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『家族シアター』(著者:辻村深月)は麻布中と洗足学園中、吉祥女子中、獨協中で出題されました!中学受験国語の入試問題の内容、あらすじを紹介!

■『家族シアター』(著者:辻村深月)について

この本は、

  • 「妹」という祝福

  • サイリウム

  • 私のディアマンテ

  • タイムカプセルの八年

  • 1992年の秋空

  • 孫と誕生会

  • タイム・マシンの永遠

7編からなる短編集です。

本の題名通り、どれも家族をテーマにした物語です。この中のどれか1つ2つは共感できる物語が誰にでもあるのではないでしょうか。

本当はこの本をおすすめしたいのは、お父さんお母さんです。親になってみて思うこと、感じることなど、私にはとても共感できました。

ですが、辻村深月さんの作品もここのところ、よく入試問題で見かけます。
人間同士のいやな部分、それも微妙に暗い部分などもしっかり描かれているので、小学生にはちょっと難しめだと思います。すでに出題されている「1992年の秋空」だけ読んでみてもいいのではないでしょうか。

この「1992年の秋空」だけが小学校6年生の女の子が語り手となっています。他の作品はどれも語り手が大人です。(『「妹」という祝福』は、懐古形式で中学時代を語っていますし、『サイリウム』は大学生ですが)

あらすじを最後に書いています。読書感想文などを書く際に参考にしてみてください。(ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)


中学受験では、2016年度麻布中学校2017年度第1回洗足学園中学校、2020年第2回獨協中学校、2021年第1回吉祥女子中学校の国語の入試問題で、「1992年の秋空」から出題されました。

◆2016年度麻布中学校の国語の入試問題

2016年麻布中学校の国語の入試問題では、この「1992年の秋空」からのみの問題で223行分の本文が出題されています。漢字が4問、記号選択の問題が2問、それ以外は全て、「なぜですか。説明しなさい」のような自由記述の問題でした。

6年生になって生徒たちが書くことになった学級だより『銀河』が配られるシーンから、うみかが鉄棒から落ちる事件を通して、はるかに『銀河』を書く番が回ってきて、うみかから教わったエンデバーの打ち上げについて書くことにしたところまでが出題されています。

◆2017年度第1回洗足学園中学校の国語の入試問題

大問2番で、文庫で7ページ分が出題されました。大問1番は、説明文で、大問1番、2番共に問8まで50点ずつの配分です。

設問形式は、語句の問題が2問、行数指定の自由記述の問題が3問、脱文挿入が1問、空所補充が1問、4択の記号選択が1問でした。

「姉のはるかが妹のうみかの逆上がりの練習に付き合い、次の日も練習を付き合う約束をするが、次の日は友達との約束があって、付き合うことができなかった。それをうみかに言うことができないまま、友達の家に行ってしまうと、家に帰って、うみかが鉄棒から落ちたと聞かされる」という場面が出題されました。

◆2020年第2回獨協中学校の国語の入試問題

大問3番で、第2章の途中から第3章の途中まで文庫で8ページ半出題されました。はるかがピアニカを忘れてうみかに借りるが、うみかも同じ時間に使うはずだったことを知り、代わりに逆上がりの練習を手伝うことになる場面です。

この大問3番の設問形式は、50字、70字の記述問題が各1問、20字で2つ書く記述問題が1問、5択の記号選択問題が3問、語句の挿入が1問、抜き出しが1問、文学史の問題が1問で問8(問8が2問)まででした。

◆2021年第1回吉祥女子中学校の国語の入試問題

大問1番で、最初の第1章から文庫で4ページ分、中略を挟んで、第3章から始まって第4章の途中まで11ページ弱出題されました。最初の4ページがうみかについてのエピソードで、中略後は、上記の洗足学園と同じ場面とさらに病院へ行って、うみかから宇宙飛行士になりたいという夢を聞くところまでです。

大問2番は論説文、大問3番が漢字の読み書きで、大問3番までです。

この大問1番の設問形式は、語句の意味が1問、表現技法の問題が1問、4択の記号選択問題が5問、20字の記述問題が2問、50字の記述問題が2問で全部で問10まででした。(問9が2つ)

■『家族シアター』あらすじ(ネタバレ)

●「妹」という祝福

語り手は大人になった妹。姉の結婚式で、姉からの手紙を見て愕然とし、中学時代に遡る。姉は成績優秀、勉強はできるが運動は苦手で、友だちは少なく、見た目も気にしない。妹は勉強はいまいちでも運動が得意で、おしゃれに気を使って、友だちに人気もある。妹はそんなダサい姉がいやで、家でもケンカばかり。だけど…

●サイリウム

語り手は大学生の弟。ビジュアル系バンドにはまってる姉とアイドルにはまってる弟はお互いに相手の趣味が理解できない。けれど...

●私のディアマンテ

語り手は母親。高卒の母親は大学卒の夫と結婚して、高校生の娘が一人。その娘は勉強がとてもよくできる子だったが、仲の良い母娘ではなかった。母は娘が何に悩んでいるのかわからず、ただ心配するばかり。しかし…

●タイムカプセルの八年

語り手は大学教授の父親。小学6年生の息子がいて、親父の会になど入りたくないのに、入らされてしまう。息子たちも親も熱血な担任の先生と楽しい6年生生活を送るが、卒業の時にタイムカプセルを埋めることになる。そのタイムカプセルが実は..

●孫と誕生会

おじいちゃんが語り手。息子夫婦がアメリカから帰ってきて、一緒に暮らすことになる。息子夫婦には小学3年生の娘がいる。孫娘を心配するおじいちゃんと孫娘のお話。

●タイム・マシンの永遠

赤ちゃんが生まれたばかりの若夫婦の夫が語り手。赤ちゃんはタイムマシンで未来からやってきた!?

●1992年の秋空

姉のはるかは小学6年生。妹うみかは小学5年生。学研の雑誌『科学』と『学習』が学校で購入でき、はるかは恋愛ものの絵がきれいな漫画が載ってる『学習』を、うみかは『科学』を購入している。うみかは特に宇宙が好きで、あまり周りを気にしない性格。はるかはそんなうみかにイライラさせられる。

ある日、はるかは学校でうみかも使う予定だったピアニカを借りてしまった罪悪感から、うみかの逆上がりの練習をつきあうことにする。少しコツがつかめたうみかは、次の日も練習をつきあってもらう約束をした。ところが、次の日は『なかよし』と『りぼん』の発売日で、はるかには友だちと交換して読む約束があった。はるかはうみかに練習に行けないことを言えず、そのまま友達の家に行ってしまう。そして、家に戻ると、おじいちゃんとおばあちゃんがいて、うみかは右腕を骨折して病院だと言うのだ。しかも、しばらく入院すると言う。はるかは病院でうみかに謝ることができなかったけれど、うみかはこっそり宇宙飛行士になりたいことをはるかに話す。でも、うみかは手術をしなければならなくなり、もしかしたら、宇宙飛行士になれなくなってしまうかもしれないのだ。

手術後、うみかの腕は思ったより良い状態になり、退院してまた学校へ行けるようになった。ギプスもはずれ、学校の体育の時間で、5年と6年が組んでストレッチをするときに、はるかは自分からうみかとペアにしてもらう。そして、やっと逆上がりの練習につきあう約束を破ったことを謝ることができたのだ。

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