『葛飾砂子』泉鏡花

1900年の、泉鏡花の作。

歌舞伎役者の死、という出来事から
ある家の娘が失踪する、という騒ぎが起きる。

中盤まではこの、娘の家の人たちを中心に描かれる。
中盤で突然船頭に視点が切り替わり、
彼が川で溺れかけている女性を見つけた話に展開。

この女性が失踪した女性で、
歌舞伎役者が好きすぎて後追い自殺をしようとした、
という所で冒頭との関係が繋がる、
という話。

なんとも泉鏡花の文章は分かりづらい(こと、戯曲でなく小説の場合は)が、
言葉のリズム・響きにはものすごいパワーがあり、
分からないなりに読み進めていくと面白くなってくる。

簡単には読み進められない、
ゴリゴリのお煎餅みたいな読書体験が出来る。

内容としてはそんなに展開しないながら、
言葉の限りを尽くした美麗な文章と世界観に浸る。
こんな読書も良い。
そして、これを声に出して読むと尚更。
音にされるべき文章である。

しかし、鏡花の文章、
時代の隔たりがありすぎて読み進めにくいのかと思っていたが、
中島敦が『鏡花氏の文章』で
「鏡花さんの文章はごちゃごちゃして読みづらい」
みたいな事を書いている。
時代の隔たりだけが原因では、ないのかもしれない(笑)

今流行りのゲーム『文豪とアルケミスト』では、
中島敦のこの、「読みにくい」発言もネタにされており、
リサーチが細かいゲームだなとおそれいった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?