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勝手に動画分析 #45「今だからこそ現実感が揺さぶられる感覚が興味深い」

こんにちは、BYNDのNATUです。

BYNDではナビゲーターやTAとしてセッションに参加しています。

noteでは「週末にゆっくり嗜む動画」というコンセプトで個人的に気になった動画を毎回一つ取り上げ、4つのベース項目と1つのエクストラ項目の計5つを軸にその動画の唸るポイントを分析したり解説したりしてみたいなと思ってます。

今回は、スペインのクリエイターによる動画作品。京劇の小劇場を軸に展開させる表現とメッセージ性がとてもよくて、映像で伝えることの力強さを感じた作品です。


Zabala - URTU

 (via vimeo|Rafa Zub)


Filmed and edited by Rafa Zub / @rafazub
Music by Zabala / @zabala.music


今回の5項目チャートはこんな感じです。

今回のエクストラ項目は「非現実感」。


そしてそれぞれ5つの項目のショートコメントがこちら。



[LOOK:★★★★★]


演出的なグレーディングは抑えてドキュメンタリー調のリアリティ感じる色をベースにしながら、それでいて非現実さを匂わせるような刺激的な色使いも併用しているというすごいバランス感覚のLOOKです。部分的に彩度を上げたり下げたりしながら要所要所で記憶色(記憶の色は彩度が極端)を活用した演出がされてますが、その演出もやりすぎないレベルで施しているのがまた効果的でうまいです。


[音:★★★★]


音も映像もそれぞれのクリエイターが対等な立ち位置でテーマに向けて表現しているため作品における相乗効果は抜群。どちらが欠けても表現として成り立たないなと感じました。デジタルな音色から逆に哀愁を感じさせるような曲調や展開はとても作品の世界観にマッチしています。


[編集:★★★★]


作り物のようなリアル、リアルに見える作り物、その境界を曖昧にしながら進む面白い作品で、編集としても少しローテクであからさまなVFX表現を使ったりしながら中々に脳を揺さぶってきます。演出を過剰にすると没入感が削がれるところをこの作品はやりすぎにならないギリギリを攻めていて、むしろグッと作品のメッセージ性に思い巡ってしまうんですよね。とても巧い編集だなと感じました。

こういうベタな合成表現が逆にマッチするすごさ。


[構成:★★★★★]


京劇団のコミュニティにある時代性とのちぐはぐを感じ取り、そこから伝統と先進技術の進む先を考えさせるという構成がまずスタートとしてかっこよすぎる。そしてそれをしっかり映像と音を使って作品として視聴者に投げかける。これぞ動画ならではのパワー。この世界観、好きです。


[非現実感:★★★★★★]


リアルなんだけどリアルじゃない。この感覚を実写表現をベースにした動画作品で味わえるのは中々稀で、すごく難しい表現だと思ってます。チープさがあるからこそ視聴者は想像力で補完してリアルさを感じるというか、現実と見紛うようなリアルCG・AI映像が溢れてきた今だからこそ、この作品の表現が成り立つのがまた面白い。数年前にこの表現をやってもこの不思議な現実感は生まれなかったと思うんですよね。今このときにこの作品を見て物思うことができるのは幸せな体験だなと思いました。




さて、以上いかがでしたでしょうか。

動画の面白みに少しでも触れてもらえたなら嬉しいです。

それではまた次回。NATUでした。

(Writer:スタッフ NATU)

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