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ペーパージャケット/開発の裏側【#02 偶然の発見】

バタフライボードの福島です。

副業からスタートしたバタフライボード社の5年目のチャレンジは、これまでのホワイトボードでの連続的な進化ではなく、全く新しいアイデアを実装した非連続な進化のプロダクトです。

現在、鋭意開発中ではありますが、どんな想いでかたちにし、どうやって製品化を試みているのか、モノだけでは見えない「開発のプロセス」を少しづつですが共有させていただいています。

第2回目は「偶然の発見」です。

アイデアは、考えても出会えない。


私の場合、とにかく頭の中を外に出しかたちをつくることを繰り返します。

そして、かたちをつくるという行為を「新たな発見の場」と位置付けることで、失敗を失敗と思わないようにしています。

ということで、第1回でご紹介した「紙とペン」を、バタフライボードの技術で何とかしたいという思いを実現するために実施したことを紹介します。


Phase1)世の中を知る。

最初は会社員時代に使っていた「裏紙利用の王道であるクリップボード」で普段のメモに使いまくりました。

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昔は何の疑問を抱くことなく使ってましたが、バタフライボードが定番化してた現在では、多くの課題を感じてしまいました。

・持ち運べない
・紙がズレる
・無駄にでかくて重い


そして、持ち運び重視で、ファイル式、バインダー式、穴あけ式などあらゆるタイプで試みるも納得できるものがありませんでした。

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・かき難い
・手間がかかる
・野暮ったい

ちなみに国内外から集めて30種類ほど使ってみました。。。


世の中には満足いくものがない!
という結論に至り、初代バタフライボードを開発するきっかけの時と同じ感覚に見舞われ自然に体が反応し「かたちをつくる」が始まりました。


目指すは、

思わずかきたくなる、世界最小。


Phase2)とにかく「かたちをつくり」五感で感じる。

まずは、Phase1の結果を踏まえ開発条件を設定しました。

<開発条件>
① 持ち運びたくなること
② かきたくなること
③ 手間がいらないこと
④ 最小サイズで軽くて硬いこと
⑤ ズレない
⑥ かっこいいこと

目標は立ててはみるものの、具体的なアイデアがあるわけではなかったので、世に存在する製品を改良するところからスタート。


考える・かく・つくる・壊す・考えない・・・

このサイクルを「約半年間」繰り返し続けました。


ワイヤー、ゴム、板バネ、接着、折り曲げ・・・・などマグネットにとらわれず試行錯誤を繰り返したどり着いたのがこのプロト1号です。

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用紙を3つ折りにして両面かける「裏紙ノート」が完成! 

しかし、ボツに。。。。。

実際一か月程使ってみると、穴あけは必要はないが、紙を折り曲げるという行為がどうしても面倒になり、開発条件③の手間がいらないことがクリアできませんでした。。。


Phase3)偶然の発見。

プロト1号で紙を軽く押さえる目的で使用したマグネットが、たまたま挟み代をつくったことで力点(支点)が2か所になり「強力なマグネットでも簡単に外すことができる」という、マグネットの常識を一転させる現象を発見してしまいました。

気づいてしまえば理論は単純ななのですが、マグネットは強いと外しにくいという長きにわたる常識が体に染み込んでいるが故に、常識を疑うことの難しさを改めて感じました。

マグネットの常識:クーロンの法則

PJ 写真加工用-08-08

マグネットは磁場の強さに比例するため、強力なマグネットになればなるほど外し難くく、距離の2乗に反比例するため、マグネット間の距離が離れてしまうと極端に保持力が低下してしまうというのが、クーロンの法則によるマグネットの常識です。

従って、世の中に存在するマグネット式のクリップは、外しやすいが磁力が弱く数枚程度しか挟めなかったり、複数枚挟めるが磁力が強すぎて使い勝手が悪いという課題を持っています。

一方、現在でも主流の板バネやコイルバネの様なバネの力を利用したクリップは、強い保持力を得るには素材弾性を高くする必要があり、強い保持力に比例してクリップを開く力も強くなるため、使い勝手が悪いことに加え、邪魔な出っ張りが美しさを損なうという課題がありました。


この発見により「磁力をアナログで制御できるんじゃない?」という発想が生まれ、用紙が少なくても、多くても、簡単に、気持ちよく、存在感無く着脱できるクリップの開発がスタートしました。



Phase4)理論を確立させながら、つくり込む。

「磁力を制御する」ための膨大なパラメータを、理論軸と現物軸で追い込んでいきました。引張強度、磁力、極性、摩擦抵抗、回転モーメント、素材の柔軟性など・・・・を可変させながら計測を行い検証を行っていきました。

理論的なパラメータ決定のポイント
・何枚まで挟めるか
・どこまで綴じ代を狭小化できるか
・用紙のズレをどこまで抑え込めるか


Phase5)四六時中使いながら、つくり込む。

ある程度の完成したらとにかく使いまくって、小さな違和感をつぶしていきました。手になじむ感覚はさすがに数値化することが困難だったため、抵抗感、クリック感、フィット感などを0.1mmのレベルで調整を繰り返し行い最適値を割り出しました。

感性的なパラメータ決定のポイント
・心地良さをどこまで出せるか
・どこまで美しくできるか
・触り続けたくなるか

このパラメータの決定には「時間」も必要になりました。朝の感覚、昼の感覚、夜の感覚、寒い時の感覚、暑い時の感覚、屋内の感覚、屋外の感覚、他人の感覚など、徹底的に使い込みながら、改良を加えていきました。

PJ 写真加工用low_アートボード 1 のコピー 4

↑ はこの一年を共にした道具たちです。高校入学時から35年間使っている道具や測定器もあれば、今年の新入りマットカッターやスポットローラーなど、腱鞘炎になりながらもプロトタイプを納得がいくまでつくり込みました。


Phase6)無事、特許出願。

ということで、理論パラメータと感性パラメータに加え、量産実現性という第3のパラメータを踏まえた「全く新しいクリップ方式」の特許を出願をさせて頂きました!


アイデアは考えても出会えない。

身をもって体験しました。。。。

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