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納期? なにそれ?

納期を守らない取引先に悩んでいた。

何度も注意し、改善の機会を与えたが、その努力は空しく、彼らが納期を守ることはなかった。

それどころか納品の遅延がさらにひどくなった。

流石に腹がたった私は、取引先の担当者を呼び出した。

私は熱く語った。

納品日を守らないと段取りが崩れること。
無駄な人件費が発生すること。
なにより、あなたを信頼できなくなること。
最悪の場合、取引を辞めるしかなくなること。

とにかく改善してほしかった。

しかし、その担当者は言い訳を続けた。
グダグダ、グダグダと……。

この一件で、私たちの関係は急速に悪化した。
納期の遅延も改善されることはなく、それどころか以前よりも、仕事に支障をきたすようになった。

(このままでは会社の信用がなくなる)

そう考えた私は、取引量を減らすことを決断した。

他社は少し高い。
原価が上がれば利益も減る。

けど……納期を守る、という信頼性が私にとっては何よりも重要だった。

新しい取引相手との契約が進むにつれ、徐々に納期遅れがなくなっていった。
他の企業に仕事を任せることで、スムーズに仕事が進むようになったのだ。

ところが……。

かつての取引先は減少した仕事量に不信感を抱いた。
彼らは何が起こったのか理解できない様子で、私に直接尋ねてきた。

「なぜ取引を減らしたのか?」

そう彼らは訊ねた。

私は誠実に説明し、以前の問題点を指摘した。

納期を守らないこと。
改善を促しても無駄だったこと。
それどころか、悪化の一途をたどっていたこと。

あなた達の納期に対する姿勢が、この結果を招いたのだと告げた。

かつての取引先は、それでも言い訳を並べ、納得出来ない様子で帰っていった。


それから数日後。

かつての取引先から書面が届いた。
丁寧な文面で、お詫びと改善方法が書かれた書面が送られてきたのだ。

「納品日の大切さを学んだ」と彼らが伝えてきたことに、私は少し驚いた。
当時に喜びも感じた。

対応が改善されれば、以前のように取引ができる。そんな期待もあった。


私はかつての取引先と再び会うことにした。
そして改善方法と今後の対応の詳しい説明を聞いた。

これなら行ける!

そう思える内容だった。

しかし、打ち合わせの最後にその取引先はジョークのようにこう言った。

「まあ、次回の納品日が守れるかどうかはわからないけどね」

〈了〉

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タイトル未定。
ただいま誠意作成中です。

こちらはすでに出したKindle本当にです。
読んでね。


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