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『君たちは今が世界』(著者:朝比奈あすか)は開成中、海城中で出題されました!中学受験国語の入試問題の内容・あらすじを紹介します!

■『君たちは今が世界』(著者:朝比奈あすか)について

この本は、小学校6年生の子どもたちが主人公です。
よくあるイジメの物語よりはソフトですが、小学校でありがちな意地悪な行動や見栄や欺瞞に満ちた世界を表しています。
こんなにひどくない、と思うかもしれませんし、こういうことあるよな、と思うかもしれません。
子どもたちも、大人たちや様々な環境からストレスを抱えていて、みんなそれぞれ辛い思いがあり、素直な友人関係を築けない、それぞれの微妙な心情が表現されていて、まさに難しい入試問題に出題されてしまうのも納得です。

しかも、開成中も海城中も男子校でありながら、出題された箇所は女子が主人公の場面です。

目線は小学校6年生ですので、シーンによって共感できることもあり、興味深く読める生徒さんもいるでしょう。
大人的には、エピローグがあることで救われた気がします。

単行本で320ページ、文庫本で416ページとかなりボリュームがあります。
しかも、決して明るく楽しい話ではないので、かなり読書力のある生徒さんでないと全部読むのは厳しいかもしれません。
1つ1つの章は独立した話になっていますので、気になる章だけ読んでみてもいいでしょう。

最後のあらすじは、読書感想文を書く際などに参考にしてみてください。(ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)

中学受験では、2020年度開成中2020年度第1回海城中の国語の入試問題で出題されました。

◆2020年度開成中学校の国語の入試問題

大問1番で「第4章 泣かない子ども」から「合奏会の担当楽器を決めることになり、めぐ美は打楽器がやりたかったが、香奈枝の誘いでアコーディオンに決まる」場面が出題されました。

大問2番は短めの説明的文章が出題され、大問2番まででした。

設問形式は、大問1番は5問の自由記述問題、大問2番は、7つの漢字書き取り問題と、2問の自由記述問題でした。

◆2020年度第1回海城中学校の国語の入試問題

大問1番で、「第2章 こんなものは、全部通り過ぎる」から「小学校入学した年の学芸会で白雪姫をやることになり、杏美はナレーターをやりたいと言ったが、香奈枝は白雪姫を一緒にやろうと言った。白雪姫役は5人で、最初は一緒にやることになったが、途中で1人増えてじゃんけんで香奈枝が負けた。しかし、香奈枝は杏美がナレーターをやりたいと言っていたことを覚えていて、杏美に交代してもらおうと考え、杏美はナレーターに代わることにする」という場面が出題されました。

大問2番は論説文で、大問2番までですが、若干大問1番の方がボリュームがあります。

この大問1番の設問形式は、4択の記号選択問題が10問、60字〜80字の記述問題が1問、5択から2つ選択する記号選択問題が1問で、全部で12問でした。

■『君たちは今が世界』のあらすじ(ネタバレ)

●第1章 みんなといたいみんな

6年3組の尾辻文也小磯利久雄瀬野敏とつるむようになったのでクラスの中心にいる気分を味わえている。しかし、実際は、利久雄と敏にいいように操られているのだ。
ある日5、6時間目の家庭科で、パンケーキを作ることを楽しみにしていた文也は、その日の休み時間終わりに、利久雄が女子たちと立てていたある計画を言い渡される。家庭科の授業で、先生がパンケーキをお手本として作るとき、誰かが中断させ、その間に生地に洗剤を入れるというのだ。文也が洗剤を入れる役目だったのだ。家庭科の時間に計画は実行され、家庭科の浜田先生は、生地が泡だらけになるのを見て驚いて人差し指でなめ、涙を流し教室を出て行く。後から担任の幾田先生山形先生が来て警察に被害届を出すと言う。幾田先生は、「みなさんはどうせたいした大人になれない」という発言をし、生徒たちを追いつめる。
利久雄は慌てて文也がやったと言うが、宝田ほのか、ほか皆でやりましたと泣きながら謝る。文也は幾田先生に呼び出されるが、利久雄たちのことを話すことはできず、一人でやったと話す。その後、幾田先生は匿名アンケートを行う。しかし、それで反省する利久雄ではなく、幾田先生に復讐しようと言い出し、またしても、文也にやるように勧める。

●第2章 こんなものは、全部通り過ぎる

川島杏美は、「こんなものは、全部通り過ぎる」といつも考えるようになっている。幾田先生は、休職となり代わりに藤岡先生が6年3組の担任になった。杏美は、幾田先生の「みなさんはどうせたいした大人になれない」という言葉通り、自分以外のみんなは大した大人にならないと思っている。保育園の頃からの幼馴染の香奈枝と小学校で同じクラスになったが、香奈枝のわがままに振り回され、3年になって別れてほっとしていたのに、また5年から同じクラスになっていた。香奈枝は、見村めぐ美飯田麻椰とグループを作り、上位ポジションをおさめ、藤岡先生をなめきっていた。杏美は、人の悪口を言わないおとなしい鈴木結増井智帆横河芽衣と4人で過ごしている。杏美は、学校ではおとなしくしているが、塾では正々堂々と競走できるので、張り切っている。それなのに、塾の同じクラスに飯田麻椰が入ってきたのだ。麻椰は杏美ほどではないが、それなりの点数を取っていて、杏美は驚いた。実は麻椰も香奈枝のことをあまり好きでなく、中学受験することも内緒にしているという。学校で、杏美は香奈枝とめぐ美に毛深いと言われ傷ついていたが、香奈枝たちは気にもせずに、計算ドリルの宿題を見せてほしいと頼んでくる。杏美は間違った答えを書いたドリルを渡す。

●第3章 いつか、ドラゴン

武市陽太は、両親が離婚していて母親と2人で暮らしている。6年になると児童館にも誰もいなく、どうしようか考えていると、巨大な紙の造形物、ドラゴンのポスターを見つける。「折り紙の世界へようこそ」と書いてある。しかし、それは大学の折り紙サークルのポスターで小学生は入れないと断られる。
担任の藤岡先生が席替えをするのに、NGポイントをアンケート調査すると言って、紙を配った。陽太は「背が高いため、後ろの席を希望する」という内容を書いたが、その紙を瀬野敏小磯利久雄尾辻文也に取るように指示し、陽太は驚いてその手を払いのけると文也は倒れてしまった。利久雄と敏は倒れた文也を気にすることもなく、陽太の紙を奪い取り、見るとすぐに返した。その夜、文也の母親から陽太の家に電話があり、頭を打って病院に行ったという。慌てて謝りに文也の家に母と2人で行くが、どうしてそのようになってしまったのか、文也も何も言わず、陽太も言葉が出なくなってしまう。
大学の折り紙サークルの人から、地域の人向けに折り紙を教えるイベントがあることを教わり、陽太は居合わせた宝田ほのかと一緒に参加する。すっかり折り紙制作に心を奪われた陽太は、夏休みの自由工作にくす玉を作って持っていく。ところが、前田香奈枝に取られて飯田麻耶にボールのように投げられために、陽太が「だめだ」と叫んで飯田に突進し、飯田が倒れる。見ていた見張りの保護者の麦わらさんが陽太の言い分を聞こうとすると、投げるように指示したのは香奈枝だとわかる。

●第4章 泣かない子ども

見村めぐ美の家は、父親が中国に単身赴任していて、姉と兄と母と4人で暮らしているが、誰も片付けない家はいつもゴミや物で乱雑になっている。同じマンションのまっすぅ増井智帆)と一緒に学校に行くが、学校では女王ポジションの前田香奈枝と一緒にいて、香奈枝のほめてほしいようにほめ、香奈枝のしたいことに付き合う。合奏会での担当楽器を決めるときも、めぐ美は演奏が簡単な打楽器がやりたかったが、香奈枝にアコーディオンをやろうと言われ、アコーディオンに決まってしまう。その反面、香奈枝抜きのトークルームで香奈枝の悪口を言ったりしている。香奈枝がダンススクールでダンスショーのオーディションに合格し、センターを取ったために1月のショーを見に行かなくてはならなくなる。他の友達がみんな都合が悪かったために、めぐ美1人で行かなくてはならず、しかもチケット代が2000円かかるというのだ。めぐ美は母親に話をすると、お金はすぐに出してくれたが、知らない街まで1人で行けないので一緒に行ってほしいと頼むと、あっけなく断られ、交通費だけ出すと。アコーディオンの楽譜が読めないめぐ美は、小磯利久雄から指使いの書いてある楽譜をもらい、家で練習するように言われる。

●エピローグ

増井智帆が大人になって小学校の先生になる。その後の小磯利久雄前田香奈枝が中学で武市陽太をかばったことも語られる。そして、増井智帆は「絶対に、幾多先生のようにはなるまい」と誓い、一方で、「みなさんはどうせたいした大人になれない」という発言も幾多先生なりの真摯な言葉ではなかったかと思う。自分は、生徒たちに、みんなを知りたいと思い続けると話し、ここ以外の場所のほうが広いということを忘れないように生徒たちに伝える。


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