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【今日コレ受けvol.103】直す才能、騙す才能

7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」を読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。


一昨日、ビジネス書グランプリ2024に輝いた15万部のベストセラー『きみのお金は誰のため』(東洋経済新聞社)の著者である田内学さんと、編集者の佐渡島庸平さんによるトークイベントに行ってきた。

テーマは、この本はどうやって生まれたのか?
元ゴールドマン・サックスの金利トレーダーである田内さんが本を書こうと思ったきっかけや、編集段階での佐渡島さんとのやりとりが聞きたかった。

トークの内容は、想像していた以上に「ベストセラーを生み出すのが険しい道だ」と感じられるエピソードが満載だった。なかでも刺さったのが佐渡島さんの、
「ほとんどの作家の才能は『直す才能』である。つまり才能とは、どれだけ本気でやれるかだ」
という趣旨の言葉だ。


どんなに著名な作家でも、最初から100点の原稿を書ける人はいない。それをより良くするために、何度も書き直せるか。どれぐらい本気で「書き上げよう」と思っているのか。
もっと言えば、書き直すために毎日机に座れるか? その力こそが才能だという。

実際、田内さんは、何度も何度も書き直した後、再び「なかなか良くなってきた。でもこういう表現に気をつけて書き直したら、5万部じゃなく10万部売れる」というLINEを佐渡島さんから受け取って、「もちろん書き直しました」とおっしゃっていた。

続けて、「どうしてそこで書き直せたんですか?」という司会者からの問いに、
「1回書いたことを、もう一度書いたらうまくなるに決まっているじゃないですか。それに僕は書いた内容を多くの人に知ってもらいたかったんです。だから5万部売れる本を書いて、また次の本を書くんじゃなく、1冊で10万部読んでもらえる本にしたかったんです」と返答していた。


これこそが才能なのだ。
「1回書いたことを、もう一度書いたらうまくなるに決まっているじゃないですか」って、なかなか言えない言葉じゃないだろうか。


ライターだからこそ知っている。
一度書いた話をもう一度書くのは、別の話を新しく書くより腰が重いものだ。

想像してみてほしい。例えば数千字書いた文章が、なんらかの事情で保存できておらず、一から書き直さないといけなくなった状態を……。

それでもへこたれず書き直す。次はさらに良いものになる、と信じて。それを続けられる人だけが、ベストセラーを生むのだ。


日々、自分が書いた第一稿の下手さに打ちのめされているが、第一稿は下手でもいいのだ。そこは才能と関係ない。
肝心なのはその後。どれだけ推敲を重ねられるか、書き直せるか。

田内さんは何度も書き直せたモチベーションについて、過去の受験勉強の成功が支えてくれたとも話していた。「努力したら報われる」と自分を騙す、自分を乗せる方法を知っていたことが功を奏したのではないか、と。


努力したら報われる。
その言葉を人にかけるにはためらわれる時代だが、自分にならいい気がする。

騙そう。鏡をのぞいて。
「鏡よ鏡、努力したらいつか、目の覚めるような文章を書けるのは誰? それはあなたです」

そして書き直そう。何度でも。


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