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【昭和的家族】寒天とあんみつ

一時期TVの健康番組で、何か特定の食材が身体に良いという特集を良くやっていた頃、私の父もそういった番組がとても好きで、翌日には放送されていたお勧め食材を、近所のスーパーマーケットに良く買いに行っていた。

当時、父と同じように影響を受ける人は多かったらしく、放送後の翌日以降に全国のスーパーマーケットで特定の商品が売り切れるという現象が頻繁にあったらしい。但しブームは本当に一時的なものだった事が多く、父自身の流行りもいつも短い期間で終わっていた。

いくつかの食材の中で、比較的長く父に流行っていたのは、寒天だ。父曰く寒天には色々な効用があるらしく、その中でも一番はダイエットのため食前に食べるのがお勧めとの事。これを聞いてダイエットを気にしていた父は、沢山の種類の寒天を買って来て、毎日大きなプラスチックのタッパーに煮溶かした寒天液を流し込み、冷蔵庫の中に入れるようになった。

私を始めとする家族は、他の食材の時よりもこの寒天の恩恵を受けたと思う。父は業務用かと思うくらいの大きさの餡子の袋と、黒蜜もいつも合わせて購入したため、私達はいつでも好きな時に家であんみつを楽しめたからだ。

丁度この頃、私は何かの研修に参加した時の自己紹介で、
「父が家で寒天を頻繁に作るので、あんみつを毎日食べていまーす」
と言っていたらしく、私の父は当日一緒に研修に参加していた同期入社者から、”寒天パパ”とのニックネームを暫くの間付けられていた。

”この寒天ブームだけは、ずっと続いていて欲しいものだ”と私は思っていたのだけれど、残念ながら1年程で父の中の寒天ブームは廃り、それ以降父が寒天を家で煮溶かしてくれる事は無くなった。その上で、そもそも毎日あんみつを食べる事がダイエットにつながるとは当初から私には信じ難く、その割には他のものと比べて、父のこの流行は奇跡的に随分長く続いたのではないかと思った。


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