筋肉

【現代日本昔ばなし 10】筋肉馬鹿

 むかしむかし、あるところに、からだを きたえることに いように しゅうちゃく している おとこが いました。

おとこは まわりから、きんにくばかと よばれていました。

きんにくばかが からだを きたえているのには、わけが ありました。

それは、きんにくを きたえていたほうが、おんなに もてるから でした。

「おんなのこを かおや すたいるで はんだんするなんて、さいてー。」
とかいう おんなに かぎって、おとこを かおや すたいるで はんだんすることを、きんにくばかは しっていたのです。

きんにくばかは、きんとれと じむがよいと ぶるぶるするやつの おかげで、すばらしい にくたいを もっていました。

しかし、かおは ぶさいくでした。

なので、ぜんぜん もてません。

けっきょく、かおなのです。

きんにくばかは もう おんなには げんめつ していました。
「おんな なんて、そんなもんさ。おれには きんにくが、ともだち みたいなものさ。あーあ、きんにくが、おしゃべり できたらなあ。」


 あるひ、きんにくばかは いつものように、じたくで きんとれを していました。

いつもより すこし ふかを つよめて やった、そのとき
「いたい。」
とこえが しました。
だれも いないはずの へやから こえが したので、きんにくばかは おどろきました。
「だれだ。おれに はなしかける やつは。」
というと
「わたしよ。きんにくよ。」
なんと、きんにくが はなしかけて いたのです。
「おどろいたなあ。ねがいが かなったんだ。」
と、きんにくばかは よろこびました。
「いつも、きたえてくれるのは うれしいわ。でも、わたし いたいのは にがてなの。」
きんにくは、とてもつらそうに いいました。

「わかったよ。きみが そういうのなら こんごは きんとれを ひかよう。そんなことより、きみは とても かわいい こえを しているんだね。どんな、かおを しているんだい。そこから でては これないのかい。ぼくの きんにくを みてほしいんだよ。しゅうまつの よていは。どこか たべにいこうよ。いつが あいてるの。ぼくは いつでも ひまだから きみの よていに あわせるよ。そうだ、どうぶつえんは いいんじゃない。ぱんだの あかちゃんを みにいこう。あれ、しゃべらなく なったね。わかった。きんにくつう だね。ぼくは けっこう すきなんだけどね。 きみは ちがうんだね。きんとれ やめるよ。おーい、なんか いってくれよ。ひさしぶりの おんなのこ なんだよ。」


それいらい、きんにくばかは 、きんとれを やめました。

しかし、まてども まてども、きんにくの こえが きこえることは、ありませんでした。

きんとれを やめたので、きんにくは どんどん なくっていきました。
あるとき、かがみで じぶんの すがたをみた きんにくばかは、おどろきました。

そこには、からだの だらしない、ただの ぶさいくが、たって いたのです。

「やっぱり かおなのか。」
きんにくばかは、かなしげに、つぶやきました。

そして、いんたーねっとで、びようせいけいの ぱんふれっとを、せいきゅう したのでした。

おとこの みにくさは、かおや すたいるの もんだいでは ないことに、いつまでも きづかず、しあわせに くらしましたとさ。

めでたしめでたし。



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