテントがよく見える。登山ルートがルートなので、いつもとはちょっと様子が違うようだ。ツエルト泊ありタープ泊あり、最新の軽量テントあり。そういう私たちも一人用テントを二人で使う。そう、荷物が軽いほうが安全なのだ。

テントの設営が終わり一息付いたころ。となりに広げてあったテント(ポールはなく、ただテント布が広げてあった)の中が動き出した。最初は場所取りのために取り合えづ広げてあるのだと思っていたのだが・・・

驚くことに中に人が寝ていたのだ。中から出てきた人が「こんにちわ」とあいさつをくれたので、驚きをかくしあいさつを交わした。その後話を聞かせていただくと、今回は軽量化のためにポールは持ってきていないとの事。

凄い!いろいろと聞いたことはあるがこれは初めてだ。しかし驚くのはまだ早かった。そのあとその人のザックからは、ビール・ウイスキー・日本酒と登場したのだ。

いろんな人がいる。面白過ぎる。まさに強者だ。今日もいい日だ。明日もがんばろう。

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