ホットケーキのお話




深夜、弟の部屋をノックする。

思春期の良くある話で、反抗期なのだろう。

ちょっと前に下で言い争う声が聞こえていたんだ。

…少し、心配になって声をかけにきたんだ。


……………


また母さんとケンカしたの?


✕…うん。


そっかぁ…。

2人とも頑固だもんね。


✕全然、俺のことわかってくれないから。

 口うるさいし、話してるだけでイライラする。


うーん…。

ねぇ、お腹すいてない?

ちょっと下来てよ。


✕え?

 なんだよ、急に。

 …でも、腹減ったな。


うん、じゃあ。

お姉ちゃんがホットケーキ焼いてあげるよ。



……………


✕キッチンからいい匂いがする。

 お腹がぐぅっと、一声鳴いた。

 姉ちゃんの作るホットケーキは昔から

 好きなんだよな。

 ふっくらしてて、妙にうまいんだ。

 それを素直に伝えると、姉ちゃんは

 笑っていた。

 特別なことはしてないよ、ってね。


…………


はい、できたよー。

お姉ちゃん特製のホットケーキ!


✕…いただきます。


召し上がれ。

…ねぇ、家族は嫌い?


✕…そんなことねぇよ。

 でも、今はわかって欲しい。


そうだね。

…お姉ちゃんさ、家族みんな大好きなんだ。

その今焼いたホットケーキも

君が生まれる時にみんなが美味しく食べれるものを

作りたくて覚えたの。


✕そう…、なんだ。


だからね、今はたくさんイライラして

ケンカすることもあるけれど

また、みんなでいっしょにホットケーキ食べて

笑いたいなって。

そう思ってるよ。


✕…うん。


……………


✕姉ちゃんは笑ってた。

 やっぱりふっくらしてて

 姉ちゃんのホットケーキは美味しくて。

 すごく優しかった。

      「ホットケーキのお話」

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