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【精霊の御前 仮面は踊る】 #逆噴射小説大賞2019  怖いの注意

どこかの民族の仮面

友人にもらったもの

何故こんな不気味なデザインの仮面をわざわざお土産にと思った

受け取りたくはなかった

でもある種の後ろめたさが私を支配した


その夜

私は夢をみた

仮面をつけた人が踊っていた

火を焼べ、宙へ焔の粉が舞う



翌日

また夢をみた

例の男は火を焼べ 踊る

時折 視線が合った気がした



夢 3日目

崇高、畏怖を併せ持つ何か

それに捧げるもの

そんな踊り

目が合った

間違いない

彼は私を認識している



4日目

少し距離を近づけてきた

明かに私に標準を合わせて

私はこの男を知っている



5日目

この夜は明かに異なった

火は闇を映し出し、静けさは恐怖の輪郭をなぞる

そこに男の姿はなかった


翌日

私は友人に連絡した

仮面を返したい

わかった3日後に取りに行くよ

それが彼の返事だった



その夜

例の男は様子が変わっていた

砥がれた石の槍を手に 威嚇するような踊りをみせた

少し笑ってる?

そう



翌朝

ポストに何かの殻が大量にはいっていた



7日目の夜

男は仮面以外を纏わぬ姿で私の3mほど先に立ち

私をずっと見つめていた

私はあなたを知っている

その体も

頭の中も

そしどこかで願ってきたであろう願いも



8日目の夜

夢を見る

大きく燃え盛る炎は空高く昇り

その男の鼓動が聞こえてくる

怖かった

心臓が鳴った

そこに男の鼓動が重なってくる

私は知っている

この感触を



9日目 夜

眠ることはない

目を閉じているだけだ

それでも浮かんできた

仮面だけだ、仮面だけが踊り、舞う

私はナイフを握りしめ、震える唇を噛みしめる

仮面が舞う

ナイフを握りしめる

仮面は炎の周りを何度か回り、私の方へ一気に飛んできた

その表情は笑ってる気がした

仮面は私をすり抜け

風が私の髪を揺らした


カチャ


静かに


眠っている娘の枕もとにプレゼントを置くかのように


ゆっくりと


鍵が開く


ドアノブを握る 体温で湿った手 おぼえてる



きぃ



扉を開ける音がした




【続く】




本日も【スナック・クリオネ】にお越しいただいき、ありがとうございます。 席料、乾き物、氷、水道水、全て有料でございます(うふふッ) またのご来店、お待ちしております。