脱・新自由主義宣言第三話「国家破綻論」は本当?

例えば某有名ジャーナリストが時事ネタをアイドルやお笑い芸人に教えるニュースバラエティ番組なんかで、「日本は国民一人当たり900万円の借金を抱えており、それは国債という形で孫子の代に引き継がれていく将来の借金。それを返済できなければ日本はギリシャのように国家破綻(デフォルト)します。」といったような話をされているのを、聞いたことのある方は多いかと思います。

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さて、突然ですがここで人口がたった10人の閉鎖された国を思い浮かべてみてください。この国には10人の民間人と政府、銀行が存在するとしましょう。10人それぞれ10枚のコイン、計100枚のコインから国がスタートしたとします。もちろんずっと10枚ずつの状態が保たれているわけではなく、15枚の人、2枚になっちゃった人、差がすぐに出てくるでしょう。そしてたくさんコインを持った人が、なにかを作って売るビジネスを始めようと考え、銀行に準備資金としてコイン100枚融資を受けました。(わかりやすくするため金利は考慮に入れません。)借りた人はそれでモノを作り、人を雇い、国内全体で200枚に増えたコインが循環し始めました。新たなモノが供給され、社会が潤っていきます。そして他の人もそれに続き融資を受け事業をスタートし、国内のコインは300、400と増えて行きます。成長著しい中みんなが銀行から資金提供を受け、民間のコインが600枚まで増えました。しかし、いつかは借りたコインは返済しなければいけません。更にモノを作る資源も枯渇していきました。ある程度モノも溢れ、もう誰もコインを借りなくなったため、この国のコインは600枚を上限にそれ以上増えなくなりました。それどころか返済の時期が来てみんながコインを銀行に返済すると、また100枚の世界に舞い戻ってしまいます。モノが増えお金も溢れたため、人口も倍の20人に増え、みんなの生活も豊かになった中、100枚の世界に戻ってしまっては、何も購入できず生きていけません。そこで登場するのがこの国の政府です。

この国の国民に変わって、政府が銀行にコイン発行依頼書を発行し、500枚コインを増やしました。そして政府はこの国の国民に変わって、病院や介護施設を作る事業を始めました。そのおかげでみんなの雇用も維持され、増えた500枚のコインがみんなに行き渡り、物価も維持され、また国は活気づいて行ったのでした。めでたしめでたし。
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さて、このおめでたい話の中になにかおかしい部分があると感じた方はいらっしゃるでしょうか?おそらく何も問題無く納得された方が多かったのではないでしょうか?しかしこの話の中に、表題の「日本が破綻する」と言われる原因となる部分が含まれています。それは「コイン発行依頼書」です。

この話はまさに我々が生きている資本主義社会の中でのマクロなお金の動きを端的に表しているのですが、コイン500枚を発行した政府は、当然コイン500枚分の負債を抱えていますね。しかしそれはそもそも誰に借りているのでしょうか?外国や、なにか闇の組織に借りて、返さなければならないのでしょうか?そんなことは全くありませんよね。この場合、銀行に依頼して発行しているので、貸しているのは銀行になります。そして銀行はそれを発行し、政府の事業を通して国民に信用創造する(負債を作る)形になるので、その資産を保有しているのは国民ということになります。国民が20人ですから、国民一人あたり25コインの資産を持っているということになります。もちろんそれを借りているのは政府です。

あれ?と思った方は非常に鋭い。「日本は国民一人当たり900万円の借金を抱えており~」という件、この話とどうして逆なの?この国では国民は資産を持っているのに、なぜ日本国民は借金を抱えているのか。もちろん、それは「日本国民の借金」という言葉がウソだからです。

上の話の中の「コイン発行依頼書」は、日本で言う「日本国債」と、役割は同じです。日本国債は日本政府が発行している債券で「政府の借金」です。保有しているのは約半分が日本銀行、残りはほとんどが民間銀行。上の話では物語をシンプルにするために「銀行」と単純表記しておりますが、日本国で考えた場合も大きな違いはありません。最終的にすべての国債を日本銀行が買い取れば、結果すべて日本銀行が持っていることになりますね。政府の1100兆円の借金の債権を、日本銀行を通して我々国民が持っています。そもそも「国債」という呼び方をやめ、上の話のように「日本円発行依頼書」と呼ぶようになればわかりやすいのかもしれません。日本円発行依頼書を1100兆円分日本銀行が持っていて、民間銀行を通して発行された銀行券および預金貨幣は、我々国民が資産として持っています。つまり某ジャーナリストの説明とは真逆で、我々日本国民は、日本政府に対し、国民一人当たり900万、いやコロナ禍で更に増えて今や1000万円近くの「資産」を持っているのです。このあたりは現在は緊縮の元凶となっている麻生太郎大臣が野党議員だったころ、非常にわかりやすく説明してくれています。

さらにその証拠となるのが、日本政府が日本国民に対し発行する個人向け国債。その宣伝文句として財務省は個人向け国債を「未来への贈り物」と言っています。国債を発行すると我々の借金が増えると言いながら、国債を未来への贈り物と言ってしまっている自己矛盾に財務省はおそらく気づいていないのでしょう。借金が未来への贈り物なのでしょうか?もちろん、そんなはずはありません。政府が国債を発行すれば、我々民間の資産が増えます。上の話のように、景気が後退し、融資が生まれない状態(レバレッジが消滅してる状態)の場合は、政府が財政出動をして民間の雇用を確保し、消費を刺激するべきなのです。

また、「国債を持っているのは日本国民だけじゃない、外国人の保有率も増えている!」と主張する人がいますが、日本の対外資産の保有額は世界一です。350兆近くの対外債権を持った国の国債の一部を海外が保有していることが問題でしょうか?あなたの会社がA社に1億円貸し付けていたとします。その状況でA社があなたの会社の社債を100万円持っていることが、あなたの会社にとってリスクと言えるでしょうか?

ということで今回は日本の国家財政破綻論に対して書かせていただきました。これを読まれた方は某ジャーナリストさんの意見を鵜呑みにしている周りの方に「あれは間違ってるよ!政府の借金を持っているのは私達だから!」と指摘していただけたら幸いです。

おまけ
財務省の天才的なプロパガンダ映画「ザイセー」

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