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2022年施行の電子帳簿保存法をもっと楽に乗り切る方法

先日下記の記事を公開しました。

Googleドライブを活用して、できるだけ手間を掛けずに電子取引の保存要件を満たす方法をご紹介しましたが、実はもっと簡単な方法があります。ただし実効性には疑問が残るため、内容を理解した上で判断してください。現時点では上記の記事に書いてある方法を採用することをおすすめします。

(12月10日追記)
2年の猶予期間が設けられるという報道がありましたが、まだ正式発表はありません。正式発表されたらまた追記する予定です。

電子取引の保存要件

具体的な手法の説明に入る前に、電子帳簿保存法についておさらいしておきましょう。

2022年1月1日から施行される電子帳簿保存法の改正で最も影響が大きい箇所がこちらです。

申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。

要するに、今まではPDFで送られてきた請求書は印刷して紙で保管しておけばよかったのに、今度からは電子ファイルのままで保存しなくてはならなくなるということです。それも単に保存するだけではだめで、電子取引の保存要件を満たす方法で保存しなくてはなりません。

では電子取引の保存要件を満たすにはどうすればよいかというと、真実性の要件可視性の要件と呼ばれるものを二つとも満たす必要があります。

まず真実性の要件はこちらです。

以下の措置のいずれかを行うこと
① タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すととともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③ 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
④ 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

次に可視性の要件はこちらです。

・ 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に生前とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
・ 電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
・ 検索機能(※)を確保すること
  ※ 帳簿の検索要件①〜③に相当する要件(ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③不要)
  保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要

この中に出てくる帳簿の検索要件①〜③というのは下記のとおりです。

① 取引年月日、勘定科目、取引金額そのたのその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること
 改正後、記録項目は取引年月日、取引金額、取引先に限定
② 日付又は金額の範囲指定により検索できること
③ 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

以上を踏まえた上で具体的な手法の説明に移ります。

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程

まず国税庁のサイトにアクセスします。

「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」のサンプルファイル(法人用と個人事業者用)があるので該当する方をダウンロードしてください。

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どちらもWordファイルで、法人用の中身はこのようになっています。

画像3

個人事業者用はこのようになっています。

画像4

法人用は3ページ、個人事業者用は1ページです。

このWordファイルは何かというと、真実性の要件を満たすための事務処理規定のテンプレートです。これに沿って運用すれば真実性の要件の条件となる4つの事項のうち、下記の事項を満たすことができます。

④ 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う

修正が必要な箇所を書き換えて保存したら、法人の場合は関係者全員に連携して運用を開始しましょう。

事務処理規定を定めると何が楽になるのか

事務処理規定は人間に対する規定です。真実性の要件の①〜③はいずれもシステムを構築する必要がありますが、④だけはシステムを構築する必要がありません。電子ファイルを保存する何らかの設備は必要なので、全く不要というわけではありませんが、既存のパソコン等で代用できる範囲です。したがって、新たなシステム構築なしで電子帳簿保存法の改正に対応できるというメリットがあります。

なお、可視性の要件を満たすのは難しくありません。電子帳簿保存法の対象となる電子ファイルを保管するパソコンやファイルサーバーの操作マニュアルを作成し、必要なときにファイルをダウンロードできるようにしておくだけです。下記の規定があるため、小規模な事業者であれば検索機能も不要です。

保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要

事務処理規定のデメリット

冒頭で述べたとおり、この方法はおすすめしません。たしかにシステム化は不要ですが、代わりに人間による運用を必要とするためです。

人間は必ずミスをします。訂正や削除を禁止する規定を定めても、うっかりファイルを消してしまうことは起こりえます。また、故意に不正を行う人間に対して事務処理規定は無力です。いったん事務処理規定で電子帳簿保存法改正に対応したとしても、最終的には何らかのシステムを構築する方が安全です。

まとめ

事務処理規定を定めて電子取引の保存要件を満たす方法をご紹介しました。恒久的にこの運用を続けることはおすすめしませんが、システム化の準備をするために一時的に利用するのはありかもしれません。

また、もうしばらくしたら電子帳簿保存法にマッチした専用のWEBサービスが登場する可能性もあります。それを待って短期間運用するのであれば問題ないでしょう。

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