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5月10日 「お茶を少々…」ではなかった話

実は、数年前から表千家の茶道を習っている。どちらかというと、日本人として日本の文化を知りたい、とか嗜みとして知っていたらいいよねという理由から始めたため、お稽古もどちらかというと前のめりでは無く年数の割に進み方も遅々として「お茶やっています」というのもちょっぴり恥ずかしい程度である。よって、あのお見合いの席でよく使われる「お茶を少々」という言葉がある意味ぴったりな茶道人である。

茶道は、どうしても狭い茶室で状況からしても三密となりやすい上に、他人が点てた(入れた)ものを飲むため、このご時世お稽古が厳しい。すでに3ヶ月間お稽古ができておらず、状況的にも気持ち的にもすでに茶道とは程遠い生活を送っていた。そんな中、先生の計らいで、オンラインでのお稽古をしてくださることになり、昨日初めてそのオンライン茶会に参加したのだ。

オンラインお茶会とはどんなものかというと、約1時間Zoomを使って行われた。ひとりの生徒さんが、季節にあったお点前をしその解説を先生がしてくださり、それを生徒たちは静かに拝見する。お点前は20分ほどで終わり、お菓子とお茶をいただくときに、参加した他の生徒も各々が用意したお菓子とお茶をいただき、最後それぞれにご挨拶とコメントをして終わるという流れだった。オンラインでの会議や飲み会とはまったひとりの所作に集中し始終静かに時が過ぎて行くというとても新鮮なオンラインの時間だった。

ああ、良き1時間を過ごしたなあ。とオンラインを切った後、私に異変が起こったのだ。なんと、気がついたら涙が止まらなかったのだ。初めての経験だった。私が泣くときはだいたい、嬉しいか悔しいとき。あとは映画などに触発されたときなのだが、そのどれでも無く、ただ心に沁みた何かが溢れた、そんな涙だった。

思えば朝からいつもと違った。14時からのお茶会に合わせて、近所で発見した町の古い和菓子屋さんに行って季節の上生菓子と柏餅を買い、なんと無くお花屋さんで洋花だがお茶会を意識した縦に長いお花を買い、家ではずーっとしまいこんでた茶碗と茶筅を出して簡単ながらお茶を点てた。オンライン飲み会はダイニングテーブルだが、床で正座して臨んでみたりした。

それら全てが自分の中でもどこかしっくりして、全てひっくるめて何か心の琴線に触れたようだ。お免状をとって教室を開きたいとかもないし、どちらかというとお茶から離れようかなと思った時期もあったが、思った以上にお茶が自分の心の中に入り込んでいたんだな、と発見があった。やっぱり自分は日本人だったのだな、そう思った1日だった。お点前的にはまだ「少々」でしかないが、やはり禅の精神でもあるお茶の心は、DNAレベルで組み込まれているのかもな、と思ってしまった。そして、初めてまだ数年。自分から発信できるほど何かがあるわけではないが、どちらかというと日本人離れしている私が惹かれたお茶を、小さくても発信できることも考えていきたいな、と思った。

まずはちょっとそわそわする日の朝に、お茶を一服点ててみよう。

byMAKORI

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