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感想:L'Effervescence(レフェルヴェソンス)

こんにちは。レストランのレビューを書くのはかなり久しぶりのような気がします。

今回レビューするのは表参道の長谷寺の程近くにお店を構えるレフェルヴェソンスさんです。ミシュランガイド東京2021年度版から3つ星を獲得し続けています。幸運なことにたまたま食事をする機会をいただきました。

勿論極めて有名なお店ですので、店名の意味やその他の情報に関してはお調べになればいくらでも出てくると思います。なのでここでは省略します。あえて書くとすれば、この点に関しては記事の後半でも言及しますが、シェフが重視する「自然との繋がり」というテーマはコースを通して感じることができました。

テーブルは11席(地下の完全個室を除く)。半円形空間の半個室、2人横並びのテーブルがありました、珍しい。店内は薄暗くモダンな雰囲気。キッチンは地下にあるようです。

以下各お料理の詳しい説明と感想です。

コース構成

・Welcome ー突き出し
・Circle of life ー前菜①
・Genesis of Civilization ーパン
・Ars longa, Vita brevis ー前菜②
・Fixed Point ー前菜③
・Forent to Ocean ー魚料理
・Blessings of the forest ー肉料理
・ラビオリ
・Migration ーチーズ
・Emergence ーデザート
・小菓子&食後のお飲み物

1品目:野菜クリスプのブーケと豆腐サワークリーム

揚げた、もしくは乾燥させた数種類のお野菜。それを自家製の豆腐サワークリームにつけていただきます。このクリームはバター代わりにもなります。

2品目:蛤のササニシキリゾット 牡丹海老とみりん エンドウマメと自家製キャビア

蛤の出汁で炊いたリゾット2種類。手前は生に近い海老と何らかの海藻(細くて赤いもの)、花穂紫蘇。メニューカードの通りみりんが使われているようで、確かに仄かな甘みがありました。種類は違いますが海老も甘味を持つ食材ですので、相性が良いのかもしれません。

奥は蛤、エンドウマメ、キャビアのリゾット。こちらは材料から想像する通りのお味という印象。お皿全体で海のものが主役になっており、下に敷かれたわかめの香りも存在感があります。

3品目:じゃがいも入りフォカッチャと古代小麦入りパン

普段パンは品数に含めないのですが、メニューカードに明記されておりこだわりを持たれているようだったので、それを尊重する形にしました… と言っておきながら写真を撮るのを忘れました。すみません。

パンはレフェルヴェソンスさんの姉妹店「ブリコラージュ ブレッド&カンパニー」さんで作られているそうです。フォカッチャはじゃがいもの風味を感じさせるため温めずに提供されます。もう1つの方は味が濃くて美味しかったです。

4品目:アルチザン野菜

日ごとに届く様々な野菜・ハーブ類を色々な調理法で仕立てています。シェフの理想を体現する料理と言えるでしょう。季節によりおよそ50〜70種類を使うようです。提供前にはその一部を美しく並べて見せてくれます。以前ご紹介したJINBO MINAMI AOYAMAさんも似たようなスタイルでスペシャリテのバーニャカウダを提供していますが、そちらは濃厚なソースを合わせているのに対し、レフェルヴェソンスさんはドレッシングのみのシンプルな味付けに留めているという違いがあります。苦味や辛味を含む野菜独特の風味をよりストレートに楽しめるという点では、今回のような仕立ても好きです。

5品目:蕪を複雑に火を入れて シンプルに

「定点」と名付けられた生江シェフのスペシャリテでありレストランのシグネチャー料理。4時間ほど湯煎にかけた後バターでソテーした蕪、パセリのソース、クルトン、パンチェッタ(?)、イタリアンパセリ。

蕪は凄くジューシーかつ適度な歯応えが残る仕上げ。長く火を入れているのにしっかり食感があるのは不思議でした。蕪の甘みもよく出ていて、極めて丁寧に調理されているんだなと感じました。下に隠れた豚と表面に乗ったイタパセも良いアクセントになっています。

6品目:羽太(はた)の乳清ポシェ サバイヨンソース 筍 山椒 春の山菜

使用されている食材・調理法はご覧の通り。山菜はこごみ、タラの芽、木の芽、そして緑の長いものはふき?でしょうか、分かりません。お魚の下には筍のソースが敷いてあります。春の食材がシンプルに美味しいお料理でした。

サバイヨンソースは自分の中でアングレーズに似てデザートに使うものという印象しかなかったので驚きました。ここではバターと白ワインを使い、酸味が良く効いた仕上がりに。細かく気泡が入っていて、不思議な口当たりです。

「乳清でポシェ」という部分に関しては気になりました。サービスの方からも珍しい調理法であろうという言及がありましたが、その理由については特に説明を受けませんでした。長らくこの方法で調理しているそうで、何らかのこだわりがあるのでしょう。科学的に間違っていない限りは、こだわりを貫き通すことは素晴らしいことです。

余談:乳清の役割について少し調べてみました。
乳清には乳清タンパク質の他に乳糖、ミネラル、ビタミンなどが含まれる。牛乳に含まれるタンパク質の約20%を占める乳清タンパク質(ホエータンパク質)はβ-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、ラクトフェリン、免疫グロブリンなど数十種類のタンパク質から成る。カゼインが熱に安定でありながら酸で凝固するのに対して、酸には安定だが、乳清タンパク質は熱により凝固沈澱する(しかしいずれも他のタンパク質に比べると熱に強い)。熱変性させた乳清タンパク質は、泡立てた牛乳の気泡やアイスクリームの結晶を安定化させる。
結局よく分かりませんでした。栄養効果が注目されていますが、乳清の(つまりかなり薄い)状態ではほとんど効果は出ないんじゃないかな、とも思います。ブイヨンなどで加熱する場合とどう違いが出るのでしょう。

7品目:京都産・七谷鴨胸肉を東京檜原(ひのはら)村のミズナラで焼いて ソース・オ・ヴァンルージュ&アバ 椎茸とほうれん草

脂をカリッと焼いて中は鮮やかなピンク色。とても美しいし、香りも良い。凄く美味しい鴨でした。

ソースは鴨から取った出汁に赤ワインやしょっつる(!)を加えたソースと鴨レバーのソースの2種類。どちらも濃厚な旨味があって美味しい。付け合わせもシンプルに○。

正直今の私のフレンチの知識では、これ以上言うことがありません。ただお皿に乗る要素全てが極めて洗練されていると感じさせるお料理。複雑に盛り付けられたお料理も良いのですが、逆にこのようなシンプルな仕立てで勝負しているのが格好良いですね。レベルの高さを示しています。

8品目:鴨腿肉のラビオリ 蕗の薹 コンソメ

このお料理もシェフの価値観をフルに反映しています。むしろ、そのためにコースに組み込まれているとも言えます。聞いたところでは、日本料理でいうご飯ものなどの締めという位置付けが成されているようです。コースの分量が足りずパンでしかお腹を満たすことができないという事態を克服するため、なんと高級店では珍しいおかわりができます(5ピースまで)。コンセプトとして面白い。

季節によって詰め物は変わり、現在は鴨腿と蕗の薹。蕗の薹は白味噌と合わせてふき味噌のようにしているそうですが、一度熱を入れてもあれほど緑が綺麗に残るものなのですね、意外でした。個人的には蕗の薹は爽やかな香りが好きですが、このラビオリは少々苦味が立ちすぎているかな、という感じがしました。そのバランスが難しいですよね、蕗の薹は少しでも存在感がありますから。

9品目:アルチザンチーズ

白カビ、青カビ、カチョカヴァッロ、など。全て国産。チーズそのものをしっかり味わうのは個人的にレアな体験。

10品目:とちあいか チーズ「さくら」のムース 杏仁のアイスクリーム ホワイトチョコレートと香草たち

完全無農薬で育てられている苺を使ったデザート。さっぱりします。本音を言えば、この後に濃厚めのデザートが欲しかった…笑。桜の塩漬けも入って、季節感があります。

11品目:小菓子&抹茶

最初にこの状態で運ばれてきます。


左上から時計回りにベルガモットとカモミールのシュー、落花生のフィナンシェ、ヘーゼルナッツのプチモンブラン、ショコラ ドライジンジャー、金柑 にごり酒 琥珀糖、ローズマリーのクリームサンド。丁寧な仕事ぶりです。

一緒に出てくるのは抹茶。サービスの方がその場で点ててくださいます。サービススタッフは全員が月に1回教室に通って稽古を受けられているそうです。ここにも茶懐石の要素が見受けられます。それはそれとして、この抹茶がコーヒーや紅茶の代わりになります。なので…

最後にお土産もいただきました。ありがとうございました。

最後に

本記事では11品表記ですが、初めの突き出しや最後の小菓子を含めているので、思ったよりボリューム感はないです。

ディナーをいただいて持った感想は次の2つ。

まず料理について、行われている仕事の質が高い。正直に言えば、感動するほど美味しかっただとか、自分の好みどストライクだったというお料理は今回に関してはなかったです。ただ、「美味しい」という感覚は概して個人的な好みや生活環境にも左右されるもので、従ってお店の評価に使うのは難しい場合があることも事実。その点、レフェルヴェソンスさんはあらゆる側面において隙がないお店作りがされており、それはお料理についても同様です。例えば様々なお野菜の下処理であったり、肉の火入れであったり、盛り付けであったり。まだまだ経験は浅いですが、それがミシュラン店たる理由なのかな、と推測します。

2つ目は、1つ目とも関連しますが、サービスの方々がとても優秀。堅すぎず、それであってお店の雰囲気を壊さない、非常に居心地が良い接客。何より感銘を受けたのは、私や同伴者が質問(お料理とは関係ない質問も含めて)全てに迷いなく受け答えされていました。客と同じ視点に立ち日頃から意識していないと、あそこまでの対応は中々できないと思います。よく訓練されている。やはりお料理を運んで料理の説明をする+αが鍵になってくるのですね。

3つ星レストランに行く機会はそうないので、とても貴重な体験になりました。ありがとうございました。

今回は以上です。ここまで読んでくださった方がいらっしゃれば、感謝します。


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