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脱・新自由主義宣言第一話「ゴールドスミスノート」

2020年、COVID-19の出現により顕となった新自由主義の欠点。自由経済とグローバリゼーションの弊害が叫ばれる中、日本におけるレーニンのお膝元ともいえるBUNKER TOKYOは、オープン当初よりポスト資本主義を研究してきました。このコロナ禍で新自由主義による格差拡大を止め、今こそ革命を起こすためには、少しでも多くの方に経済、政治等様々な真実を知って頂き、理解を深めていただく必要を感じております。現在のお金の仕組みや社会の仕組み等、シリーズとして分かりやすく解説していきますので、是非ご購読いただけましたら幸いです。

さて皆さん、お金ってなんでしょうか?いきなりそんなことを聞かれても戸惑いますよね。皆さんのお財布に入っているお金は、なぜ価値があるのでしょうか?その裏付けは?
連載初回は、資本主義の基本的な仕組みを知ってもらうため、まずはお金の発行についてお話させていただきます。

分かりやすく説明するために、ちょっとした昔話を用意いたしました。まずはこちらをお読みください。

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時は17世紀のロンドン。当時の金細工職人(ゴールドスミス)で資産家であったリュウセイは、金を加工する仕事柄、それを保管する大きな金庫BUNKERを持っていました。

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当時は金貨が現在のお金の役割を担っており、しかし治安の悪い時代、金貨を多く所有する富裕層に対し、リュウセイは手数料を受け取り、富裕層たちから金貨を預かるビジネスをはじめました。自分の資産を強盗に奪われたくない、守りたい資産家たちはその噂を聞きつけ、多くの資産家達がBUNKERに金貨を預けるようになりました。その際リュウセイは預り証を発行していたのですが、資産家達が何か、例えば服を大量購入する際、わざわざ金貨をリュウセイのところに下ろしに行って支払うのは億劫なので、その際には金匠宛手形というもの(服の購入代金分の金貨を、私の預り証からこの手形の持ち主に書き換えてくださいという約束手形、今で言う小切手)を服屋に渡しました。服屋はそれをリュウセイのもとに持っていくと、金貨を受け取ることができます。それにより金貨が動くこと無く手形のやり取りで売買が成立するようになりました。

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この便利なやり取りが出回ると、ほとんどの資産家達は持ち運びも不便な金貨はBUNKERに預けたまま、手形だけが出回るようになりました。金匠宛手形を受け取っても、商人たちはその手形を金貨に変えず、次の決済に書き換えそれが紙幣のように流通していく。。。リュウセイは、資産家達が預けた金貨のほぼ9割はそのままBUNKERに保管されていることに気づきます。そして機転を利かせたリュウセイは、たくさん溜まって減らない金貨を、今度は必要な人に貸すビジネスを思いつきます。

リュウセイは預かっている金貨を必要な人に貸し、金利をかすめ取りはじめました。このビジネスはたくさんの金に困っている人に瞬く間広がり、沢山の人が金貨を借りに来て、BUNEKRの中の金貨はみるみるうちに無くなって行きました。このままでは貸す金貨が無くなる。。。しばらく考えたリュウセイは「どうせ資産家達は誰も金貨をおろしに来ない。それなら、貸した金貨をその場でまた預かっているとにしよう」という悪知恵を働かせます。金貨を貸し出したと同時に、借り手に借用証書を書かせ、さらに借り手に対し金匠手形という「BUNKERが金貨をこれだけ預かっています」という証書を発行することにしました。これを「金匠手形」と言います。先程の金匠宛手形とは違う、金匠本人がふり出した手形です。

これは非常に巧みなアイデアなのです。通常借りたほうのみが書く借用証書を、貸し手のほうも「(一度貸した)金貨を預かりました」という証明書を発行する。借りた方の借用証書の存在を知らない人から見たらその金匠手形は、BUNKERが金貨を預かっている証明書でしかない。そしてここでポイントなのは金匠手形の見た目が、金匠宛手形とそっくりだったこと。さきほどの金匠宛手形は資産家の名前が入っていたため、信用があったのです。その出回っている資産家の手形とそっくりな手形をリュウセイは作り、金匠手形として発行することで、その券面に見覚えのある人々の中で金匠手形は何の疑問も持たれず広がっていきました。要するこの金匠手形は、金貨を借りに来た人への「貸出証明書」のようなものなのに、「金現物を預けている人の小切手」として扱われてしまうのです。このやり取りの上で実際に金貨は移動していないので、要するにリュウセイは預かっていない金貨を預かったものとして証明書を発行していることとなります。

こうして金貨の現物でのやり取りは減り、金匠宛手形と金匠手形が紙幣として世に出回るようになりました。それにより世の中が潤い活気づいていきます。しかしある時資産家の一人が、つい先日まで貧素な暮らしをしていた人々が、リュウセイの発行した金匠手形を羽振りよく使う姿を見て疑問を感じるようになります。BUNKERには本当に自分があずけた大量の金貨があるのか。実は私が預けた金貨は金庫に入ってないのではないか。その話は瞬く間に資産家達の間で噂になり、ある時資産家達が一気にリュウセイのもとに押し寄せると、金庫BUNKERの中身は空っぽだったのです。それもそのはず、資産家達の金貨はほぼ全て貸し出され、さらに金貨の裏付けが全く無いのに金匠手形を大量に発行したリュウセイのもとには、借り手の大量の借用証書だけが残ったのです。そして可哀想に、リュウセイは資産家、権力者たちによって粛清されることとなったのです。

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さて、この話を聞いて、「リュウセイはなんて酷いやつなんだ!」とか、「昔話にしてはよく出来た話だ。」とほとんどの方は思うでしょう。しかしなんと、この詐欺のような金匠手形発行の仕組みは、そっくりそのまま現在の銀行の仕組みとして用いられているのです。ほとんどの人が銀行は預かったお金を貸し出して運用していると勘違いしているのですが、そうではないのです。リュウセイが発行した金匠手形のように、無からお金を創る、正確に言えば預り金のほんの一部を元手に、その何十倍ものお金を創り出すことができるのです。

ということで今回はここまで。次回は無からお金を作る、銀行の信用創造について解説させていただきます。

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