「うんこドリル」を世界へ。うんこアンバサダー小國朋子の挑戦【文響者!#3】
文響社には、「うんこ事業部」という世にも珍しい部署がある。その事業部を立ち上げ初期から支えてきたのが、うんこアンバサダー・小國朋子(おぐにともこ)だ。一つの枠に留まらず、自分自身を多方面に展開させてきたキャリアは、うんこ事業さながらである。
話し手:小國朋子(うんこ事業部)
聞き手:中西亮(出版マーケティング部)
「うんこドリル」を多方面に展開
(中西)
今回のゲストは、うんこ事業部の小國朋子さんです!…って、「うんこ事業部!?」という方に向けて、ご説明をお願いします。
(小國)
はい(笑)うんこ事業部とは、子供向け学参「うんこドリル」を出版以外に展開する部門です。ドリルが持つ、難しいことや興味の持ちにくいことを楽しく伝えられる強みを活かし、書籍以外の分野にも広く事業を展開しています。例えば、遊びながら学べるWEBサイト「うんこ学園」の運営、Eラーニングサービスの開発、企業や省庁・自治体とのコラボ企画などを行なっています。
「うんこアンバサダー」の、萩野里咲さん、小國朋子さん、石川文枝さん(写真左から)
(中西)
本当に多種多様ですね。3月には、金融庁とのコラボがyahoo!ニュースにも取り上げられました。
(小國)
はい。うんこアンバサダーの石川さんを中心に作った「うんこお金ドリル」というWebコンテンツです。「金融庁×うんこドリル」という意外性により、大きな反響をいただきました。イギリスの経済誌「Financial Times」のニュースにまでなったんです。
(中西)
皆様、何を求めて「うんこドリル」とコラボされるのですか?
(小國)
大きく2つあります。一つは、子供たちとのタッチポイントです。私たちは「うんこ学園」を通じて、11万人の子どもの会員様と繋がっています。そこに向けて情報発信ができることには価値を感じていただいています。もう一つは、子ども向けコンテンツのノウハウです。伝えるのが難しい内容や、とっつきにくいことを、「うんこ」の力で楽しく分かりやすく伝えるお手伝いをしています。
全力で仕事に打ち込んだメーカー時代
(中西)
出版社の中では異色の仕事をされている小國さんですが、学生時代はどんなことを学ばれていたのですか?
(小國)
元々本が好きだったこともあり、早稲田大学で文芸ジャーナリズムを専攻していました。卒業論文に小説を書くなどユニークな学部でした。それ以外にも、大学を一度中退したり、医学部再受験を試みるなど、色々あった学生時代でした。
(中西)
そこから新卒で文響社へ?
(小國)
いえ。大学卒業後に入社したのは、キャラクター雑貨のOEMメーカーです。テーマパークやキャラクターショップで売っている、バッグ、ポーチといった雑貨を作る30人規模の会社でした。私自身は、営業から生産管理まで一気通貫で行っていました。中国の工場と連携したり、貴重な経験をさせていただきました。
(中西)
当時で印象的なエピソードを教えてください。
(小國)
某国民的アニメに登場するアイテムのポーチを作ったことを、今でもよく覚えています。元々2次元のものを3次元にするのがめちゃくちゃ難しく、「これは無理だろ……」という感じでした。しかし、最終的には何とか形になり、ショップで即日完売したんです。一生懸命仕事に取り組み、一つ一つ解決していくのが楽しかったです。
文響社への転職が、道を拓く
(中西)
素敵なお仕事ですね!それでも転職を考えられたのはなぜですか?
(小國)
受注生産でしたので、企画はお客様発案になります。モノを作るのは好きでしたが、自分も企画段階から携わりたいという気持ちが膨らんでいきました。ただ、転職エージェントの方曰く、メーカーから企画職へのキャリアチェンジはあまり例がないということでした。そこで、可能性を広げるためにも、文芸と営業経験を掛け合わせ、出版マーケティング部志望で文響社に応募しました。
(中西)
えっ!そうなんですか!(注:中西は出版マーケティング部)
(小國)
そうなんですよ(笑)だから最初の面接は、山本社長と、出版マーケティング部の遠山部長でした。私としては書店営業のつもりで面接に臨んだのですが、山本社長が唐突に「実は、別の可能性を考えています」と仰ったんです。ちょうど「うんこドリル」のライセンス事業を自社で始めるタイミングだったので、キャラクター雑貨を作っていた私の経歴が目に留まったのでしょう。そこからは質問攻めです。気付けば、キャラクタービジネスのお金の話で面接が終わっていました(笑)
(中西)
それって、すごい偶然ですね。実際、前職のご経験が活きていると感じることはありますか?
(小國)
それはあります。例えば、うんこ学園の「ブリーグッズ」にしても、メタル製品や縫製物で実現可能なライン、原価、ロットということが何となく分かるんですね。だから、メーカーともスムーズに進められ、オリジナリティあるグッズが作れたと思っています。
(中西)
まさに、点と点が繋がっていくようなキャリアですね。
(小國)
それは自分でも感じています。文響社に入社するときは、最終的に本の編集が出来たらいいなという気持ちもありました。今もって編集部にはいませんが、企業や省庁とのコラボ冊子を作りながら、「あれ?これって編集じゃない?」と思うことがあります。あるいは、メーカーにいるときは、「もっと市場を知りたい」と思っていたんですが、それも叶い、マーケティングの知識も付いてきている実感があります。
うんこドリルの本当の価値とは?
(中西)
うんこ事業は、最初から軌道に乗ったのですか?
(小國)
とんでもありません。今もまだ手探りですが、初めの2年ぐらいは、もっと手探りの期間が続いていました。
(中西)
当初は、どんなことに苦労されましたか。
(小國)
うんこドリルの価値を、先方に理解していただくのが大変でした。「うんこ」と自社ブランドを組み合わせることに難色を示されることはもちろんあります。その懸念を払拭するため、文響社が、いかに誠実に「うんこドリル」と向き合っているかをお伝えしていきました。例文一つとっても、作家の古屋先生や編集部の皆様が、いじめを助長したり、生々しくなったりしないよう細心の注意を払っています。そういった地道な説明を繰り返し、徐々に理解が得られていきました。
(中西)
うんこドリル事業がブレークスルーするきっかけは何だったのでしょうか。
(小國)
2019年に、内閣府主催の「ぼうさいこくたい」で行った「うんこ防災ショー」です。これが非常に好評でした。このイベントを通じて、うんこドリルの本質的な価値は、キャラクターそのものではなく、「子どもが楽しんで学習出来ること」にあると私たち自身が腹落ちしたんです。それにより、企画の方向性や営業の仕方が変わっていきました。
その道の“プロ”ではないから、生みだせる価値がある
(中西)
うんこ事業部の今後の展望を聞かせてください。
(小國)
文響社の売上を一桁増やすことです。文響社の本業は出版ですが、それが全てではありません。その表れとして、ホームページでも「教育エンタメ企業」を標榜しています。出版をベースに、教育エンタメ企業にスケールアップさせることは、うんこ事業部の大きな使命だと思っています。
(中西)
小國さんにとって、「文響社」とは?
(小國)
「可能性」です。例えば、学習コンテンツを作るのであれば、教育のプロに全て主導してもらうのがいいのかもしれません。しかし、そうはしません。なぜなら、既存の方法論だけに従えば、スケールしたときの限界も見えてしまうからです。元々のプロではない人達も一緒に制作するからこそ見える、最短の勝ち筋や価値の提供があると私は信じています。だからこれからも、手探りで新たな可能性を追求していきたいと思います。
(中西)
本日はありがとうございました。