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これは、現代版『翼よ! あれが巴里の灯だ』である。傑作『シャドウ・イン・クラウド』【映画レビュー】

★★★★★
鑑賞日:2022年4月10日
劇場:ミッドランド名古屋空港


『翼よ! あれが巴里の灯だ』をご存知ですか?

ビリー・ワイルダー監督、ジェームズ・ステュアート主演の1957年のアメリカの伝記映画です。リンドバーグのニューヨークからパリまでの歴史的大西洋横断飛行を描いています。
 
私は、昔(40年前?)にビデオで鑑賞しました。細かな所までは覚えてせんが、映画後半の狭い操縦席でのステュアートの一人芝居。

自分の肉眼で地形を見て現在地を確認し、太陽を見て方向を立て直す。操縦中に何度も眠気に襲われ、あわや墜落しそうになるシーン。操縦席にまぎれこんだ一匹の蠅とのやりとり。リンドバーグの主観のみで映画が進んで行きます。
あたかも自分が、リンドバーグになったように映画の世界にのめり込んで行きます。
 
『シャドウ・イン・クラウド』を見て、この映画のことを思い出しました。

『翼よ! あれが巴里の灯だ』当時のポスター


前半40分くらい銃座の中でのクロエ・グレース・モレッツの一人芝居。ワンシチュエーションで撮影されています。

銃座の中に閉じ込められ、狭い空間の中で通信機越しに男たちの品のない会話からストーリーが流れてゆき、グレムリン(怪物)があらわれます。しかし、銃座の上にいる男たちには、そのことに気づきません。頭がおかしいのではないか。スパイではないのかと会話が続きます。そうしているうちにゼロ戦が攻撃を仕掛けてきます。

観客は、主人公が見ている風景しか見ることが出来ません。主人公が知っている情報しか知ること出来ません。観客は、主人公と同じ状況を体験することになります。

また、クロエ・グレース・モレッツの演技力が素晴らしいです。表情が豊かで、目力があります。目の表情や視線が心に刺さります。大ファンになりました。
 
映画秘宝(残念、今月号で廃刊)の影響でB級映画ファンでもある私は、おバカなB級映画だと思い見に行ったのですが、映画作りの原点に立ち返った力強い構成と主演者の魅力を最大限に生かす演出に感激しました。

これは、現代版『翼よ! あれが巴里の灯だ』と思います。
 
でも、これは前半部分のみで、後半部分は、がらりと変わります。前半部分が、静なら、後半部分は動。後半は、おバカなB級映画になります。思わず「ありえん」と言うシーンの連続です。

前半と後半のメリハリが面白いです。不自然さはありません、なぜなら前半部分で、後半部分に続く話の伏線があるからです。
 
強いのだけど、弱さも持ちあわせている。詐欺師的な面もあり、完璧ではない魅力的なアクションヒーローをクロエは演じてくれています。

(text by NARDAM)



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