【映画】「世界が引き裂かれる時」感想・レビュー・解説

やはり、ベースの状況に馴染みがないからだろう、物語の前半、どうも設定や展開が理解できず、ウトウトしながら観てしまった。それもあって、結局、どういう話だったのかよく分からないままだった。

もちろん、「ウクライナ東部(ドネツク州など)に親ロシア派がいて、分離独立運動をしている」という事実は、ロシアによるウクライナ侵攻が起こってから理解できるようにはなった。ただだからと言って、それがどういう状況なのかを理解できるかといえば話は別だ。例えば僕は、「部落差別」的なものがおそらくまったくない地域で生まれ育ったので、日本に未だに「部落差別」が残っているという現実は知っているが、それがどういう状況なのかをリアルに想像することはなかなか難しい(本や映画などで色々見聞きして、以前よりは想像しやすくはなったが)。同じように、ウクライナの現状についても、付け焼き刃的な知識があるだけでは、その状況を想像することはなかなか難しい。

家に帰って、公式HPを見ながらこの文章を書いているのだが、それでようやく、「主人公夫妻の夫の方が、友人から『親ロシア派』に誘われている」ということを知った。なるほど、そういう話だったのか。映画では、主人公夫妻の妻の弟が、夫(つまり義理の兄)に対して、「お前は親ロシア派だ」と言って糾弾する場面が多々映し出されるのだけど、なんでそんな状況になっているのか理解できなかった。

映画は、2014年に起こった航空機撃墜事件を背景にしている。この事件のことは知っていた。リアルタイムで知っていたかは怪しいが、後に「ベリングキャット」という調査集団の存在を知り、彼らが一躍その名を知られるきっかけになったのが、この航空機撃墜事件だったはずだ。彼らの結論では確か、ロシアが撃ち落としたという結論だったと思う。

さて、公式HPを見て驚いたが、この映画は、ウクライナ侵攻の前に撮影され、ウクライナ侵攻の直前に映画祭で初めてお披露目された映画なのだそうだ。そういう作品に対して、安易に「予言」という言葉を使うのは好きではないのだが、確かにそう言いたくなってしまう凄まじさはあるだろう。特に、ラストの十数分間の映像は、なかなかのインパクトがある。「祝福」と「絶望」が、これほどまでに対比的に描かれるシーンも、なかなか無いだろうと思う。

僕の知識不足(と寝不足)もあって、なかなか良い風に捉えられなかったが、普段からとにかく、「『分かりやすいもの』だけに触れるのは良くない」と思っているので、意識的にいろんなものに手を出すようにしている。この映画が良いのか悪いのかという視点とは別に、こういう作品は残るべきだし、多くの人の目に触れるべきだとも思っている。観ようと思う方は、少し映画の内容を予習してから観に行く方がいいかもしれない。

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