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岩松勇人プロデュース@ビジネス本研究所:会社のデスノート 鈴木貴博

【会社のデスノート】はこんなあなたのための書籍です。

●早起きが苦手な人
●自分の時間をもっと確保したい人
●仕事の生産性を高めたい人
●人生を変えたい人
●いつも二度寝してしまう人

【会社のデスノートの目次】

第1章 早起きのすごいメリット
第2章 こうすれば早起きが出来る
第3章 早起きが続けられないときは
第4章 飲み会と早起きを両立させる
第5章 早起きで人生を変えた人たち

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今回は、
「会社のデスノート」
という本を解説します。

本書の「はじめに」にはおそろしげにこう書いてある。

・このノートに間違った戦略を書き込んだ企業は死に至る
・ノートを書くのは経営者自身である

本書は、会社が間違った道を歩んで、
死んでしまわないためのルールブックである。

会社が進むべき道を選ぶとき、
大きな方向性を間違えなければ市場は栄えるが、
逆に動けばまずいことが起きる。

2008年のリーマンショック以降、
大企業の経営判断レベルでそうした混乱が
多く見られた、と著者の鈴木貴博さんは語る。

長年大企業のコンサルタントとして
活躍してきた鈴木さんはこの状況を、
真摯に受け止めて
本書を書き上げたそうです。

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トヨタ自動車、ユニクロ、マクドナルド、
セブンイレブン、JALなど大企業の戦略を
例として取り上げつつ、100年に1度
といわれるグローバル経済の激変時代を
生き残るための戦略が導き出されている。

この本の結論は、

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という内容です。

経済学の知識を引用して展開されていて、
初学者にもわかりやすい内容となっている。

鈴木さんのやや辛口なユーモアを織り交ぜられた
語り口調にも、思わず引き込まれる魅力がある。

実際に経営をされている方だけでなく、
従業員の方にもぜひご一読をおすすめしたい。

会社の命運がじつに不安定な今、
自社は正しい方向に進んでいるのかどうか
考えつつ、もしいけないと思われたら
積極的に行動していくことが
大切なのではないでしょうか。

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本書の重要なポイントを
3つに絞って解説していきます。

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それでは順に見てみましょう。

まず1つ目のポイント

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① サブプライムショック後のトヨタ減収収益

リーマン・ブラザーズの破綻に象徴される
サブプライムショックが起こり、
実業の世界をも恐慌が襲った。

それまで日本企業で一番優良企業だった
トヨタ自動車はたいへんな打撃を受けた。

トヨタの売上減少額は5.8兆円、
営業利益の減少額は2.7兆円にものぼります。

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自動車業界は、他の製造業に比べ、
おしなべて販売成績が対前年で落ち込んだが、
なかでもトヨタの減収収益はとびぬけて大きかった。

一番大きな要因は、
北米の自動車販売数の大幅な減少だ。
北米市場の自動車販売数は、
トヨタも、市場全体も、対前年で30パーセント台
の減少率にまで落ち込んだ。

売上が3分の1減るということは、
大企業の経営ではほとんどありえません。

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ここで1つの疑問が生まれます。
「この販売不振は予測できなかたのか」

この、自動車業界全体を襲った激震は、
鈴木さんによると経済学の理論を
もとにすれば予測できたのだといいます。

経済が高度にグローバル化している現在こそ、
経営者は、マクロ経済のレベルで起きることに
対処する能力を持たなければいけない。

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リーマンショック後、アメリカの
経済成長率はマイナス6%成長になった。

つまり、アメリカ人ひとりのレベルでいえば、
年収が6%減ったことになる。
すると生活はどうなるか。
支出が切り詰められることになる。

支出が切り詰められるとき、
切り詰められやすい商品とそうでない商品がある。
これは「短期所得弾力性」という数字に表されている。

短期所得弾力性というのは、
もし所得が1%減ったら、その商品を買うのに
使うお金がどれだけ減るかという数字だ。

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たとえば、外食の短期所得弾力性は1.6だ。
これは所得が1%減ると外食に使うお金は
1×1.6=1.6%減ることを意味する。

自動車の短期価格弾力性は、5.5%。
つまり、年収がマイナス6%であるということは、
需要がその6×5.5=33%というものすごい
レベルで激減するということだ。

この数字は、このたびの北米自動車市場の
減少率にぴたりと重なる。

試しに、アメリカの経済成長率に
5.5をかけたグラフと、北米市場の
自動車販売数増減率のグラフを重ねると、
ほぼ一致するのだ。

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さらに経済学の知識を使ってみよう。
短期所得弾力性に対して、長期所得弾力性という数字がある。

一時的に所得が減ってしまうときの行動が
「短期」の行動なのだが、
時間がたってそれに慣れてきたときにとる行動は
「長期」の行動という。

これからずっと収入が低いままだとわかったとき、
人間は、1年もすると「長期」の所得弾力性に
合わせた行動をとりはじめる。

価格が高い自動車は、短期的には買い控えられた。
しかし、自動車は生活で必要なものであるので、
長期的には極端な買い控えが起こらない。

対照的に、なくても生活できるようなもの、
たとえば旅行などの商品やサービスは、
長期にわたって所得が減ると確実に減少する。

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車の長期所得弾力性は1.1だ。
つまり、短期的に新しい自動車は
がまんすることにしても、その状態が続けば
買い替えの時期がきて、必ず新しい自動車は買うのだ。

そこで鈴木さんは、このままいくと北米の
自動車販売台数は対前年比何十%という勢いで
回復すると予言している。

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② ウォルマート・エフェクトとセブンイレブン・エフェクト

一般的に、価格を下げたほうが売上が増えるのか、
価格を下げないほうが売上が増えるのか。
この「問い」は重要だ。
逆の判断をしてしまうと「会社が死ぬ」
ことに近づいてしまう。

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価格を下げることでどれくらい販売数量が
増えるかということを数字にしたものが、
経済学にある「価格弾力性」の概念だ。

価格を下げても結局売上高が変わらない状況のことを、
「価格弾力性が1.0である」という。

価格弾力性が1よりも大きければ、
価格を下げるペースよりも販売数量が増える
ペースが大きいということになる。

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ふつうの小売業者は経験的に、
特売商品の価格弾力性は1よりも大きいと思っている。

けれど、値下げで増える販売数量は、
「近所の他の競争相手から顧客を取ってきただけ」
とも考えられる。

実際、GMS(総合スーパー)と呼ばれる
量販店の業界では、値下げ競争が続いた結果、
ダイエー、マイカル、長崎屋、西友と
大手量販店が軒並み振るわなくなりました。

優良企業と呼ばれたイトーヨーカ堂ですら
子会社のセブンイレブン・ジャパンに
実質的に救済されるかたちとなった。

値段を下げないと競争に勝てない、
しかしみんなが値段を下げていくと売上も増えない、
ということでみんなが儲からなくなってしまう
という現象が起きているのではないか。

価格を下げる小売業者がいると、
経済全体が縮小していくのではないか
という疑惑は昔からあります。

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ウォルマートという会社は全米最大の小売業者だ。
創業者は商品を安く消費者に売ること
ばかり真剣に考えて、コストを下げる方法を
見つけるたび、全部価格に反映させて
値段を下げてしまった。

ウォルマートの商品は、他の小売業者が
対抗できないほど、とにかく安い。

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ウォルマートによって地域経済がどうなるか
ということは、「ウォルマート・エフェクト」
と呼ばれ、研究が進んでいるが、
まだ明確な回答は出ていない。

ただし、少なくともウォルマートが出店すると、
その地域全体で日用品の価格が劇的に下がる
という現象があることはわかっている。

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しかし、大手量販店が扱う日用品の
長期価格弾力性は、卵が0.1、牛肉が0.4、
台所用品が0.6と、1よりも小さいものばかりだ。

これらは、長期的に見て安くなったから
といって必要以上にたくさん買い続けることはできない。
この数字はそのことを表している。

つまり、必死に生活必需品の値段を下げても、
市場全体を長い目で見ると、
決して売上が増えるわけではないのだ。

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さて、うってかわって、セブン‐イレブンでは、
大発見がなされた。
「価格を上げると、小売市場が広がる」という発見。

「深夜にも店が開いている、近所にある、
欲しい商品がいつでもある」という、
便利さの付加価値があれば、
価格が高くても顧客は商品を買うのだ。

コンビニのおにぎりは、じつは自分で
お米を買って作るおにぎりに比べて、破格に高い。
けれど、便利なので、みんな喜んでおにぎりを買う。

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こうして、付加価値を上げると価格が上がり、
価格が上がったことがコンビニエンスストア業界
という市場を拡大していくという効果を、
鈴木さんは「セブン‐イレブン・エフェクト」と呼ぶ。

コンビニが乱立し、もう飽和状態だと
いわれるようになった現在も、
業界の売上は高い率で成長し続けている。

高付加価値、高価格にこそ小売業界は向かうべきなのだ。

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③ サービス業の生き残り方程式

映画、求人、旅行、おケイコ事や塾。
これらサービス業は長期価格弾力性が大きい業界だ。
必需品ではないものなので、
消費者は安ければ買い、高ければ買わない。

戦略としては、価格を下げて市場を広げる
方向を選ぶのが生き残るために
大切なことだといえるだろう。


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では、価格を下げるためには何が必要なのか。
まずはコストを下げることだ。
そして、サービス業においてコストを下げる
ポイントは生産性を上げることだ。

日本人が提供するサービスはとても丁寧だが、
それはつまり生産性が悪いということになる。

生産性の悪さをカバーするために
高付加価値高価格サービスに
走ってしまいがちなのだが、
巨大な企業になるとその方向は市場を
縮める死の方向と一致してしまうことになる。

生産性を上げるためには、稼働率を高めること。
すると、生産性が上がり、コストも下がる。
ある程度お金をかけても、
顧客を集めるほうが有利になってくる。

だから多くのサービス業者は、情報誌にお金を払う。

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もうひとつの顧客戦略は、呼び込んだ
新規顧客を固定客化することだ。

新規客の獲得には、既存客にもう一度
リピートしてもらうのに比べると実に
5倍のコストがかかるというデータがあります。

「一度獲得した顧客は資産である」と考えて、
大切にする必要がある。
日本が国としてこれから成長していける
分野は第3次産業の中でも
サービス業の分野だとされている。

この分野が発展していくことが、
日本の経済成長のカギになる。

そのためには生産性の問題はぜひとも
克服しなければならない。

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ここで、生産性そのものを上げるために、
軽サービス業から重サービス業へと発想をシフトする、
ということを鈴木さんは提唱する。

重サービス業とは、鈴木さんの造語であり、
賃金が安くて労働集約的な
軽サービス業に対する言葉である。

日本で軽サービスの仕事が増えて、
そのような年収の人口が増加しても、
サービス業の提供するサービスの購買力にならない。

だからこそ、人件費以外の資本投下が必要で、
ノウハウ的な部分での参入が難しい
重サービス業を創っていくことが重要なのだ。

例えば、複雑な遠隔監視警備システムを持つ
セコムや、運行がスムーズな都市輸送などは
重サービス業にあたる。

セコムのような重サービス業は、
まだ価格は高く、多くの家庭では使われていない。
逆にいえば、そこに日本経済の伸びしろがある。

また、重サービス業が発展すれば、
海外に輸出ができるようになる。

たとえば日本が世界の先端をゆく鉄道の運行管理、
電力会社の送電の管理などの仕組みを
新興国にアウトソーシングのかたちで
提供して収益をあげる。

まだまだ、日本の産業は発展できる余地があるのだ。

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いかがでしたでしょうか?

親しみやすく、わかりやすく書かれた文章の陰に、
鈴木さんの、企業や日本経済を救いたい
という真摯な気持ちが垣間見える。

あえて、多くの人に伝えるために、
難易度を極端に落として書いたという本書は、
経済学を学んだことがなくても
十分ついていける内容となっています。

間違った戦略を書いて、
会社デスノートにしないためにも、
本書を手にとって今一度戦略を見つめ直して
みてくださいね!


それでは最後におさらいしましょう。

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① サブプライムショック後のトヨタ減収収益

自動車業界全体を襲った激震は、
経済学の理論をもとにすれば予測できたものです。

短期所得弾力性と経済成長率を
掛け合わせれば、おおよその販売予測が立ちます。

② ウォルマート・エフェクトとセブンイレブン・エフェクト

安売りで有名なウォルマートが出店すると、
その地域全体で日用品の価格が劇的に下がる
という現象をウォルマートエフェクト

付加価値を上げると価格が上がり、
価格が上がったことが市場を拡大していく
という効果をセブンイレブンエフェクトと呼びます。

③ サービス業の生き残り方程式

サービス業は長期価格弾力性が大きい業界で、
必需品ではないので、消費者は
安ければ買い、高ければ買わない。

コストを下げて、新規顧客を固定化させる
戦略が今後のカギとなってきます。


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