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ペーパージャケット/開発の裏側【#05 軽・薄・強。限界への挑戦】

バタフライボードの福島です。

現在、鋭意開発中の第8弾新製品をどんな想いでかたちにし、どうやって製品化を試みているのか、モノだけでは見えない「開発のプロセス」を少しづつですが共有させていただいています。

第5回目は「軽・薄・強。限界への挑戦」です。

持ち運ぶことを前提とするモノは「軽い、薄い、強い」は永遠のテーマであるような気がします。ノートパソコン、カバン、アウトドアグッズ・・・など、自分自身でモノを選ぶ時の大きな基準になっています。

そしてもう一つ、出っ張りのないフラットさ。

ということで、『マグネット×てこの原理』を使って、軽く、薄く、強く、一枚の板のように持ち運べることを目標に検討をスタートしました。

・「軽く」すると「弱く」なる。
・「薄く」すると「弱く」なる。

この物理現象の基本をどう打ち破るかが肝となります。

① 構造

何といっても究極の薄さが実現できたのは、『マグネット×てこの原理』の構造によるところが大きいです。

既存のバネ式のクリップはどうしても大きなレバー部分が必要になり薄くする事は出来ません。また、既存のマグネット式のクリップではレバーを必要としなしものの、多くの用紙を保持することが出来ません。

<ペーパージャケットの構造全容>

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ここでのポイントは、わずか厚さ1.6mmの『V溝によるてこの支点』と存在感のない『レバー』が、極限の薄さのキーになります。

可動角度は-20°~+45°で、用紙を装着するには十分な可動域を設けています。

薄くて狭小、そして『心地よく開閉』を徹底的に追及していきました。

② 素材

ペーパージャケットの基材は「紙」を採用しました。比重が他の素材に比べ、圧倒的に軽く剛性が高いのが大きな理由です。

紙の比重は0.5-0.6 g/cm3程度、ファイルなどに使われているPP(ポリプロピレン)は0.9-1.0 g/cm3程度なので、40~50%の軽いことになります。そして、厚さと目方向を調整することで、軽さと剛性を両立することができます。

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過去スピーカードライバーの開発を長くやっており、カーボン、金属、樹脂系の素材など様々な振動版素材を時代のトレンドに合わせて試みたものの、最終的には紙の振動版に戻るという経験も大きく影響しました。

ただし、耐水性や強度、そして自然素材が故のソリの問題があり、サイズが大きくなると扱いが難しいという素材です。

ということで、ペーパージャケットでは、以下の対策を行っています。

耐水性と強度対策
耐水性対策耐水性は「紙」の基材に耐水性のあるVP(ビニルペーパー)でコーティングすることで解決しています。コーティングシートは様々な素材を検討をしたのですが、見た目に加え、貼り合わせ強度、耐久性、紙を滑らせない摩擦抵抗の機能性、そして、シート材自身の比重をテストしながら決定をしました。

当初想定していなかったシート材の摩擦抵抗は、プロトタイプをつくり込んでいて発見したキーパラメータであることが分かりました。しかし、素材物性表には記載がなく、自ら測定を行っていく必要がありましたが、ベストな組み合わせができたと思います。

ソリ対策
ペーパージャケットはA4サイズということもあり、ソリが出やすい大きなサイズの部類になります。紙は生き物と言われるくらい、昔から紙にはソリがつきものなので、ソリを出さないではなく、ソリと上手く付き合う事を重視しています。

ポイント①
基材の「紙」とシート材を膠(にかわ)で接着します。この膠は、平安時代から使われている天然の接着剤で、強力な接着力と速乾性に優れていることに加え、弾性に富んでいるため、ソリが出ても柔軟に内部応力を吸収してくれます。

ポイント②
マグネットでカバーをロックする構造にしているため、紙の板を解放状態にせず、強制的にクローズドな状態を作ることで、保管中や輸送中でも強制的にソリを補正するという構造上の対策も行っています。

ただし、湿気や乾燥の状況により「ソリ」は少なからず出てしましますが、使っているうちに環境に馴染んでいくので、ここは使い込んで環境に馴染ませることを心がけてください。

私のフィールドテストでは1週間ほど使い込むと、環境に馴染むことと、可動部がエージングされ、ペーパジャケット全体で心地よさがUPしました。

③ 体感

構造、素材といった目に見えるモノ以外に重要なのは『どう感じるか』です。いくら薄くても、重たく感じたら意味がありません。

人間は、見た目と経験値からくる「想像の重さ」と、実際の「筋肉で感じる重さ」のアンバランスさで重く感じたり、軽く感じたりします。従って、重さ感には個人差があり、とても難しいパラメータです。

ということで、世の中に存在するA4サイズ相当の実測データで多くの人が持つ想像の重さの幅を調べ上げることを行いました。

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詳細なデータは割愛しますが、ざっくりと下記の様な結果となりました。

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日本のノートパッド、レポート用紙等(A4サイズ相当)
・重さの幅:250g~550g
・厚さの幅:6mm~10mm
・枚数の幅:50枚~100枚

USのメジャーなリーガルパッド(レターサイズ)
厚さ:6mm
重さ:210g~250g
枚数:50枚
(100枚仕様も稀ではありますが存在します)

ロディアのA4サイズ(No.19 )
厚さ:9mm
重さ:490g
枚数:80枚

参考)クリップボードやクリップ式のファイルの最大収容枚数
・コピー用紙で10~30枚
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私の体感の結果は

・超軽い:250g
・軽い:300g
・普通:350g
・重い:400g
・超重い:450g

ということで、私の家族にも協力をもらいながら、A4サイズ相当で軽いと感じる重さを300gと設定しました。

当然ですが、上記のデータはあくまでも用紙のみの重さなので、ペーパジャケットはカバー機能を含めて実現しなければなりません。

そこで、用紙の枚数がキーになります。そもそもノート類は無駄な用紙を持ち運ばなければならないという課題があるので、必要枚数さえ持ち運べれば良いのですが、数枚では心もとない。

では、何枚が妥当か?

この枚数は人それぞれな部分はあるのですが、用紙の重さ、用紙の厚み、そして、マグネットのサイズなど総合的な観点で、世の中のクリップファイルの最大枚数である30枚を目標にしました。(1日1枚の利用で30日利用できるイメージです)もちろんペーパージャケットは1枚でも持ち運べます。

コピー用紙30枚の重さ:約120g

ということは、全体の重さを300gとすると、ペーパジャケットの重さは、

300g-120g=180g

これがペーパージャケットの重さの指標となります。

しかし、1回目のプロトタイプは250g。70gのダイエットが必要でした。

シート材の素材や厚み、ベースボードの厚み、カバーの厚み、横幅、縦幅、見返し材、接着剤仕様など、すべてを見直し、0.1mm単位で徹底的に削ぎ落しながらダイエットを行って、最終的に60g減に成功。これ以上削ぎ落していくと剛性が保てないと判断しました。

ペーパージャケットの重さ:190g

コピー用紙30枚と合わせて、約310gとなりほぼ目標値を実現しました。

単に削ぎ落していくだけではなく、あくまでも「剛性」をキープしながら実施したので、かなり苦労しました。。。。


最終的に、
重さ190g、薄さ7mm、最大収納枚数30枚で一枚の板のような強さを実現。

ということで、
コピー用紙30枚を、最も「軽く」「薄く」一枚の板のように持ち運ぶことができる由一のプロダクトが完成しました。(自分調べ)

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