バーンランド

つらりつらりと文章を書いてます。 朗読台本としても使用可です。

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最近の記事

コトドリの動物園

ライオンちゃんと、ウサギくんは 今日も仲良く遊んでいました。 いつもの広場に向かうと そこには、知らないテント。 ライオンちゃんは うーん、これはなんだろう?と ウサギくんに聞きます。 ウサギくんも頭を捻るばっかり。 でも、なんだか楽しそうな気がして 入ってみようと言いました。 ライオンちゃんも、うんと頷いて ウサギくんの後に続きます。 「やぁ、やぁ!いらっしゃい!」 テントの前まで来ると 大きな声でそう聞こえてきます。 2匹はびっくり。 キョ

    • こりすくんのおかいもの

      さて、おつかいをたのまれました。 リスくんはきょうはじめてひとりで まちまでいくのです。 おっかなびっくり まちまでのみちをあるきます。 いつもは、おかあさんがとなりにいるのに。 こころぼそくなりました。 でも、でも。 ぼくだって、おにいちゃん。 だから、こんなのへっちゃらだよ。 でも、あれあれ? かうものはおぼえてる? まちまできて、おにくやさん、やおやさん。 いろいろとおみせをまわります。 うんうん、おにくもあるし たまねぎ、にんじん、じゃが

      • おばけからのてがみ

        さて、よるがきました。 おかあさんも、おとうさんもねむります。 でも、あれあれ? どうしたのかな。 ねむらなくてもだいじょうぶ? リビングにぺたんとすわる。 ぼおっとまどをながめてる。 そうすると… あれあれ、なにかがやってくる。 まどをすりぬけ、やってくる。 ぽわん、ぽわん。 ふんわり、くもみたいにういている。 それが、にっこりおおきなくちでわらうんだ。 みかづきみたいな、めをしてる。 やあやあ、こんばんは。 まっててくれてありがとう。 そん

        • 君への手紙

          文章を綴る。 遺す人たちへ、感謝を、思い出を。 弱くなった筆圧。 短い文を遺すことだけでも、一苦労だった。 本当なら、もっともっと一緒にいたかった。 書いてるときも涙は溢れたけれど また、じわりと視界が滲む。 もう、永くない。 自身の灯火は、もうすぐ燃え尽きる。 花火みたいに綺麗に散ればいいのに。 そんなことを考えて、彼に綴った文章を思い返す。 本当に綺麗な花火だったんだ。 一生眺めていたいくらいに。 でも、それは叶わない。 私にはもうその夢は叶わ

        コトドリの動物園

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        • 声劇
          11本
        • 一人劇
          5本
        • 死神と花
          5本

        記事

          お前からの手紙

          彼女の手紙を、抱き締めるように胸に当てた。 明るい文体だけれども 最後の方は、滲んでいた。 きっと、涙が落ちたんだ。 …なぁ、俺の彼女はお前だけだよ。 これまでも、この先も。 愛するのはお前だけだよ。 彼女と並んだ河川敷。 折角ならここで読もうと思ったんだ。 俺が教えたこの場所を お前はとても気に入っていて。 花火が上がる。 高く、高く尾を引きながら登っていく。 音が響いて、色とりどりの火花が 大輪を咲かせ、音もなく落ちた。 本当はお前と並んで見

          お前からの手紙

          花火大会の手紙

          「夏が来たね。  君は元気ですか?  夏バテとかしていませんか?    そうだ、覚えているかな?  2人で見たあの町の花火。  河川敷で並んで見たよね。  水面にも映ったりして、すごく綺麗でさ。    あーあ、今年も行きたかったなぁ。  きっと、私は行けないから君は楽しんで。    …もしかしたら、彼女と行っているかも。  そうしたら、私のことなんて忘れてるよね。  そうだとしたら  こんな手紙は捨てちゃって。  大丈夫、君ならその人を幸せにでき

          花火大会の手紙

          晩酌に付き合う

          夜も更けて、あと数時間もすれば朝が来る。 そんな時間に帰ってくるのにも、もう慣れた。 一息ついて ラフロイグのセレクトをグラスに注いだ。 アイラ特有の正露丸のような香りが好きだ。 酒を扱う仕事をしているが 仕事中に飲む酒なんかよりもうまかった。 酒に向き合うというのは 自由にあらねばならない。 つくづく今の仕事に向いてないと苦笑した。 ふと、足元に気配を感じた。 あぁ、なんだ起きてきたのか。 彼を抱き上げて隣の席に座らせる。 ゴロゴロと喉をならす彼は

          晩酌に付き合う

          ホットケーキのお話

          深夜、弟の部屋をノックする。 思春期の良くある話で、反抗期なのだろう。 ちょっと前に下で言い争う声が聞こえていたんだ。 …少し、心配になって声をかけにきたんだ。 …………… また母さんとケンカしたの? ✕…うん。 そっかぁ…。 2人とも頑固だもんね。 ✕全然、俺のことわかってくれないから。  口うるさいし、話してるだけでイライラする。 うーん…。 ねぇ、お腹すいてない? ちょっと下来てよ。 ✕え?  なんだよ、急に。  …でも、腹減ったな。

          ホットケーキのお話

          ホットケーキのおねえちゃん

          ママがびょういんにいったのは、きのうのこと。 しばらくはパパとふたりです。 ねぇ、パパ。 そう、よびかけると ホットケーキをやいていたパパがふりむきます。 どうしたのかな? わたしもね、ホットケーキやきたいの。 じゃあ、パパがてつだおうか? いーの、ひとりでやるの。 ママがかえってくるまでに うまくつくれるようになりたいの。 パパはそれをきいて、ほほえみます。 わかったよ、でも さいしょはパパといっしょにやろうか。 はーい! おおきなへんじをしま

          ホットケーキのおねえちゃん

          えだまめぼうやのおはなし

          えだまめぼうやはさんにんきょうだいです。 ぷっくりとしたのが いちばんうえのおにいちゃん。 ちょっとひらたいのが にばんめのおにいちゃん。 さんばんめのすえっこは ちいさいちいさいおまめです。 あるひ、そとのせかいがしりたくなりました。 いちばんうえのおにいちゃんはいいます。 とおくにうみってところがあるんだって。 そこは、ぼくらがしってる みずたまりとはちがって おおきくて、ひろくて、しょっぱいんだ。 にばんめのおにいちゃんが いってみたい、いっ

          えだまめぼうやのおはなし

          蓮池風花

          蓮の花が浮かぶ池に手を差し入れた。 山里からの水は清く冷たいものだ。 蜘蛛の糸という話がある。 極楽の蓮池からは地獄が見えるのだそうだ。 その下で足掻く罪人を不憫に思った釈迦は その罪人が生前に唯一救った蜘蛛の糸を垂らした。 結局、自身だけが助かりたいと願うと 蜘蛛の糸はちぎれ、罪人は最下層へと落ちていく。 そんなお話だ。 希望というものは残酷だ。 救われたい、叶えたいという想いは凶器になる。 人を蹴落とし進む道しかとれなかった人間は 果たして、罪深い

          くものくに

          ぷかりとうかぶ、かぜにまう。 ぼくらはあおいそらを、ゆうゆうと。 ひとのこは、あおいそらをよろこぶけれど ぼくらをみてるのもたのしいよ。 あのくもは、なににみえる? ほら、あのくもは? このくもは? ぼくらはなににでもなれるんだ。 だから、たまにはそらをみてみてよ。 へだてるものもなにもなく ぼくらはただ、そこにある。 きみがみえるそのすべて。 あおいそらがつづくかぎりは くものくに。 くっついて、ちぎれて ちぎれて、くっついて。 かたちをかえ

          ぬいぐるみのお話

          おじいちゃんとおばあちゃんのおうち。 おかあさんも、むかしすんでたんだって。 わたしは、きょうはじめてきたの。 おばあちゃんがむかしのだけれどって おもちゃをだしてくれた。 おかあさんはどれも、これもなつかしいって。 わたしのしらないおもちゃばっかりで たのしかった。 そのなかにあったクマのぬいぐるみ。 かわいくて、だきしめてみた。 おかあさんはそれをみると ふしぎなかおをした。 かなしそうな、うれしそうなかお。 どうしたの? そうきいたらね。

          ぬいぐるみのお話

          ヒマワリばたけのまいごくん

          おとうさんと、おかあさんにつれられて ヒマワリがたくさんはえてるところにきました。 さぁ、ついた。 おとうさんがいいます。 おかあさんが はぐれちゃダメよ。 そういいました。 ぼくはさいしょはふたりと てをつないでいたんだけど、たくさんのヒマワリを みているうちにたのしくなって…。 はしりだしちゃってたんだ。 …きづいたら、ここはどこ? たくさん、たくさんひとはいて そのどれもしらないかお。 こころぼそくて、なきそうになってると どうしたのかな?

          ヒマワリばたけのまいごくん

          向日葵畑に見下ろす

          一面の黄色。 そのなかに君の麦わら帽子。 待って、置いていかないで。 僕は声をかける。 君は振り向いて笑顔になる。 夏が似合う、爽やかな笑顔。 いたずらっ子の君のことだから 走っていってしまうんだろうね。 僕は君がいたところに走ったんだ。 掻き分けるように、進んで また君は遠くにいて。 いつの間にか向日葵畑は途切れて 高原の先、街があんなにも小さく見える。 君は街を見下ろしていた。 僕は息を切らしていたけれど君は涼しい顔。 「ねぇ、忘れないでね」

          向日葵畑に見下ろす

          変わらないもの

          チョコミントアイスを選ぶ。 お店の冷凍庫に手をいれるとひんやりして 気持ちが良い。 カップから一掬いして口に運ぶ。 清涼感と、チョコの甘さが口に広がった。 夏の空気のなか、外で食べるのがいい。 冷たさも清涼感も楽しめるんだから たぶんこれは正解だと思う。 昔から変わらない。 子供の頃からそうなんだ。 でも、変わらないというのは 悪いことではないでしょ。 好きなものを 好きでいられることは大事なことだよ。 色んなものが変わって 失くなっていくなかで

          変わらないもの