【映画】「サントメール ある被告」感想・レビュー・解説

これはちょっとダメだったなぁ。全然ストーリーが理解できなかった。あまりにも意味が分からなかったので、「裁判を傍聴していたラマが実は子供を殺した犯人なのだが、法廷に立っているロランスが彼女の身代わりとなって裁判にかけられている」という話なのかと思ったぐらいだ。後で調べると、全然そんな話ではなかったようだけど。

映画は、2016年にフランスのサントメールで実際に起こった事件・裁判を基にしているそうだ。映画のセリフはすべて、裁判記録に残された言葉をそのまま使用しているとかで、だから裁判シーンはそのまま、実際に裁判を踏襲していると言っていいのだろうと思う。

法廷にかけられているのは、セネガルからフランスへとやってきた移民女性・ロランス。「とても美しいフランス語」を話す女性。それはまさに、「黒人女性とは見られたくない」という強い想いの表れなのだそうだ。
ロランスは、生後15ヶ月の娘を海辺に放置し溺死させた罪に問われている。裁判の冒頭、裁判長から「何故殺したのですか?」と問われたロランスは、「分かりません。それをこの裁判で知りたいと思っています」と、被告人とは思えない返答をする。さらにその上で、「無実を主張します。私に責任があるとは思っていません」と口にする。ロランスは、「娘を海辺に放置し溺死させた」という事実の認定については認めている。それでも、「自分は無実だ」と主張するのである。
両親からの期待がプレッシャーだった、住んでいた家からの退去を命じられたためデュモンテ氏と同居を始めたなど、殺害に至るまでの過程を裁判長が質問していく。質問は主に裁判長が行い(日本の裁判とは勝手が違う)、最後に検察官・弁護士に追加で何か聞くことがあるかと問うが、検察官は何も質問をせず、女性弁護士も2,3付け足しのような質問をするだけであっさりとやり取りが終わる。
その後、ロランスが殺したとされる娘の父親であるデュモンテ氏が証人として喚問され、証言を行う。ロランスとはまったく年齢が釣り合わない高齢男性は、「決して嘘ではないのだろうが、自己保身に満ちた答弁」を繰り返す。
そんな裁判を、小説家であり、ロレンスと同じ黒人で、白人男性と結婚しているラマが傍聴している。ラマはロレンスに自分自身を重ねる。私はこの国で、「移民の黒人女性」として真っ当に生きていくことが出来るだろうか……。

ストーリー的にはこんな感じで進んでいく。

やはり難しいのは、「フランスにおける移民や黒人の立場」をなかなか知る機会がないことだろう。また、映画鑑賞後にネットでちらほらレビューを見てみると、「母・娘の関係の歪さ」みたいなものが核にあると指摘されていた。「母あるいは娘として生きたことがある人でないとなかなか理解が難しいかもしれない」みたいなことを書いている人もいる。そうなると、男である僕にはより一層理解が遠のくことになるだろう。残念ながら、全然理解できなかった僕は、「いかに睡魔と闘うか」という鑑賞体験になってしまった。

いつも思うが、本当のところ僕は、このような作品を鑑賞して「良かった」と言える人間でありたいなぁ、と思っている。まあそのためには、教養も読解力も足りないということだと思うのでなかなか難しい。

この映画は、様々な映画賞などで激賞され、いろんな役者からも称賛されているようで、僕には理解できなかったが、このような作品がちゃんと正しく受け取られ、評価される世界というのは、まだまだ希望が持てるように思う。なかなかオススメしにくい作品ではあるが、こういうタイプの映画は「0か100か」みたいなところがあると思うので、刺さる人には刺さりすぎるほど刺さる映画なのではないかと思う。僕のレビューなど気にせず、何か気になったという人は観てみてほしい。

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