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そう遠くない未来『クリエイター 創造者』【映画レビュー】

★★★★☆
鑑賞日:11月4日
劇場: MOVIX三好
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン
   ジェンマ・チャン
   渡辺謙

遠くない近未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた・・・・・

『ブレードランナー(1982)』よろしく雑多でサイバーパンクな繁華街(インチキ日本語看板も)、カエルの鳴き声のするのどかな農村地帯、ベトナムやタイ、カンボジア、ネパール、日本その他諸々綯い交ぜにしたような“ニューアジア”の描写が秀逸。

ニューアジア 田舎いいなー

これまでのSF名作をリスペクトしつつオリジナリティに溢れていたのはエドワーズ監督の手腕。しかも低予算を感じさせないクオリティの高さ。『第9地区(2009)』などもそうだが、お金を掛けずとも良質なものは作れると証明してみせた。
ギャレス・エドワーズ監督の『ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー(2016)』は、新SW三部作よりもずっと面白かった。今回も監督のアジア愛(特に日本)を随所に感じ取れた。

造形の美しさが目を引く。
空中移動型攻撃基地“ノマド”、ドラム缶形の自爆ロボットの愛嬌と哀愁、死者の記憶を抜き取りAIで再生できるというアイデア等々見所が多い。

空中移動型攻撃基地“ノマド”

渡辺謙が話す言葉に時折日本語が混じるのはAIの世界での訛りのようなものか?(AI世界に言葉の壁は存在しないはず)面白い。

AI KenWatanabe

主人公ジョシュアを演じるはデンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントン、初見の『TENETテネット(2020)』も好演だったが今回も良かった。
そしてそれにも増してアルフィー役のマデリン・ユナ・ヴォイルズが素晴らしかった。無表情な登場からクライマックスに向けての感情の動きを見事に演じていた。

このシーン撮りたかったんだろうなW

物語は少し予想外で、人間とAIの戦争アクション物かと思っていたが、
今作なかなかに人間味溢れるストーリーで、
図らずも涙腺が緩んでしまった。ファーストルック時のタイトルが「True Love」だったらしく納得。
でもタイトルは変更して正解だと思う。「True Love」は無いなーW
ご都合主義な場面はいくつもあったりはしたが、許容できた。

あとSF映画の体をとっているが、現在世界で起こっている分断社会へのメタファーを感じた。
ギャレス・エドワーズ監督、次作では何を魅せてくれるか、期待して待ちたい。

”大五郎” ”ちゃん”

『ターミネーター(1984)』以降様々な形で描かれてきた“審判の日”
人類とAIとの戦争。
地球を人類が牛耳って以来、この種は争いを好み同じ種同士で殺し合っている。
以下、妄想。
AIを作り出したのは人類だが、そう遠くない未来AIがAIを作り出す日がやってきてもおかしくない。学習能力に長けたAIはすぐに人類を凌駕するだろう。
「人類に危害を加えないようプログラミングする」 本当だろうか。
争い好きの種が生み出したAIに継承されないのだろうか。当然人類種には、善人も悪人もいる。AIにも善悪が存在するようになる。
人類が絶滅危惧種として保護される頃、AI同士で争いが起こっているだろう。
「人間とAIの違いは感情の有無」 本当だろうか。
感情も学習すれば身につくはず。きっと涙も流すようになる。
過去に絶滅した種と同じように人類も頂点捕食者の座を明け渡す日が近づいているのかもしれない。
人類は驕ることなくAIと共存していかなくては。 

アルフィーが子供の姿をしていなかったら物語は別のものになったのか。ジョシュアはすぐにためらいもなく“オフ”したことだろう。

人類のアイデンティティとは何か。身体は魂の入れ物とすると、肉体(容姿)か、精神(感情)か、はたまた記憶(魂?)なのか、
AIによって魂の継承は可能になるのだろうか、
そんなことに想いを馳せた。 


                     (text by 電気羊は夢を見た)

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