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『水を縫う』(著者:寺地はるな)は海城中、東邦大学付属東邦中、吉祥女子中で出題されました!中学受験国語の入試問題の内容・あらすじを紹介します!

■『水を縫う』(著者:寺地はるな)について

この本は、「高校一年生の松岡清澄は手芸が好きで、結婚を控え、地味なウェディングドレスを望んでいるに自分が手作りすると宣言し、悩み手伝ってもらいながらドレスを仕上げていく」という物語です。

第一章 みなも[語り手・・・清澄]
第二章 傘のしたで[語り手・・・水青(清澄の姉)]
第三章 愛の泉[語り手・・・さつ子(清澄の母)]
第四章 プールサイドの犬[語り手・・・清澄の74歳の祖母]
第五章 しずかな湖畔の[語り手・・・黒田さん(清澄の父の会社の社長)]
第六章 流れる水は淀まない[語り手・・・清澄]

の6章からなる構成で、それぞれ語り手が違います。

受験で2校で出題されたのは、第一章の高校一年生の清澄の学校生活の場面です。
第二章の姉水青(みお)の語の部分でも、水青が小学生の頃にスカートを切られるという怖い思いをしたことや痴漢にあったことがきっかけで、フリルやリボンなどの可愛いものが着れなくなってしまうことが描かれていて、あまり小学生に読んでもらいたい場面ではないでしょう。
第三章の母の語りは、お母様にはとても共感できる部分もあると思いますが、こちらも小学生向きではないでしょう。
ですので、小学生は第一章だけ読んでみるような感じでいいのかなと思います。

東邦大学付属東邦中学校で出題された第五章(下記参照)では、離婚して別れてからしばらく会ってない娘水青に対する父全(ぜん)の遠慮などが記号選択問題で問われていて、小学生には共感しにくい部分も多い場面でした。

大人が読むと、どの章も味わい深く、特に最後は圧巻で、素敵な小説です。

寺地はるなさんの作品は『タイムマシンに乗れないぼくたち』も中学受験で出題されています。下記の記事を参考になさってみてください。

最後のあらすじは、読書感想文を書く際などに参考にしてみてください。(ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)


中学受験では、2021年度第1回海城中2021年度前期東邦大学付属東邦中2022年度第2回吉祥女子中の国語の入試問題で出題されました。

◆2021年度第1回海城中学校の国語の入試問題

大問1番で第一章から、最初に「清澄が手芸が好きで中学の頃はからかわれて浮いていたが、高校では宮多に話しかけられ友達がいることを祖母は喜んでいた」という説明があり、第一章34ページ中最後の7ページ分が出題されました。
「清澄は学校の帰り道で、小学校からの友達の高杉くるみに声をかけられ、石が好きな話を聞く。その後、宮多からLINEメッセージが届き、自分が手芸が好きなことを周りがわかってくれるわけがないと思っていたが、宮多に自分がした刺繍の写真を送るとうまいすごいと褒められ、自分も宮多君のことをもっと知ろうと思う」というシーンでした。

大問2番は論説文で、大問2番まででした。

この大問1番の設問形式は、4択の記号選択問題が9問と、50〜70字の記述問題が1問でした。

◆2021年度前期東邦大学付属東邦中学校の国語の入試問題

大問2番で、第五章から、水青のウェディングドレスがなかなかうまく作れないため、清澄と水青で(離婚しているが本当の父)のもとへ相談に行き、全が水青のドレスをガーゼ生地で仮縫いを仕上げるシーンが出題されました。第五章34ページ中約5ページ分でした。

大問1番は説明的文章で、大問2番まででした。

この大問2番の設問形式は、語句の意味が1問、4択の記号選択問題が9問、抜き出しが1問で全部で11問でした。

◆2022年度第2回吉祥女子中学校の国語の入試問題

大問1番で、上記の海城中と全く同じ箇所が出題され、大問2番は説明的文章、大問3番は漢字の書き取りで、大問3番まででした。

この大問1番の設問形式は、語句の挿入が1問、語句の意味が1問、4択の記号選択問題が6問、6択から2つ選ぶ問題が1問、50〜60字の記述問題が1問、40〜50字の記述問題が1問で全部で11問でした。

■『水を縫う』のあらすじ(ネタバレ)

高校1年生の松岡清澄(きよすみ)は、小さい頃から祖母に教わり手芸が好きだった。清澄の父と母は、清澄が1歳の時に離婚していて、父のはデザイナーに憧れていたが夢は叶わず、服飾専門学校で知り合った黒田さんの経営する黒田縫製に勤めている。清澄は、祖母と市役所勤務の母のさつ子と姉の水青(みお)と4人で暮らしている。水青は学習塾の事務で働いていて、そこで知り合った紺野さんとまもなく結婚することになっている。水青は結婚式もやりたくなかったところ、紺野さんの母の懇願で挙げることにしたが、フリフリでお姫様みたいなドレスは着たくなく、地味な感じのドレスがないかと言う。それを聞いた清澄が、自分が作ってあげると言う。清澄は、ドレスを作ったことがあるわけではないが、やってみたい気持ちでいっぱいだった。祖母にも手伝ってもらいながら、水青の希望を汲みながら、作ってみるのだったが、水青は気に入らないと言う。悩んだ清澄は、父を頼ろうと思うが、父から今さら父親づらできないと断られてしまう。そこで、養育費を持ってきてくれる黒田さんに相談し、父に協力してもらえるよう頼んでもらう。父は水青がなじめそうな生地を探し、ガーゼ生地を選ぶ。そして、あっという間に仕上げてしまうのだった。清澄は、その様子を興奮して見ているが、できあがってしまうと、結局自分にはできなかったという思いで暗くなる。その時、黒田さんにこのドレスに刺繍を入れてみたらどうかと言われ、再び高揚する。水青と自分の名前の由来である「流れる水」をイメージしてドレスに針を入れていく。水青も感激してくれて納得のいく仕上がりとなる。

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