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2019年度中学入試最多出題!『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』(著者:こまつあやこ)のあらすじ、国語の入試問題の内容を紹介!

■『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』(著者:こまつあやこ)について

この本は、第58回講談社児童文学新人賞を受賞した作品です。

児童文学なので、単行本で188ページとボリュームもちょうどよく、字も大きく、主人公は中学2年生の女の子ですが、小学生にも読みやすい本です。

中学2年の9月に2年半いたマレーシアから帰国した花岡沙弥は公立中学校に転入し、短歌を詠むのが好きな中3の佐藤先輩と出会い、マレーシア語を混ぜた短歌を詠むようになります。「リマ」はマレーシア語で「5」、「トゥジュ」はマレーシア語で「7」の意味で、表題は「5・7・5・7・7」の意味となっています。佐藤先輩が詠む歌は日本語のみ、沙弥が詠む歌はマレーシア語混じりですが、作品中にいくつもの短歌が出てきます。

沙弥は、マレーシアと日本の学校の違いを感じ、自分は日本の学校でどのように振る舞えばいいのか悩みます。日本は、マレーシアのような多民族国家ではなく、単一民族の国ですが、現在では、外国から来た人々も増えています。恋愛や友だち関係の話の中に、そういった人々をどう受け止めていけばいいかというテーマも含まれています。

短歌という日本文化を楽しく詠みながら、他人に合わせるのではなく自分らしくいることの大切さや、日本社会はどう他の文化を受け入れていくかというテーマは、中学受験の問題として好まれたため、2019年度最多出題作となったのでしょう。

詳しいあらすじを最後に書いています。読書感想文などを書く際に参考にしてみてください。(ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)

2019年度早稲田実業学校中等部2019年度第1回海城中学校2019年度栄光学園中学校、2019年度成城中学校の国語の入試問題で出題されました。(他、鎌倉女学院、淑徳与野、桐朋、白陵、緑ヶ丘女子、山脇学園でも出題されていると本の帯に書いてありました。)

◆2019年度早稲田実業学校中等部の国語の入試問題

大問1番で、「第3章 わたしは変わってしまったの?」からリード文あり、単行本で約12ページと少し出題されました。花岡沙弥が、中3の督促女王と呼ばれよく思われていない佐藤先輩と約束があることを友達の前で言われ、つい無理やり連れて行かれると言ってしまう場面です。

大問2番は論説文、大問3番は漢字の読み書き、語句の意味を表す言葉で、大問3番まででした。

この大問1番の設問形式は、修飾被修飾の関係が1問、慣用句が1問、5択の記号選択が4問、8択から4問選択が1問、適語補充が1問、抜き出しが1問、自由記述が1問で全部で10問の出題でした。

◆2019年度第1回海城中学校の国語の入試問題

大問1番で、「第3章 わたしは変わってしまったの?」からリード文あり、単行本で約14ページと少し出題されました。驚くことに、上記の早稲田実業学校中等部の問題と全く同じ始まりでした。終わりが海城中の方が2ページ分ほど長いです。

大問2番は論説文で、大問2番まででした。大問1番の方が設問数が4問多いです。

この大問1番の設問形式は、4択の記号選択が10問、25字の記述が1問、80字の記述問題が2問とボリュームある問題となりました。

◆2019年度栄光学園中学校の国語の入試問題

大問2番で、「第4章 赤い下着」からリード文あり、単行本で約6ページ分出題されました。花岡沙弥といっしょに短歌を詠んでいる佐藤先輩が音大付属の学校から転校してきた理由がわかる場面です。

大問1番は説明文で大問2番より3問設問数が多く、大問3番は漢字で、大問3番まででした。

この大問2番の設問形式は、40字の記述問題が1問、自由記述問題が3問で全部で4問でした。

◆2019年度成城中学校の国語の入試問題

大問3番で、「第3章 わたしは変わってしまったの?」からリード文あり、単行本で約8ページと少し出題されました。早稲田実業中、海城中で出題された場面と同じですが、出題された範囲が成城中学校の方が狭いです。

大問1番は漢字の読み書き、大問2番は説明的文章で、大問3番まででした。

この大問3番の設問形式は、漢字が1問、慣用句の挿入が1問、5〜10字の記述問題が1問、45〜50字の記述問題が1問、4択の記号選択問題が5問、抜き出しが1問、5択から2つ選ぶ問題が1問で、全部で11問でした。

■『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』あらすじ(ネタバレ)

●主な登場人物

花岡沙弥(はなおかさや)
中学2年生。2年半マレーシアに住んでいて、公立中学に戻ってきた帰国子女。

佐藤先輩(佐藤莉々子)
中学3年生。図書室の延滞本を督促してまわる図書委員。督促女王と呼ばれている。音大付属の学校からピアノをあきらめてきた転校生。

藤枝港(ふじえだこう)
時計屋の息子で、マレーシアに行く前に沙弥が時計を買う。その時から沙弥は藤枝のことが気になっている。給食の時間になると、席を立っていなくなり、給食は食べないようになる。

●あらすじ

花岡沙弥が給食中に、督促女王の佐藤先輩から、3時半に図書室に来るように本の督促状をもらう。図書室へ行って、本を返すと、ギンコウに行くからついてくるようにと言われる。

ギンコウとは、銀行ではなく、吟行で、街に出て短歌を詠むというのだ。そして、いきなり短歌を詠むパートナになってほしいと頼まれる。

沙耶はマレーシア語混じりの短歌を詠んでみて、楽しく感じられたため、佐藤先輩のお誘いを受けることにする。毎週木曜日吟行に行く約束をする。

沙弥は督促女王とつきあっていると、そうでなくても帰国子女なのに、みんなから冷ややかな目で見られはしないかと気になってしまう。そんな沙弥の様子を見て、佐藤先輩も吟行は中止と言うが、沙耶が謝って再び吟行を続けることになる。

沙耶は、マレーシア語混じりの歌をタンカード(単語カードに短歌を詠むように渡され、その単語カードのことをタンカードと呼ぶ。)に詠んでいく。

佐藤先輩から以前は吟行のパートナーがいたと聞いていたが、そのパートナーが実は沙耶がひそかに思いを寄せる藤枝港だった。

藤枝港は父親がマレーシアの女性と再婚し、イスラム教徒になってしまったため、豚肉が食べることができず、給食を食べないで、別室でお弁当を食べるようにしていたのだ。

佐藤先輩は港が好きなものを我慢するなら、自分もそれにつき合うという意味の歌を詠んで港に渡したが、港は自分とはさよならなのだと誤解し、そこでお別れになっていた。

沙耶はその誤解を発見し、誤解を解くように佐藤先輩を説得する。佐藤先輩と沙耶で港の家に本の督促に行き、港との誤解が解ける。

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