DXとマーケティングその53:5Aカスタマージャーニー【後編】
中編の続きです。
行動(act):追加情報によって考えが強化され、どのブランドを購入、使用するかを決定する。
上記から顧客の動きに関わる箇所を抜き出します。
1.顧客は、行動を決意する。
2.顧客は、特定のブランドを購入する。
3.顧客は、アフターサービスを通じても、当該ブランドとさらに深く交流する。
4.顧客は、何らかの問題や不満を抱える。
では、それぞれを「行動」として表せるでしょうか。
1.顧客は、行動を決意する。
行動の決意は、「行動」としては表せないと考えました。行動の決意は、割我々のモデルでいえば「行動するかどうかの判断」の要素に対応します。
2.顧客は、特定のブランドを購入する。
購入や使用は、「行動」で表せると考えます。「行動」の要素のもともとの定義がそうだからです。以下に再掲します。
・行動:何らかの行動。たとえば製品を使用する、カスタマーサポートに電話をかけるなど。どのような行動をとるのかは、「動機」や「評価結果」の影響を受ける。
3.顧客は、アフターサービスを通じても、当該ブランドとさらに深く交流する。
アフターサービスは、「行動」で表せると考えます。「行動」の要素のもともとの定義がそうだからです。
4.顧客は、何らかの問題や不満を抱える。
これは「行動」として表せないと考えました。最も対応する要素は、評価に関わる要素であると考えました。以下に関係する要素の定義を示します。
・物事:ある物や行い。たとえば、物理的に触れる製品、店員とのやりとりなど。
・評価:ある「物事」をどのようにみなしているか。たとえば、ある製品の使いやすさを評価する。
・評価項目:どのような視点で「評価」を行うのか。たとえば、使いやすさ。
・評価結果:「評価」の結果。たとえば、使いにくい、面倒、価値がないなど。どのように評価する(みなす)のかは、見聞きしたことや、実際のこれまでの「体験や経験」に影響を受ける。
問題や不満は、たとえば、アフターサービスの対応が悪い、といったものです。以下のように対応すると考えました。
・体験:アフターサービスを受けた。
・物事:アフターサービス。体験があるため、不要かもしれません。
・評価項目:アフターサービスの対応の良さ
・評価結果:対応が悪い
対応が悪くとも問題や不満にならないこともあると思いますが、ここでは、これらの要素で表現できるといったん考えます。
推奨(advocate):時間とともにロイヤルティの感覚を育み、その感覚は推奨によって示される。
上記から顧客の動きに関わる箇所を抜き出します。
1.顧客は、時とともに、ブランドに対して強いロイヤルティを持つ。
2.顧客は、自分の大好きなブランドを、頼まれなくても自発的に推奨する。
1つ目は、ロイヤルティという言葉が曖昧かもしれません。上記は、次のようにも表現されています。
1.そのブランドを使い続ける。
2.そのブランドを再購入する
3.そのブランドを他者に推奨する。
書き直すと次のようになります。
1.顧客は、そのブランドを使い続ける。
2.顧客は、そのブランドを再購入する。
3.顧客は、そのブランドを他者に推奨する。
では、それぞれを「行動」として表せるでしょうか。
1.顧客は、そのブランドを使い続ける。
これは、使用と同じですので、「行動」で表せると考えます。
2.顧客は、そのブランドを再購入する。
これは、購入と同じですので、「行動」で表せると考えます。
3.顧客は、そのブランドを他者に推奨する。
推奨は、「行動」で表せると考えられます。たとえば、「クチコミとして、あるブランドの使用体験をもとに、他人にオススメ、として推奨する」という行動です。この推奨という行為自体にも、その推奨結果として「体験」を伴うと考えられますので、「行動」で表せると考えられます。
表現力の評価
もともとの目的を確認しておきます。
やりたいことは「顧客が行うカスタマー・ジャーニーが、全部または一部がオンラインで行われているかどうか」というデジタル顧客かどうかを判別するための基準を、行動体験モデルで表現できるかどうかでした。
そのためには、まず、カスタマージャーニーの構造的な特徴を特定する必要があると考えました。そこで、5Aの説明をもとにして、カスタマージャーニーの構造的な特徴として、以下を特定しました。
1.カスタマージャーニーは、顧客が製品・サービスを購入、消費するときにたどる道筋を表す。
2.カスタマージャーニーは、段階の要素に分解できる。
3.カスタマージャーニーは、顧客の行動の説明に使われる。
そして、行動体験モデルとの関係は次のようになると考えました。
ここでは、「行動」の要素が、「顧客の行動」を表すと考えました。そして、「行動」の要素がカスタマージャーニーを構成する段階も表せるのかを見ることにしました。
カスタマージャーニーの枠組みの例として、5Aに当てはめると次のようになります。
前編から今回の後編までの記事では、この「認知段階」から「推奨段階」における顧客に係る要素を特定し、「行動」の要素で表せるかどうかを確認するものでした。
結果としては、全てを「行動」の要素では表現できず、いくつかの新しい要素の追加が必要になりました。
具体的には、以下に示すように、認知段階、訴求段階、調査段階において、新たな要素の追加が必要になりました。
・認知段階:知らされる、思い出す
・訴求段階:記憶、引き付けられる、ランク付け、検討対象の選択(意思決定の一種)、意思決定
・調査段階:行動
・行動段階:行動
・推奨段階:行動
追加した要素により拡張した、最終的なモデルを以下に示します。主に右側の要素と、上部の意思決定の要素を追加したことになります。
モデルとしては要素が多くなってしまいました。どのような抽象度で表現するのかは難しいところですが、右側の要素は、「メンタル活動」や「認知活動」というようなより抽象度の高い要素としての表現が可能かもしれません。
今回は、カスタマージャーニーの枠組みの一つとして5Aを取り上げました。既存の他の枠組み、将来の新たに出現する枠組み、すべてを行動体験モデルで表現できる汎用性があるのかは分かりません。ただし、モデルの拡張のプロセスを行えば、より多くの枠組みを表現できるようになると思われます。
次のステップは、今回対象としたそれぞれの要素に対して、オンライン・オフラインの分類が可能かを見ていくことです。たとえば「オンラインで知らされる」「オフラインで知らされる」といった分類です。
このような分類により、カスタマージャーニーにおけるオンライン・オフラインの分類可能対象となる要素の範囲を明確化できます。この明確化により、デジタル化した顧客のカスタマージャーニーかどうかの判別基準の定義が可能となります。たとえば、カスタマージャーニーにおいてオンライン可能な要素をすべてオンラインで行っているならば、デジタル化している、として判別するなどです。
まとめ
顧客がどのようなカスタマージャーニーを行うかどうかは、その顧客がデジタル化された顧客なのかどうかの判断するための基準の一つとなります。オンラインの行動が多ければ、デジタル化された顧客と判断できそうです。
今回の記事では、カスタマージャーニーの枠組みの一つである5Aをとりあげ、その構成要素である各段階において、顧客がどのような行為・行動を行うのかを詳細に確認しました。
そして、顧客の行為・行動を、行動体験モデルにおける「行動」要素として表現できるかどうかを確認しました。結果として、表現しきれない要素があり、新たな要素を追加することで、モデルの拡張を行いました。
次回は、今回新たに追加したそれぞれの要素に関して、オンライン・オフラインの分類が可能かどうかを見ていきます。続きはこちら。
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