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チューリップラジオ

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自作小説まとめ2
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#チューリップラジオ

チューリップラジオ9

私はせい子にラジオの仕事が来ていることを話した。せい子は驚かなかった。
「ラジオね〜。楽しそうだね。」
楽観的なせい子をみて私は安心した。せい子は迷うこともなく「やってみたい」と言った。変に意識して不安になっていたのは私だけだった。
「じゃあ社長に言っておきますね。」
せい子といると不思議と何でもできそうな気がしてくる。この人についていけば幸せになれる気がする。自分にとっての幸せが何かなんてまだわ

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チューリップラジオ8

ある日、社長の吉井からいつもより早めに事務所に来るように言われた。私は合鍵でせい子の部屋に入り、机にチャーハンを置くとそっと部屋を出た。午前10時だった。秋も深まってきた頃で涼しい風が吹くたびに胸が少し苦しくなった。大阪にいても季節を感じられる。私はもうこの街に馴染み始めていたし、せい子さんもそうだろう。大阪に拒まれていると感じたのは、夏の暑さのせいだったのかもしれない。なんとなくエレベーターを使

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